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変身超人大戦・最後の乱入者 ◆LuuKRM2PEg ◆ 「行かないと……!」 ディバイン・バスターの余波によって地面に叩きつけられ、その痛みとこれまでのダメージで全身に痛みが走るが、キュアサンシャインはそれに耐えて立ち上がった。 池波流ノ介が犠牲になって悲しいはずなのに、仮面ライダー一号はそれを表に出さずにノーザやスバルと戦っている。だから自分だけがここで倒れたりすることは絶対に許されなかった。 ふと、キュアサンシャインは気を失って倒れているアインハルトとアスティオンに目を向ける。アスティオンの意思を蔑ろにするのは嫌だったが、このままでは一号が危なかった。 心の中で彼女達にごめんと謝ったキュアサンシャインは前を向こうとするが、その途端に足音が聞こえてくる。 「おや、何処に行かれようと言うのですかな? キュアサンシャイン」 そして声が聞こえてきたので、キュアサンシャインはそちらに振り向く。 すると彼女は、ここから数メートルほど離れた場所より筋殻アクマロがゆっくりと近づいてくるのを見た。 「あなたは……アクマロ!」 「まだ我がいるのを忘れるとは、実に無礼ですな」 その手に握る剣が朝日に照らされて輝く中、アクマロは嘲笑の言葉を漏らす。予期せぬ三人目の敵が再び現れたことによって、キュアサンシャインは反射的に構えた。 しかしアクマロはそれをまるで気にしないかのように、前を踏み出してくる。 「これより、あんたさんがたには選ばせて差し上げましょう」 そして饒舌に語りながら、アクマロは更に一歩進んだ。 「あの小娘どものように全身をバラバラにされて血溜まりを生むか」 剣を見せつけるかのように構えながら、また一歩進む。 「全ての皮膚をゆっくり切り刻まれながら長らく地獄の時を楽しむか」 もう一歩進んだことで、アクマロの声から感じられる喜悦が更に強くなった。 「それとも、心臓を貫かれて苦しむ暇もなく一瞬で三途の川に落ちるか」 そう言いながらアクマロは剣の先端をキュアサンシャインに向けて、より一歩進んでくる。 「さあ、どれにいたしましょうか?」 もしもそれが人の顔だったら、ノーザのように悪意に満ちた笑みで染まっているはずだった。それくらいまでアクマロから放たれる雰囲気はあまりにも不気味で、昔話に出てくる物の怪よりもずっと恐ろしい。 あまりのプレッシャーを前にキュアサンシャインは額から汗を滲ませるが、それでも押し潰されたりはしなかった。アクマロの目的は自分達を倒して、一号をもっと悲しませて追い詰めること。 相手は体力を消耗していたとはいえ、一号とシンケンブルーを同時に相手にしても有利に戦えるほどに強い。一人でそんな奴と戦っても勝てる可能性は低すぎたが、逃げることはできなかった。 「私が望むのは……」 「望むのは?」 「あなた達から、みんなを守ることよ!」 地を蹴って走り出しながらアクマロとの距離を詰めながら右足を軸にして回転し、キュアサンシャインは鋭い回し蹴りを放つ。アクマロは右手の剣を振るうが、白いロングブーツはそれを瞬時に払いのけた。 武器同士が激突したような鋭い金属音が響き、衝突の影響で火花すらも飛び散っている。 煌びやかなリボンが飾られたことで華やかさを演出させるブーツだが、その外見からは想像できないくらいの強度を誇っていた。故に、アクマロの武器だけで斬れることは決してなく、それに守られたしなやかな足も守られている。 しかし鉄をも超えるブーツの耐久力だけで勝利に繋がるわけがなく、アクマロが後退した隙を突いて反対側の足でキックを放つが、直後に一閃された剣と衝突した。またしても鳴り響く衝突音と共に二人は背後に飛んで、数歩分の距離を取る。 視線がぶつかり合う中、キュアサンシャインの呼吸は荒くなっていた。それに対してアクマロはあまり戦っていないせいか、体調は万全に見える。 もっとも、これは当然の結果だった。キュアサンシャインはスバルとの戦いで体力を消耗したのに対して、アクマロはこれまで自身が不利になるような条件で一度も戦っていない。 「クックックック……カッカッカッカッカッカッカッ……!」 そして体調面での有利を悟ったのか、アクマロの喉から奇妙で乾いた笑い声が響いてくる。 「さぞかし辛いでしょう……さぞかし苦しいでしょう……我はそんなあんたさんの苦しみから解放させて差し上げようと思っているのに、何故そこまで拒みます?」 「例えどれだけ辛くて苦しくても、私はそれに逃げている場合じゃないの!」 「ほう、この催しに優勝してその褒美で皆を三途から蘇らせると……」 「違うわ!」 アクマロに反抗するかのように首を大きく振りながら、キュアサンシャインは腹の底から叫びながら再び疾走した。 「私はこの世界を照らす太陽となってみんなを助けなければいかないから、絶対に諦めたりはしない!」 目前にまで近づいたことでアクマロの剣が振り下ろされるが体制を少し右にずらすことで避けて、握り締めた拳を撃ち出す。だがアクマロは横に飛んでその一撃を軽く回避した。 その姿は視界から消えるが、別にいなくなったわけではない。瞬時に振り向きながら回し蹴りを繰り出して、アクマロの持つ剣を弾き飛ばす。 空中で数回転した後に音を立てて突き刺さるそれに目を向けず、素早く拳を叩き込もうとしたが、直後にアクマロの左手がキュアサンシャインの首を掴んだ。 「太陽風情が我ら外道を照らすなどとは、何と愚か極まりない思い上がり! 片腹痛いにも程がある!」 そのまま締め付けられると思ったが、アクマロの瞳からより強い殺意が放たれる。予想外の状況に目を見開いた矢先、キュアサンシャインの全身に稲妻が襲いかかった。 「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 シンケンブルーを苦しめた技によって、今度はキュアサンシャインが凄まじい絶叫をあげる。 激痛によって視界がはっきりせず、意識が飛びそうになるが必死に耐えた。しかしそれが精一杯で、まともに抵抗することができない。 苦悶の表情を浮かべた後、その身体は投げ飛ばされて数秒ほど地面を転がる。それでも彼女は顔を上げて、アクマロを睨み付けた。 「実にいい、実に良いですね……輝きに満ちたその面持ち。それでこそ、踏みにじり甲斐があります」 しかし返ってくるのは舐め回すような吐き気を催す視線と、地の底から響くような冷たい声だけ。 「決めました。あんたさん達の希望とやらを我がじっくりと崩してあげましょう。このまま地獄に落とすのも悪くないですが、それでは些か趣に欠けます……どうか、長く保ってくださいね?」 ◆ 何度殴られても立ち上がり、何度蹴られても起きあがる。その度に反撃しようとするが、どれもまともに通らなかった。 アインハルトの奥義を受け止めるほどの力を持つノーザがいる上に、ディバイン・バスターの反動で動きにキレが欠けていてもまだ戦えるスバルも加わっていた。特にスバルは時間の経過と共に体力が元に戻っていくようにも見える。 一号は装甲に守られた胴体を蹴られて後退した途端、スバルの手から放たれた黒い魔力の球が胸部に激突した。 「があっ!」 仮面の下から漏れる悲鳴は爆発音に飲み込まれ、スーツに守られた肉体から大量の血が流れていく。いくらショッカーの技術を結集して生まれた改造人間とはいえ、この戦いで負ったダメージがあまりにも深すぎた。加えて、ノーザもスバルもアクマロも皆、並のBADANの怪人を凌駕する実力者だから、自然に追い込まれていくのは当然の結果。 それでも一号の闘志は微塵も揺らぐことはなく、痛む身体に鞭を打って蹌踉めきながらも立ち上がる。しかしいつ崩れてもおかしくない。 「一号……大丈夫ですか?」 そしてそんな彼の肩を支えたのは、キュアサンシャインだった。 彼女も一号と同じでボロボロになっていて、表情からは酷く疲れ果てた雰囲気が感じられる。多分、変身を維持するのがやっとでとても戦えない身体かもしれないがそれにも関わらずして、僅かに涙を滲ませる瞳からは未だに太陽のような輝きを放っていた。 「ああ、大丈夫だ……!」 だから一号も彼女に負けないように立ち上がる。 キュアサンシャインも本当は仲間を立て続けに失ったことで辛いはずなのに、それを表に出そうとしない。恐らく、自分やアインハルトを守るという願いがその身体を動かしているのだ。そんな彼女の思いに答えたいが、その為の方法がまるで思い浮かばない。 もう、自分達は負けていた。認めるのは絶対に嫌だったが、もう誰がどう見てもそう判断せざるを得ない状況だった。 「お遊びはもう終わりよ」 そして残酷な現実を突き付けるかのようにノーザは笑いながら近づいてくる。その左に立つアクマロの顔は全く動かないが嘲弄しているのは確実で、ノーザの右に立つスバルは無表情を貫いたまま。 「これ以上いたぶったところで、どうやら変わることはないようですな……まあ、余興にはなりましたな」 「余興だと……!?」 「ええ、あんたさんに残された役割は大人しく地獄に堕ちる……下手に悪あがきをせぬ方が、苦しみませぬぞ?」 殺された者達の死を嘲笑うアクマロに一号が怒りを覚えるが、憤怒の視線を向けるしかできない。それしかできずに何も変えられない自分自身が情けなかった。 ここで二人を守るために戦ってもすぐに負けて三人とも殺されるだけだし、逃げだそうにも逃げられるわけがない。今の自分は仮面ライダーなどではなく、ただ殺されるのを待つしかない弱者。 「例えどれだけ追い込まれようとも、俺達はキサマらのような悪には絶対に屈したりしない!」 しかしだからといって、一号が悪に屈する理由にはならなかった。 例えどれだけ絶望的な状況でも、それをしては散っていった者達に報いることはできないし、まだどこかにいるはずの仮面ライダーに合わせる顔がない。 だからこそ、一号は反逆の意志を言葉にして突き付けた。 「そうよ……私だって、例えどんなことがあろうとも絶望したりしない! 最後まで、戦ってみせる……! 仮面ライダーもプリキュアも、それは変わらないわ……!」 そしてキュアサンシャインもまた、息も絶え絶えになりながらも言葉を紡いでいる。ダメージによって揺れる身体を支え、必死に睨んでいた。 そんな力強い姿を見て、まさに世界全てを照らす太陽のようだと一号は思う。だからこそ彼女のような希望を潰さないためにも、最後まで戦わなければならなかった。 一号とキュアサンシャインは同時に構えるが、ノーザ達は特に何も答えずに足を進めている。まるで、お前達にはもう何の興味もないとでも言うかのように。 両者の間で距離が縮む中、一号はひたすら睨み続けている時だった。 突如、どこからともなくバイクのエンジン音が響いてくる。それは力強さと同時に、まるで強い風が吹きつけるかのような鋭さも感じられた。 そして一号はそのエンジン音をよく知っていた。 「何……?」 幻聴かと疑ったが、時間の経過と共にエンジン音はどんどん強くなっていく。ノーザ達もそれに気付いたのか、後ろを振り向いた。 一方で何者かが接近していると察した一号は改造人間の優れた視力で音源である西を凝視すると、一瞬で見つける。 ここから数キロメートルほど離れた先から、白とワインレッドの二色に彩られたバイクが近づいていた。それは一文字隼人を助けるためにショッカーのアジトへ乗り込んだ際に見つけたバイク、サイクロン号。そしてそのマシンに乗っているのは一号もよく知る仮面ライダーの一人だった。 スズメバチのような仮面は銀色に輝き、瞳とマフラーは炎のように赤く燃え上がっている。人類が生きる未来のために誕生した惑星開発用改造人間の力を、ドグマ王国を打倒するために使った男が変身する仮面ライダーが近づいていた。 「沖……いや、仮面ライダースーパー1かっ!?」 一号の疑問に答えるのはサイクロン号のエンジン音だけ。 今、誰も予想しなかった史上最大のイレギュラーにして、最後の乱入者がこの戦場に現れた。 その男の名は沖一也。またの名を、仮面ライダースーパー1。 ◆ 仮面ライダースーパー1に変身した沖一也はハンドルを握り締めると、機械仕掛けの竜巻は凄まじい唸り声をあげる。秘密結社ショッカーが生み出したエンジン音は、自然に発生するどんな風よりも凄まじくて、どんな頑丈な建築物でも吹き飛ばしかねなかった。 あの加頭順が何故、仮面ライダー一号が利用していたマシンをわざわざ自分達の近くに配置したのかが気になるが、今はそれを気にしている場合ではない。例え何らかの罠だとしても、恐れていては何も始まらなかった。 一文字隼人と別れてからホテルを目指して走っていたら、目的地の近くでいきなり巨大な闇が生じる。これには流石のスーパー1も驚いたが、それからすぐに一号が二人の少女を守りながら戦っているのを見つけた。 敵は三人。敵は魔女が着るようなローブを纏った大柄の女。ドグマやドーパントのような剣を構える怪人。全身より植物の根っこのような触手が生えて、瞳が金色に染まっている青髪の少女。 皆、只者ではない雰囲気を放っていたが、それを真っ向から受けたスーパー1は怯むどころか闘志を漲らせていた。 「スーパー1……ですと? 今更一人増えたところで、何が変わるというのですかな!?」 怪人はこちらを侮蔑するような声と共に左手を突き出して、そこから大量の稲妻を発する。しかしスーパー1はサイクロン号のハンドルをより強く捻ってマシンを加速させながら、横に曲がって回避した。 それだけで終わらず雷は次々と襲いかかるが、彼は決して焦っていない。サイクロン号の凄まじいスペックとそれを巧みに操るスーパー1の運転技術さえあれば、例え自然現象が相手でも回避は充分に可能だった。 「チェ――ンジ! 冷熱ハンド! 超高温火炎!」 そしてハンドルを操る両腕に力を込めながら叫ぶ。すると、二本の腕が音を立てながら緑色に変わっていった。標準装備のスーパーハンドから、冷熱ハンドへと。 そのまま右腕の熱ハンドを怪人に向けると、轟音と共に灼熱が発せられた。冷たい空気を焼きながら怪人の肉体を飲み込んで、ほんの一瞬で火達磨にする。 「グアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!?」 怪人の絶叫が耳を劈くのをお構いなしに火炎は徐々に広がるが、後の二人には避けられてしまった。しかしスーパー1にとっては丁度いい。 超高温火炎を振り払おうと足掻く怪人を余所にサイクロン号を走らせて、一号達の目前で止まる。そのままマシンから降りて、一号の元に駆け寄った。 「大丈夫ですか、先輩!?」 「沖……来てくれたのか」 隼人に続いてまた一人先輩と巡り会えたが、あの時と違ってとても喜ぶことはできない。一号の装甲は所々が砕け散っていて、スーツの下から血が滲み出ている。声からも疲労の色が濃く感じられて、満身創痍なのは明らかだった。 加えて、エリアの大半を吹き飛ばす程の暗闇が発せられたからには、この場で凄まじい惨劇があったのかもしれない。サイクロン号に乗りながら間に合わなかったのが、スーパー1は悔しかった。 「……申し訳ありません、俺が遅れたせいで」 「いや、お前が現れただけでも心強い。助かったぞ」 それでも一号はこちらを責めず、それどころか励ましてくれている。その優しさが重く感じるが、今はそれを受け止めなければならなかった。 「沖、状況を簡単に説明する。スバル・ナカジマというあの青い髪の少女は今、ノーザという女とアクマロという怪人によって洗脳されている」 「洗脳ですって!?」 「ああ……本当は心優しい少女だったはずだが、奴らはその思いを踏みにじった。彼女だけは絶対に傷つけるな」 「わかりました」 一号に頷いたスーパー1は、そのまま金髪のツインテールが特徴的の少女に振り向く。その衣服はやけに派手な上に露出が多く、今時の女の子はこんなのも着るのかと思ってしまった。 しかしこんな状況で一号の隣に立っているし、その見た目からは想像できないほどに凄みも感じられる。恐らく、自分と同じで何らかの武術を嗜んでいるかもしれない。 自分が遅れたせいで名も知らぬ少女を傷つけることになってしまったのが、悔しかった。 「後は俺に任せて、君は先輩達と一緒に少しでもここから離れてくれないか」 「仮面ライダースーパー1……一人で戦うなんて危険すぎます!」 「ありがとう、その気持ちだけでも俺は嬉しいよ」 だからこれ以上、彼女が持つ太陽のような優しさと勇気を決して潰してはならない。その決意を胸にスーパー1は前を向いた。 怪人、アクマロに浴びせた超高温火炎は既に消えているが、その巨体に確かな焼け跡が残っている。一方でノーザはそれをまるで構いもせずに、憤怒の目線をこちらに向けていた。 「仮面ライダースーパー1……どこの誰かは知らないけど、勝手なことをしてくれるじゃない」 その口ぶりからは苦しんでいるアクマロを気遣う様子は微塵も感じられない。アクマロは同情の余地など欠片もない相手だが、それでもノーザにとっては仲間のはず。しかし実際はただの捨て駒にしか思ってないかもしれない。 やはりノーザはドグマ達と同じで、ここで倒さなければならない奴だった。 (優しい人間を操って、人殺しの片棒を担がせるだと……ふざけるな!) そしてスーパー1の仮面を通じてスバル・ナカジマという少女を見て、怒りが更に燃え上がる。彼女がどんな人物なのかは知らないが、一号達は必死に助け出そうとしていた。 だからこそ、自分が彼らの思いを受け取って戦わなければならない。その決意を胸に固めたスーパー1は拳を握り締め、勢いよく走り出した。 「全ては……ノーザ様の為にっ!」 そしてスバルの背中から大量の触手が飛び出してきて、音を立ててしなりながらスーパー1に襲い掛かる。その数は十を軽く超えていて、まともに避けようとしても出来ることではない。 だからこそ迫りくる触手に、スーパー1は左腕を真っ直ぐに向けた。 「冷凍ガス!」 暗黒騎士キバの動きを止めた超低温の白いガスが勢いよく噴出される。しかしスーパー1は流れを上手く調整させて、触手と両足のブーツを凍らせて動きを止めるだけに留めた。 本当なら善人にこんなことをするなんて言語道断だが、これ以上誰かを傷つけさせたくもない。後で責められる覚悟ならもうできている。 金色の瞳が驚愕に染まらせるスバルは足掻くが、その程度で解放される代物ではない。そんな彼女を見て後ろめたさを感じてしまい、心の中でごめんと謝る。 それからノーザの方に振り向くと、冷酷な表情が更に怒りで歪んでいるのを見た。相当頭にきているのだろうが、それはスーパー1も同じ。 「おのれ……!」 「次はお前達だ」 スーパー1は静かだが、それでいて烈火のように怒りを滾らせていた。徐々に感情が抑えられなくなっているノーザとは対照的に。 恐らく、ノーザを叩きさえすればスバルも元に戻るかもしれない。そう考えたスーパー1は両腕をスーパーハンドに戻した頃、アクマロがゆっくりと進んでくるのを見た。 「スーパー1……我々を虚仮にするとはいい度胸ですな。その報い、受けていただきますよ!」 アクマロは声を震わせながらその手に持つ剣を振りかざして斬り掛かるが、スーパー1は左腕で刃を受け止める。乾いた金属音が響くのと同時に、黒く焦げた胸部を勢いよく蹴りつけた。衝撃によって嗚咽を漏らしながらアクマロが仰け反った隙を突いて、スーパー1は連続で拳を叩きつける。 アクマロが吹き飛ぶ姿を見届けることもせずに、スーパー1はノーザがいる横に振り向いた。彼女はアクマロと戦っている隙を突いて攻撃しようと考えていたのか、その細い腕を掲げている。 振り下ろされるそれを避けながら、スーパー1は腕に力を集中させて叫んだ。 「チェンジ! パワーハンド!」 彼の言葉に答えるかのようにスーパーハンドは銀から真紅へ染まり、パワーハンドに変化した。 そのまま腰を深く落としながら拳を握り締め、こちらに再度振り向いたノーザの胴体を仮面の下から凝視する。そしてスーパー1は渾身の力を振り絞り、赤い拳に込められた1万メガトンもの破壊力をノーザに叩きこんだ。 「メガトンパンチッ!」 ゴキリ、と何かが砕け散るような鈍い音がノーザの肉体より響く。 スーパー1の拳を受けたノーザは声にもならない絶叫をあげて、衝撃のあまりに両目を見開きながら吹き飛んだ。 多彩な能力を持つファイブハンドの中でも最大級の破壊力を誇るパワーハンドによるメガトンパンチを持ってしても、ノーザの肉体は貫けない。その事実にスーパー1は若干の戦慄を感じるが、それでも確実なダメージを与えられた。 後はこの手でトドメを刺すだけ。これ以上戦いを長引かせても、ノーザ達は何か善からぬことをするかもしれない。その可能性を危惧したスーパー1は前を踏み出そうとした、その直後だった。 「ガアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!」 背後から突然、獰猛な恐竜のように凄まじい叫び声が鼓膜を刺激する。 スーパー1は思わず背後を振り向くと、先程冷凍ガスで動きを拘束させたはずのスバルの肉体からどす黒いオーラが発せられて、殺意の波動が更に強くなっていく。 そして両足と触手を凍らせていたはずのガスは溶けてなくなって、咆吼するスバルは突貫してきた。 「何ッ!?」 予想外の出来事にスーパー1は思わず両腕を交差させてスバルの拳を受け止めるが、その衝撃によって後退ってしまう。その僅かな隙を付いて複数の触手が飛び出してきて、そのままスーパー1に襲いかかった。 しかしスーパー1は決して焦らず、両腕をスーパーハンドに戻しながら両手で構えを取る。まるで、全てを優しく包み込む梅の花のように。 「赤心少林拳……梅花の型!」 かつてドグマの怪人ギョトスマに敗れた際に玄海老師から修行を受け、会得した拳法でスーパー1は触手を弾く。荒々しい闘いの中にあってなおも花の可憐さを愛おしむ心を持って、全ての攻撃を確実に防いでいた。 しかしそれでも両腕に痛みが走っていて、このままではいつ打ち破られてもおかしくない。触手の一本一本の重さが、あまりにも凄まじかった。 だがスーパー1はひたすら梅花の型を構えて触手を弾くが、そうしている間にもスバルはどんどん迫ってきていて、スーパー1の脇腹を殴りつける。 「うぐっ!」 触手の群れを弾くのに精一杯だったスーパー1は鋼の拳を避けることができずに、呻き声と共によろめいてしまった。そして梅花の型も崩れたところに触手が銀色の肉体を叩いてくる。 立て続けに痛みが走るものの、スーパー1は必死に耐えた。ここで少しでも崩れたりしたら、その瞬間にノーザ達の思い通りになってしまう。 スーパー1は攻撃の嵐を避けるために、一旦距離を取った。 (まずいな……まさかここまでの相手だったとは) 黄金色の視線を真っ向から受けながらスーパー1は考える。 簡単に止められるとは思っていなかったが、想像を遥かに超えていた。可能なら傷つけたくなかったが、本気を出して戦わなければ逆にこちらがやられてしまう。どちらを取っても、最悪の結果に繋がるだけだった。 しかし悩んでいる暇はない。今は一号達が逃げる時間を少しでも稼ぐためにも戦わなければならないと、スーパー1は悩みを振り払って拳を握り締めた時だった。 「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」 視界の外からこれまで全く予想していなかった、一号の叫び声が発せられてくる。それに気づいたスーパー1が振り向く暇もなく、後ろから現れた一号は迫り来るスバルにしがみついた。 「本郷さん、何を――!?」 「ここは俺に任せて、沖は一刻も早く二人を連れてここから離れろ!」 スーパー1に振り向きながら叫んだ一号を、スバルはすぐに振り払って勢いよく殴りつける。一号の仮面から吐血したような濁った音が聞こえるが、当の本人はそれに構わず握り拳を振るった。 だがスバルはそれを呆気なく避けた後に、亀裂の走った装甲を蹴って砕いた。 すぐに助けなければと思いながらスーパー1は前を進もうとするが、その途端に一号は振り向きながら立ち上がった。 「沖、早くここから逃げろと言っているだろう! モタモタするな!」 「何を言ってるんですか!? あなたを見捨てるなんて……!」 「このまま戦いを長引かせては、お前が守ろうとした彼女達が殺されてしまう!」 「待ってください、一号!」 一号の怒鳴り声にスーパー1は反論しようとしたが、次に聞こえてきたのは後ろにいる金髪の少女の声だった。 「私はまだ戦えます……だからあなた一人で無茶をしないで!」 「いや、ここで君がこれ以上無理をしたら永遠にスバルを助けられなくなる! だからここは逃げるんだ!」 「でも……!」 「沖、今言ったようにあの二人はスバルを救う重要な鍵になる! だから、決して死なせるな!」 少女の言葉を無視しながら、一号はスバルの攻撃を必死に避け続けている。口元に血が溜まっているのか、その声は普段より酷く濁って聞こえた。 「早く行け、沖一也……これ以上、この殺し合いの犠牲者を増やすな! 俺達の、全ての命を守るという仮面ライダーの願いを叶えるためにも……お前は行ってくれ! 仮面ライダースーパー1!」 「……わかりました!」 苦しげな叫びに対する悲痛に満ちたスーパー1の答えは、それ以外に何もない。 彼はすぐさま後ろに振り向いて、瞬時に少女達の元に辿り着いた。一号の悲鳴やノーザやアクマロの怒声、更に殴打音が次々と聞こえてくるが、スーパー1は決して振り向かない。 「スーパー1、私よりも早く一号を……!」 「俺にしっかり掴まってくれ!」 金髪の少女がその続きを言う前に、その華奢な身体を腕で抱える。そのまま走りながら、横たわるもう一人の少女とトラのぬいぐるみ、更に彼女達の物と思われる二つのデイバッグもしっかりと持った。 サイクロン号を確保する暇はないので、両足に全力を込めて少しでもエリアから離れようと駆ける。途中、アクマロの雷が鳴り響くような音が聞こえるが、スーパー1はその脚力ですぐに範囲から離れた。 一号を見殺しにした。その事実はスーパー1に重く圧し掛かるが、彼はそれに決して潰れなかった。 ここで少しでも後悔して逃げるのが遅れては、一号の思いを侮辱することになる。彼から全てを託されたからには、この二人を命に代えても守らなければならなかった。それこそが仮面ライダーの存在意義で、一号が言うように戦いを長引かせては全滅する可能性もあったから、この選択は正しいのかもしれない。 だが、それが逃げ出していい理由にはならない。本当なら一号も助けなければならないのに、自分が無力だったせいで彼を切り捨てることになってしまった。 それでも、折れることは決して許されない。罪のない人々を救うための戦士である仮面ライダーが悩んだりしては、誰がこの殺し合いを打ち破るのか。 その為にもスーパー1は走る。これ以上、守れたはずの誰かが守れないなんてあってはならなかった。 ◆ 仮面ライダー一号はひたすらスバルの攻撃を捌き続けているが、傷ついた肉体では限界がある。もうまともに動くことすらできなかった。 傷口を抉るように叩き込まれた拳によって装甲が砕け散り、血の混ざった破片が地面に散らばっていく。そのまま、一号は力なく地面に倒れていった。 「行って、くれたか……」 それでも、彼は決して絶望していない。 キュアサンシャインとアインハルト、それにアスティオンを連れたスーパー1がこの場から見えなくなっていたので、仮面の下で本郷猛は思わず安堵の言葉を漏らす。 沖一也には辛い決断を強いてしまったと、今更ながら後悔の思いが生まれる。もしも自分が一也の立場だったらと思うと、胸の奥が痛んだ。 しかしこの状況で未来ある少女達を救うためにはこれ以外に方法がない。重症を負った自分が生贄となって、優れた能力をたくさん持つ頼れる後輩に全てを託せば可能性があった。 それに一也が生きてさえいれば、悪意に囚われた目前の少女を救う希望も死なない。彼ならばこの狂った戦いを止めることもできるはずだった。 「よくも、好き放題やってくれたわね」 最後に希望を残せたことで心が軽くなった途端、ノーザが胴体を押さえながらよろよろと歩いてくる。 本当ならこの場でノーザを倒したかったが、それをやるだけの力すら残っていなかった。 「仮面ライダー一号……もうあんたはここで終わりよ。あんたの希望も、今ここで闇に変えてあげるわ」 「残念だが、それは不可能だ……」 「何ですって……?」 おぞましい雰囲気を放つ魔女の顔が怒りで歪むが、一号はそれに構わずに言葉を続ける。 「例え俺が死んでも、俺の理想を継ぐ彼らが生きている限り……時代はお前達のような悪を決して許しはしない。お前達や、加頭達の陰謀は何一つ成し遂げられん……それにスバルも、いつかきっと闇から抜け出せる。俺達が一人でもいる限り、この世界が絶望に染まることは決してありえない……!」 時代が望む限り、仮面ライダーは必ず蘇る。 この肉体がいくら滅びようとも、この意思を継ぐものが一人でもいる限り魂は不滅だった。BADANや加頭順、それにノーザ達のような悪魔が笑う時代など永遠に来ない。 全ての世界から正義の意思が消えることは決してなかった。 「どこまでも目障りな……ノーザさん、この男の始末は我が付けて宜しいでしょうか? 腸が煮えくり返って、仕方がありませんので」 「……好きにしなさい」 「お心遣い、感謝いたします……!」 そして筋殻アクマロがその手に持つ刀を構えながら進んでくるのを見て、一号は自分の最後を確信する。 しかしそれでも恐怖はなかった。代わりに心残りやまどか達を助けられなかった悔いは残っているものの、罵りはあの世で受ければいい。尤も、自分なんかが彼らと同じ場所に逝けるかどうかは疑問だが。 (一文字、結城……お前達は生きて、この殺し合いを打ち破ってみんなを助けてくれ。そして村雨、どうか復讐に身を任せずに生きるんだ……) 一号は……否、猛は相棒と後輩達の無事を願う。そして村雨良が仮面ライダーとして生きて、この殺し合いを打破する者達の力になってくれると信じた。 良は復讐に身を任せていたが、心の奥底には優しさがある。だからこそ、BADANの怪人達から人々を守ったのだ。 アクマロの剣が頭上に掲げられるが、猛はそれに構わずに全てを託した九番目の後輩に激励を送った。 (すまない、沖一也……そして後は頼んだぞ、仮面ライダースーパー1。お前はこの殺し合いを打ち破る鍵を握っている男だからな……) その男は絶体絶命の状況を打ち破ってくれた最後の希望。 彼が来てくれたからこそ、いつきとアインハルトを救うことができた。だから、多くの悲劇を生むこんな地獄を絶対に破壊してくれるはず。 そう考えただけでも、本郷猛は安心してこの世を去ることができた。 やがて砕け散った装甲に削身断頭笏が突き刺さり、男の肉体を簡単に貫く。 一瞬だけ全身に激痛を感じるが、それでも気が楽になれた。全ての人々を救うという消えない思いだけは、この世界に残せている。 それが男にとって唯一にして最後の救い。ショッカーによって仮面ライダー一号にされてから数え切れない地獄を見せられて、数多の嘆きと絶望を味わってしまった本郷猛の希望は、決して消えなかった。 時系列順で読む Back 変身超人大戦・イナクナリナサイNext 変身超人大戦・そして―――― 投下順で読む Back 変身超人大戦・イナクナリナサイNext 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 本郷猛 Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 沖一也 Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 明堂院いつき Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ ノーザ Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 高町なのは Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ スバル・ナカジマ Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ アインハルト・ストラトス Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 鹿目まどか Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ ズ・ゴオマ・グ Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・そして―――― Back 変身超人大戦・イナクナリナサイ 筋殻アクマロ Next 変身超人大戦・そして――――
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ハートキャッチプリキュア!の変身後データ 【キュアブロッサム】 【キュアマリン】 【キュアサンシャイン】 【キュアムーンライト】 ハートキャッチプリキュア! に登場するプリキュアは、人々の心に宿る『こころの花』とその源である『こころの大樹』を守る為に戦う伝説の戦士。 こころの大樹を枯らそうとするさばくの使徒は遥か昔から人の心を狙い、それを阻止する為にプリキュアが戦った。 大樹から生まれた妖精に選ばれた少女がプリキュアに変身して、凄まじい力でさばくの使徒やデザトリアンから人の心を守っている。 さばくの使徒は基本的に無差別に暴れるので、プリキュアとの戦いは一般人に知られている。ただし『フレッシュプリキュア!』とは違い、最後まで正体を明かさないまま戦い抜いた。 妖精の方も普段はぬいぐるみのふりをしているが、たまに他人と会話をしているケースもある。 変身に必要なこころの種をココロパフューム(キュアサンシャインの場合はシャイニーパフューム、キュアムーンライトの場合はココロポット)にセットして、「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」という掛け声と共に変身する。 暴れているデザトリアンをプリキュアが浄化する度に、プリキュアのパートナーである妖精は『こころの種』を生んで、その度に大樹が元気になっていく。 また、妖精はマントに変身することができて、それを装着したプリキュアは空が飛べるようになる。 キュアブロッサム 本編での主な変身者は花咲つぼみ。 キュアマリン 本編での主な変身者は来海えりか。 キュアサンシャイン 本編での主な変身者は明堂院いつき。 キュアムーンライト 本編での主な変身者は月影ゆり。
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PSP 「バトルロボット魂」 発売日が2月14日に決定。 ゲームディティールも判明しています。( ´・ω・)y─┛~~~oΟ◯ ゲームディティール判明! ジャンル:ロボットバトルアクション 「ロボット魂」×バトルシリーズ! 戦え!集めろ!飾れ!自由に爽快にバトルアクション!!
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変身─ファイナルミッション─(3) ◆gry038wOvE 「──……やっぱり、私から行きます……! この人との勝負、まだ終わっていませんから……ッ!」 それは、強敵を前に、自分だけで攻撃を仕掛けると言う宣言であった。 再び、先ほどの戦いの続きのように、ファイティングポーズを構えるヴィヴィオ。 誰もが彼女を見て、ゆっくりと頷いた。彼女の健闘を信じる瞳が、ヴィヴィオを一斉に見つめた。 「──」 ユートピアには理解不能である。何せ、ユートピアにとって彼らは雑兵なのである。 今の力を見て、尚も同じ土俵で勝負する気だろうか。 戦士たちにとってユートピアが一個の門番に過ぎないのと同じく、ユートピアにとっても彼らは理想郷を掴む為に立ちふさがる矮小な壁に過ぎなかった。 諦める事がないにせよ、てっきり、実力差を理解して全員でかかると思っていたが、こうまで愚かに一人ずつ仕掛けてこようなどとは、ユートピアも思っていなかったのだろう。 片腹痛い、とはまさにこの事だとユートピアも変な笑いが出そうになる。 「……フン。舐めてくれた物だな……一人ずつ来る気とは……!」 「ううん。一人じゃない……!」 「御託を……。すぐに片づけてやる!」 ヴィヴィオは、そんなユートピアに向けて駆けだした。 大勢の仲間が見守る中で、彼女だけが敵に肉薄する。 それは、さながらストライクアーツの大会のような光景だった。 たくさんの人が見ている前で、自分の戦いをする事──それが、彼女の誇りであり、彼女の生き方であり、彼女にとって最も楽しい時間だった……。 その時の気分が、今は少し重なる。 「はぁぁぁぁッ!!!」 ストレートパンチ──! ぱんっ! ──と手ごたえのありそうな音が鳴った。 だが……。 「ふん」 ユートピアの肉体は、ヴィヴィオの魔力が籠った一撃を胸に受けても悠然としていた。 ヴィヴィオからすれば、これだけ心地よい音が鳴ったというのに、鋼鉄の板を殴ったというよりはむしろ、スポンジの塊でも殴ったかのような不気味なほどの感触の無さが伝わっていた。 やはり、ユートピアは只者ではない。 「能力を使うまでもない……やはり貴様は、子供だ!」 メンバー最年少。全参加者の中でも幼い部類に入る。 それがヴィヴィオの立場であった──この殺し合いにおいても、小学生相当の年齢は彼女だけである。 そこが力の壁を作り出していた。 「子供でも……──小さくても、出来る事があるんだ……!」 ヴィヴィオの拳が、太鼓の連弾のようにユートピアの体に向けて叩きつけられる。 小さいが故の反抗──たとえ、一撃が小さいとしても、子供だとしても、それを蓄積させて巨大な敵を打ち破る力にはなりうる。 ヴィヴィオはその戦いを諦めない。 自分に出来る精一杯を使いきるまでは、ヴィヴィオも何度だってユートピアに想いを、そして拳をぶつける。 ユートピアの足が、土の上を滑るようにして少しずつ下がっていく。彼の体重を動かすには充分な力が叩きつけられているらしい。 「──黙れ」 だが、そんなヴィヴィオの努力もユートピアには無力であった。 たとえ彼の身体を動かしたとしても、彼自身の身体が一切ダメージを通していない。 その上に、そんなヴィヴィオの攻撃を煩わしいとさえ感じ、ここから一撃で勝負を決めて見せようと下準備を始めたのだ。 「世間は無情だな……。仲間の技で死ぬがいい!! 高町ヴィヴィオ!!」 ユートピアの杖の先端に、桃色の魔力光が収束する。 これまでの戦いで霧散した、「ディバインバスター」のエネルギーやメモリーが、全てこのコアの中に群がっていく。 強力な引力が、それをユートピアの手に、半ば強制的に集中させるのだ。 これが、彼の最も悪辣な所である。わざわざヴィヴィオに、この技を使おうと言うのだ。 あっ、とヴィヴィオが憮然とした表情を見せた。 ──そして。 「──ディバイン……バスター!」 ユートピアの叫びと共に現れたのは、高町なのはが何度となく使用した桃色の魔砲であった。ヴィヴィオは、腰を落として両腕を構えたまま、防御の結界の中で、強力な魔力の波動が齎す爆風だけを浴びていた。 そんなヴィヴィオの体が、すぐに耐えきれず真後ろへと吹き飛んでいく。 「──ッ!!」 しかし……。 「──ッッ!!」 しかし……。 「──ッッッ!!!」 しかし……それは、全くヴィヴィオへのダメージとはならない。 「────ッッッッ!!!!」 先ほどのヴィヴィオの攻撃がユートピアに全く届かなかったと同じように、それはヴィヴィオの体にかすり傷さえもつけなかった。 『────っ!!』 『にゃあああああああああああっっ!!!!!』 ──クリスとティオが魔力を尽くして張ったバリアがあるからだ。 二つのデバイスの想いは一つ。 ──この技でヴィヴィオを傷つけさせてやるもんか、という想い。 『──Go!!』 レイジングハートの声が高鳴る。 彼女は、インテリジェントデバイスとしての待機形態へと「変身」し、その姿に羽を生やしていた。その羽を用いた自立移動によってヴィヴィオの下に一瞬で飛翔すると、その体へと触れていく。 彼女に力を貸す為に──寄り添うように。 「レイジングハート……! それに、クリス、ティオも……!」 共に戦う相棒、セイクリッドハード……。 アインハルト・ストラトスが遺したアスティオン……。 若き日の母の相棒だったレイジングハート……。 三つのインテリジェントデバイスの力がヴィヴィオの魔力に重なり合う。 魔術師とデバイスの調和こそが、彼女たちの戦い。──そう、一対一の戦いでも、常にデバイスという相棒が自らを支えてくれた。 それを忘れない。今も──そうやって戦う。 「──バリア!!」 ──障壁! そして、彼女の身体を一片も傷つけさせない為に、額に汗さえも浮かべて、三つのデバイスは、魔力を張る。三つの力が重なり合ったバリアは、偽りのディバインバスターの力を全く通さなかった。 ディバインバスターの力でだけは、ヴィヴィオを傷つけさせない、と──。 そんな願いだけが、ヴィヴィオを守護する。 「──こっちも反撃っ!」 そんなヴィヴィオの掛け声とともに、三つのデバイスが彼女の意思に肯いた。 デバイスたちに頷く事が出来たのなら、おそらくその時、三つのデバイスが同時に首肯しただろう。──しかし、仕草で息を合わせる必要はなかった。 それぞれが、今は想いを一つにしているのだ。 『ヴィヴィオ……力を貸します!』 ──ヴォヴィオの全身を、更に包む白いバリアジャケット。 それは、レイジングハートが変身能力でヴィヴィオの体を包むバリアジャケットへと変身した物であった。──胸元でリボンが結ばれ、その姿は完成する。 「これは……」 高町なのはが装着したバリアジャケットと同様の物であるに違いない。 そして、気づけばヴィヴィオの手には、レイジングハート・エクセリオンの杖が握られている。 レイジングハートが気を利かせてくれたのだという感慨の中、ヴィヴィオはただ、彼女に向けて頷いた。 「──うん!」 防御結界のエネルギーは、そのままヴィヴィオの身体の中へと収束していく。 時に、それはユートピアの持っていたエネルギーさえも、反対にヴィヴィオの中に吸収されていった。 「いこう……!」 桃色のオーラがヴィヴィオの身体を輝かす。 まるで全身に温かい光が雪崩れ込むようだった。 「──ディバイン」 ヴィヴィオの全身を覆った桃色のオーラ──これが、これまでに高町なのはたちが放ったディバインバスターの力だったから。 誰かとわかりあう為に、誰かと本音をぶつけあう為に、──常に誰かを傷つける以外の目的の為に使われたのが、このディバインバスターだったから。 それは、ヴィヴィオの鎧となり、剣となる。 「──ッ!!」 次の瞬間、ディバインバスターはヴィヴィオの身体から、ユートピアの方に、何の合図もなしに向かっていった。 それはまさに、一瞬の切り替えしだった。 流星のように、感知が出来ても祈る事が出来ないほどのスピードで、ユートピアの身体へと叩きこまれた桃色の魔法力。 それは、ユートピアドーパントが目にしてきたあらゆるデータとは根本的に異なっていた。 ──ただの一撃ではない実感。 「──何!?」 ユートピアは、痛みを受けない魔力の放出を前に、ヴィヴィオの方を見た。 まだ、この魔法の力を最大限に開放する、呪文の最後の一声は発していない。 しかし──。 「……!!」 彼女の闘気が自らに向けて放たれている。彼女の瞳は、にらみつけるようにユートピアの身体を掴んで離さなかった。 その瞳は、何かを訴えかけるでもなく、ただ目の前の敵に食らいついていた。 それが、彼女が一人の格闘家である証だった。 (……そう、大丈夫……! 私の後ろには、みんながいるんだ……!) ヴィヴィオは、その時、あらゆる人の事を思い返していた。 二人の母の事を。 共に戦ったライバルの事を。 ここで助けてくれた人々の事を。 『大丈夫だよ、ヴィヴィオ……』 そんな人々が、ヴィヴィオの身体と精神を支えていく。そして、次の一声に至るエネルギーを貸してくれる気がした。 そっと、微笑みかけながら……。 ヴィヴィオの体を包んでいる温かさは、レイジングハートだけではなく、母のなのはから齎されているような気がした。 魔力杖を彼女の真横で支える、なのは、フェイト、アインハルト、スバル、ティアナの姿……。 「──バスター!!!!!」 ──────炸裂! 「ぐっ……!!」 ユートピアの全身を飲み込みながら、爆ぜるようにして威力を増すディバインバスターの魔力。それが、彼の全身の自由を奪った。 彼の身体に確かに駆け巡った痛み。 だが、この程度ならばユートピアも耐えられた。──データにないトリッキーな「ディバインバスター」の使い方であったが、彼の肉体も魔力に屈服するレベルではない。 それでも、絶対の力を得たはずの自分の中に湧きあがる不安のような感情に、ユートピアは襲われつつあった。 「……何──だとッ!!」 ──負けるのではないか? この瞬間、再び、ユートピアの中にそんな考えが浮かび、打ち消した。 「はあああああああああああああああああーーーーーーー!!!!!!!!!」 そして、そんな桃色の粒子の中を駆け巡る一つの影。 いや……一つ、には見えなかった。 「……うぐっ……! バカな……!? がはぁッ……!!」 ユートピアの目は、何人もの、「死んだはず」の幻影が自らを襲う姿が見えていたのだろう。──これが、ただのコピーの技と、本当の技との決定的な違い。 「この程度の攻撃……ッ!」 高町なのは。 フェイト・テスタロッサ。 アインハルト・ストラトス。 スバル・ナカジマ。 ティアナ・ランスター。 プレシア・テスタロッサ。 利用してきたはずのこの殺し合いの駒たちの姿が……。 「一閃必中──ッッッ!」 ディバインバスターの粒子の中を駆け巡る一陣の風は、真っ向勝負を挑んでいた。 ──気づけば、それは黒いバリアジャケットに戻っている。ヴィヴィオはヴィヴィオとして、最後の一撃をユートピアにぶつけに来ているのだ。 「──アクセル」 今度は小細工もなく、ただ、普段と同じように拳を構え、向かっていく。 その中に込められた想い。怒り。悲しみ。……それらは、これまでとはまた少し色合いの異なる物であったが、拳の一撃は常に変わっていく。 ヴィヴィオの拳には、今、彼女を想う母や友たちの想いが乗せられている。 ユートピアは、そんな事を知りもせず、ディバインバスターのエネルギーが消えていく中で、そんなヴィヴィオの拳を、これまた真っ向から迎え打とうとしていた。 この程度の攻撃ならば、まだ受けられる。──そんな自信があったのかもしれない。 避ける暇があるかないかよりも、力を持った故の慢心が大きくそれを左右した。 強すぎる力は、時として、その人間の危機回避能力を麻痺させる。──プライドと自信が、「回避」という判断と頭の中でせめぎ合い、結果として勝利してしまうのだ。 だが、その自信は──次の瞬間、打ち砕かれる。 「────スマーーーーーッッッシュ!!!」 ヴィヴィオの拳は、ただユートピアの胸に叩きこまれただけだというのに。 その魔力に、彼は胸を抉るような強烈な痛みを覚えた。 心臓から血液が駆け巡っていくように、痛みは波紋となって頭のてっぺんまで伝播した。 脳髄が揺れる。彼の中で何かが罅割れる。 ユートピアにとって意表の一撃にして、ヴィヴィオたちにとって会心の一撃であった。 「ぐっ……」 ぴきっ……。 罅割れたのは、「魔力」のコア──即ち、リンカーコアだ。 ベリアルから受け取ったユートピアの幾つものコアは、一つが拒絶を始めた。 それはユートピアに骨折にも似た強い苦しみを与える。 「ぐあああああああああああああああああッッ――――!!」 まるで、これ以上、ユートピアに力を貸す事を拒んでいるかのようだった。 ユートピアの再生能力よりも早く──リンカーコアは亀裂を走らせていく。 ──そして。 「くっ……!!」 ぱりんっ……! と。 暗闇に染まったリンカーコアが、その直後には音を立てて崩壊する。ユートピアの中に埋め込まれた無数の一つが──世界最高の硬度を持つ打撃を受け手も崩れないような力が、この一撃で……。 (こんな……バカなっ……!?) しかし、ヴィヴィオが叩きこんだのは、簡単な一撃ではなかった。 ユートピアの持っていた力は、僅か一日と保たれず、「本物」に敗れたのである。──そう、それは彼の持つコアの力の全てにおいて変わらない事である。 彼は、遥か後方に吹き飛ばされ、土の上をのたうち回る。 「そんな……馬鹿な……ありえない!」 だが、自分がいとも簡単に膝をつくという事実が、彼には信じる事が出来なかった。真実は今自分が置かれている状況とは異なる物だと言い聞かせる為か、彼は全身全霊をあげて立ち上がる。 胸から火花を散らし、全身にダメージを受けながらも……。 「クソッ……」 想定外だ、とユートピアは内心で想った。 ──逆風は吹いたはずだ。 ベリアルは新たな力を授けてくれた。それは絶対無敵の力だった。彼らを確かに圧倒しうるエネルギーを持っていた。 しかし……──それを、一瞬でも超える力を、彼らは持っているというのだ。 まさか、このコアが一つでも破壊され、ユートピアが地面をのたうち回る事になるなどとは、彼自身全く思わなかったのである。 「ナイス、ヴィヴィオちゃん! 次は、俺だぜ!」 そして、そんなユートピアにすかさず立ち向かっていくのは、超光戦士シャンゼリオンであった。 又の名を、涼村暁。 ──ユートピアの双眸には、そもそもここに来るはずのない戦士の姿が映っていた。 先ほどからこの場にいたのはわかっている──だが、何故、我先にと自分を攻撃しに来るのか、ユートピアにはわからずいた。 「涼村……暁ッ……!」 彼がこちら側につかなかったのは、ユートピアにとって小さな誤算だった。 暁という男のデータを見る限り、彼は酷く利己的な人間であるはずだ。何の人の運命を狂わせたかわからないどうしようもないクズ男。 そんな彼がベリアルに立てつくはずがない。 自分や、自分の世界を犠牲にしてまで──ベリアルと戦おうとするはずがない。 彼がベリアルを倒すという事は、即ち、それは彼自身の手で自らの世界を壊すスイッチを入れる事と同義だ。 彼はこの戦いに勝利したとしても、消えるのだ。NEVERとは異なり、彼がその死を恐れぬはずがないだろう。 「貴様……!」 だというのに。 「ぐっ……!!」 ……今、ユートピアの胸に“突き刺さっている物”は何か──。 この固い刃物。既に、ユートピアに食い込んだ、光の刃。 それはまさしく、反逆の証ではないか。 「シャンゼリオンめ……!」 テッカマンのコアに突き刺さっているのは、シャンゼリオンが構えるシャイニングブレードだった。 それは、左肩ごとユートピアの「コア」を貫いている。 彼は、ユートピアがひるんでいる隙に、便乗するようにしてコアを一つ破壊しに来たのだ。 「卑怯な……!」 濛々と吹きだす大量の火花の群れ。 赤く光るそれは、血液のようにシャンゼリオンの身体へと浴びせられた。 しかし、彼はユートピアの一言に何も返す事なく、冷徹なバイザーで見下ろしながら、ユートピアに次の一撃を叩きつける。 「一振り!」 「ガァッ!」 シャンゼリオンのシャイニングブレードは、満身創痍ながらもまだ力の残るユートピアが片手で掴んで防ぐ。刃がユートピアの掌を痛める。 次の瞬間、シャンゼリオンの身体に向けて、ユートピアはもう片方の掌を翳す。 「喰らえェッ……──オーバーレイ・シュトローム!」 ウルトラマンの力を持つコアが、シャンゼリオンのディスクがあるはずの胸を至近距離から貫いた。 クリスタルの結晶が砕け、シャンゼリオンの身体にダメージがフィードバックしていく。 ぼろぼろと零れるクリスタルの欠片。それは、暁の胸骨を折り、心臓まで攻撃が叩きこまれたのを意味していた。 「ぐあああああああああああああ────ッ!!」 結局のところ──ユートピアにとっても、先ほどのヴィヴィオよりも、遥かに戦い慣れないシャンゼリオンが相手である。 懐まで潜り込めば、反撃を受けた時に自分もただでは済まないと知らないのかもしれない。ただ悪運だけで生き残った男だ。 しかし、シャンゼリオンがあまりその死にも等しい痛みを受けた実感がない。 「……クソォォォォォッ!! 痛えなちくしょうッ!!」 と、軽い様子でユートピアを咎めるだけである。 今の一撃が効いていない……? いや、そんなはずはない。 このシャンゼリオンたちの金色のオーラが原因か? だが──。 「そうだ……! 攻撃を受けるのが嫌ならば……何故、我々の所へ来た!」 まるで虚勢を張るかのように、ユートピアはシャンゼリオンに問うた。 本当は、シャンゼリオンが何故ダメージをろくに受けていないのか、訊きたかったのかもしれない。だが、まともに戦って勝てない相手を前にした者が、本能から相手の戦う理由を咎めるように──ユートピアは、シャンゼリオンを批難する。 「俺はな……こういう遠足について行くのが大好きなんだよ!」 「ふざけるな……!」 その愚かな様のまま、シャンゼリオンにまた一言、叫ぶ。 負け犬の遠吠えとまではいかぬものの、ユートピアの放つ一言はそれにもよく似ていた。 一度の敗北が彼のプライドを折り、自身を喪失させたに違いない。 「……勝ったとしても消えるというのにィッ……どこまでも愚かな奴ッ!」 「俺だって気に食わないんだよ……あんたらの言いなりになるのが!」 「何故だ……!」 「そんな事、俺が知るかっ!」 強力な打撃を受けたはずのシャンゼリオンの胸に、クリスタルパワーが充填されていく。 そして、彼は叫んだ。 そう、「懐まで潜り込めば、反撃を受けた時に自分もただでは済まないと知らないのかもしれない」──ユートピアという怪人は、それを忘れていたのかもしれない。 「──シャイニングアタック!」 もう一人のシャンゼリオンが、ユートピアに向けて右腕を突きだして貫いていく。 ユートピアの持つコアに向けて進行した必殺の一撃──シャイニングアタック。 彼ことシャンゼリオンがそう叫ぶと同時に──。 「……ごぉっ!」 ──ユートピアの全身を貫く痛み。 しかし、ユートピアの力は彼自身の肉体を瞬時に再生させていく。──問題はコアだ。 破壊されたコアのデータはガイアメモリ同様、「ブレイク」と共に完全消失する。 対して、先ほどユートピアが貫いたはずのシャンゼリオンの胸の痛みは、たとえどれだけユートピアが蠢いても消えていないはずだ。 「シャンゼリオン……ッ!」 彼は何故戦う……? 自分の命も、自分の世界も、自分の仲間も……何もかもが消えるといのに! 彼自身は、本当にそれを知っているのか──!? 「……はぁ……はぁ……俺って、やっぱり……はぁ……はぁ……」 やはり、このザマだ! ──決め台詞さえ言えていない。 回復し、シャンゼリオンの方を見つめるユートピアは、最早疑問を浮かべるよりも、相手が理屈で対処できない狂人だと思うよう、思考を切り替えた。 涼村暁も少なからず自分の損得を勘定に入れて行動できると思っていたが、その考えは大きな過ちであったらしい。 「決まりす……! ぐぁっ……!!」 ……そうだ。 彼は、ただの狂人なのだ。 本来守らなければならぬはずの自分の世界さえ捨て去って、その他多くの世界の平穏を掴む為に──ベリアルを倒そうとするなどと。 加頭順からすれば、異常だとしか思えない。 しかし、そう思う事で、加頭の気持ちは少し楽になったようであった。相手が格下であるという認識を再度持つ事で、敵に対する言い知れぬ不安からは解放される。 「無様だな……シャンゼリオン……ッ! ──決め台詞ひとつ言えないとは!」 傷つき倒れかけているシャンゼリオンを前に、ユートピアは叫んだ。 しかし、自分の声も断末魔のように掠れており、頭に血が上ったかのように意識も朦朧としているのをユートピアは実感している。 だからこそか、彼は無計画に攻撃を続けた。 ──たとえ無計画であっても、少しの優位を実感してはいたが。 「こちらもだ! ──シャイニングアタック!」 一陣の風は、先ほどシャンゼリオンがユートピアに行ったように、ユートピアからシャンゼリオンに向けて放たれる。 クリスタルパワーの粒子複合体がユートピアの姿を形成し、シャンゼリオンに向けて一直線に飛んでいく。 シャンゼリオンもまた、再びユートピアに向けて叫んだ。 「うおおおおおおおおおおおおおおりゃあああッッ!!! シャイニングアタック・セカンドォォォォッッ!!!!」 二つのシャイニングアタックは空中で激突する。 クリスタルパワーによって形成されたシャンゼリオンの力と、まがい物が作り出したユートピアの力は同時に敵の懐に食らいつこうと牙を剥く。 シャンゼリオンの体力からすれば、他の連中と違い、ここで負ければ死は確実だ。 死にもの狂いの声をあげ、ユートピアを威嚇する。 そして──二つの力は爆発する。 ◆ ──ゼロと美希は、宇宙の星空の中を彷徨っていた。 自分がどこにいるのかは、はっきりとは認識していなかった。 ウルトラマンノアを探す旅は過酷を極めている。未だ、似たような景色の中で、塵のような小惑星をノアのスパークドールズと見紛うばかりである。 外部世界の介入がなく、この宇宙が模造品の無人の世界である以上、誰かからの導きや案内は、頼れなかった。 信じられるのは己の勘だけだった。 「クソッ……! 見つからないぜ……!」 時の概念も、二人にとっては無意味だ。 あるのは、擦り減っていく体力と、散漫になっていく集中力。この二つが時間の役割を果たしているかのようである。 空を泳ぎながら思うのは、果たしてこの不安定な距離を縮める奇跡はどうすれば起こるのかという事だ。 諦めるな、という言葉を信じる。 それしかない。 だから、何度も心の中で唱える。 諦めるな。 諦めるな。 諦めるな。 諦めるな────! そして、ふと……そんな声は、ゼロ達の中で反芻する言葉となってきた。 無限を捜索する中で、彼ら二人の中で重なるようにして、ずっと、息をするように反響していく言葉。 それが何度繰り返された頃か──。 二人以外の誰かが、同じ言葉を口にした。 ──諦めるな!── ◆ ──炸裂した! シャイニングアタックとシャイニングアタックのせめぎ合いは、相応のエネルギーが耐え切れずにオーバーヒートを起こし、二人の身体を吹き飛ばすような猛烈な爆風と、炸裂弾のような衝撃だけを残した。 しかし、その余波に倒れたシャンゼリオンに対し、同じく吹き飛ばされているはずのユートピアは痛く上機嫌に、シャンゼリオンのほぼ眼前に立っていた。 彼の身体には微塵の傷さえ見当たらない。 「……ふふふ」 冷静沈着に、ユートピアは嗤う。 何故彼があの攻撃の衝撃を回避する事が出来たのか……それは、ユートピアが自由に全ての戦士の力を利用する事が出来るのを踏まえれば簡単であった。 ユートピアの側も、些か冷静さを取り戻したようである。 「ふはははははッ!!! 残念だったな、シャゼリオン……!!!!!」 「何……!?」 「見るがいい……これが、魔法少女のコアの力だ……!!」 これまでに砕かれたコアの中に、魔法少女のコアは無かった。 今使われたのは、時間停止能力──暁美ほむらが使用した能力である。 加速の記憶を持つ仮面ライダーアクセルトライアルがここにいたとしても、ほむらの時間停止の中では、物言わぬオブジェになるのである。 それだけの能力により、ユートピアは時間を停止できる数秒の時を移動に費やした。 「──そして!」 次いで、────爆音! 「うわあああああああああッ!!」 その爆音は、時間停止の中でユートピアが「エキストラ」どもに向けて放った膨大なエネルギーの結晶である。 シャンゼリオンの救出に駆け出そうとしていた彼らの仲間の存在を察知し、時間停止中に攻撃を仕掛けたのだ。 目の前にいるシャンゼリオンを除き、全員が予期せぬ攻撃に吹き飛ばされる。 どうやら、ヴィヴィオの際の劣勢とは違い、今は形勢逆転に成功したようだ──ユートピアはそう確信した。 「くっ──!」 「……思ったよりも使い勝手が良いらしいな、この力も。 そう、今の私は魔法少女なのだ──!」 「ほむらの力を……使ったのか!」 シャンゼリオンも、どうやら感づいたらしい。 ──時間停止。 それがいかなる能力であるのかは、彼も、ほむらとの共闘を経て、今もよく知っている。 あれに関する制限がより緩和された今、かつてシャンゼリオンが見たほむら以上に悠々とそれを使う事が可能なのである。 ソウルジェムが濁らない以上、彼にはそんな制限さえ無力であり──そして、今は、止まった時間の中で、ほむら以上の高エネルギーの技さえも使う事が出来る。 「その通り……貴様には、この力に打ち勝つ能力などありはしない……!」 実のところ、エターナルローブを纏っていた仮面ライダーエターナルこと響良牙のみがその時間の中で移動が可能だったのである。 しかしながら、それも一瞬だけだ。すぐにベリアルの力に無効化される。──ユートピアにとっては、先ほどの爆破を回避できれば充分であった。 「暁美ほむらの力がいかなる物か──お前ならばわかるはずだろう?」 「そうか……ほむらの……」 「そう……お前の敗北は、絶対的だ」 シャンゼリオンも、些かショックを受けて項垂れるように見えた。 仲間の力が仇になった事が原因だろう。 ユートピアは、そんな彼の姿を嘲笑う。ショックを受けている間にもユートピアは、シャンゼリオンに接近していく。 「……ぷっ」 ──が。 それと同時に、シャンゼリオンも吹きだすように笑った。 涼村暁が、目の前の敵を逆に嘲笑っていたのだ。 ユートピアは、少し顔を顰めた。 「──ははははははは!! とんでもない馬鹿だな!! お前……!!」 シャンゼリオンは、顔を上げ接近するユートピアに向けて瞳を光らせた。 そのマスクの下に、涼村暁の自信に満ちた表情がある事など、ユートピアは知る由もない。 顰めた顔を元に戻して、理想郷の杖を彼に向けて振るおうとする。──所詮は、シャンゼリオンの一言など戯言だと信じて。 それは、ユートピア自身が彼を狂人と認識しているからだった。 彼が何を言おうとも、まともに耳を貸さず、ただ嘲笑い続けるしかできない。 「──知ってるか! このインケン野郎……! そいつは、ほむらの……──終わる世界を終わらせたくないっていう……そんな願いの力なんだぜ……?」 シャンゼリオンの身体が、理想郷の動きに合わせて浮き上がっていく。──杖が持つ引力に弾きつけられているのだ。 まるで、先端から見えない糸が伸びて、シャンゼリオンの身体をマリオネットとして動かしているようだった……。 「だったら……だったら……──」 威勢の良い言葉とは裏腹に、シャンゼリオンが攻撃を仕掛けられる様子はない。 ふっ、と笑ったユートピア。電撃を彼に浴びせようとする──。 「今誰よりもそれと同じ願いを持っている俺がァッ──。 お前のそんなニセモンの力に負けるわけ、ないだろォッ……!!」 「ほざけッ!」 「ほざく……ッ!!」 直後、シャンゼリオンの全身を駆け抜ける電撃──。 ユートピアは、ちらりとエターナルの方を見た。こちらに急いで向かっているようだが、まだこちらに到達する距離にはない。 シャンゼリオンの命を吸いつくすレベルまでこの一撃を続けるのは容易だ。 他の連中は、今はまだ先ほどの一撃に倒れ伏して、起き上がるのに苦労している。 一人ずつ消していけば充分こちらに勝機があるのは確実だった。 「──ぐあああああああああああああああああッッッ!!!!」 シャンゼリオンの悲鳴が轟いた。 あと一瞬──それだけ力を籠めれば、彼の全身は墨になり、全身のクリスタルは硝子細工のように砕け散っていくだろう。 ユートピアが勝利を確信した瞬間だった。 所詮、シャンゼリオンの言葉など──戯言だと、そう思ったに違いない。 「──がっ!」 しかし。 ──次の瞬間。 「……なっ」 ユートピアの真後ろから砕かれる魔法少女のコア。 それは、彼の腹が鋭い刃に貫かれたという事であった。 「……な、なぜ……!!」 衝撃によって、ユートピアが理想郷の杖を振るう右腕を自然と下ろし、シャンゼリオンもまた地面に叩きつけられる。しかし、彼を襲っていた苦痛からは解放されていた。 シャンゼリオンの変身は、他の連中よりもいち早く解けて、そこにあるのは涼村暁の半分焼けこげたような黒みがかった身体だった。 彼は、立ち上がり、鼻の上の煤を払うと、ユートピアを睨んだ。 「……ふっ」 そして、暁は、少し押し黙り、ユートピアを見てから、笑った。 馬鹿のくせに、まるで嘲るように──。ピエロを見つめるように……。 いや、馬鹿だと自覚していたからこそ、そんな暁に敗れたエリートを笑っているのかもしれない。 「ふっふっふっ……へへへへへ……!! はははははははは……────!!!!」 腹を抱えた彼の笑いは、静かなその場所にただ一人響いた。 誰もつられて笑う事はなかったが、暁はただ一人でも、そこで──まるで本当に狂ったように笑う事が出来るだろう。 目の前の強敵のおかしさが堪えきれなかったのだ。 それから、思う存分笑った彼は、ユートピアに言った。 「だーかーらー! 言っただろうが……バーカ……! いくらあんたがほむらの力を使おうが……そいつはあんたには味方しないってな!」 「何を……馬鹿な……! この力に、意思などない……!!」 「だが、幸運の女神ってやつはな……他でもない、この俺についているんだ……!!」 ユートピアの背中で、刃がそっと引き抜かれていく。 それは、「槍」だった。ユートピアの固い体表を貫いたのは、長いロッドの先端だけに取り付けられた小さな三角の刃である。 それが誰の仕業なのか、背後を観ずともユートピアにはわかった。 「──って言っても、全部あたしのお陰だけどな!」 「だーかーらー、幸運の女神でしょーが!」 ──そう、ユートピアの真後ろから突き刺したのは、“佐倉杏子”であった。 彼女の槍の金色に輝く切っ先が、ユートピアの背中から取り出される。それど同時にユートピアの身体は再生を行う。痛みはない。 ただ、あるのは、何故、彼女がそこにいるのかという疑問だけだ。 (なん、だと……?) 確かに、一対一、などというやり方をシャンゼリオンがするはずがない。それはわかっている。勝てば官軍というやり方であるのは承知済だ。 一対一をやろうとしたのは、実際のところ、試合と言う形式に拘ったヴィヴィオだけである。──ユートピアにもそれはわかっていたはずである。 だからこそ、ユートピアは周囲のエキストラを全員、攻撃して無力化したのだ。 そして、その時、倒れ伏していたはずの彼女が“そこにいるはずがない”のである。ユートピア自身も、確かに全員が倒れた事を確認してシャンゼリオンに止めを刺そうとしていたはずである。 「何故だ……!」 「へへっ……魔法少女の力ってのは、オッサンには似合わないっつー事だよ」 そして、杏子がそう答えた直後、もう一つの声が聞こえた。 『僕達が教えたんだよ……。 次にお前が時間停止やトライアルを使って一斉攻撃を仕掛けた時──!!』 真後ろを見る。──そこにいたのは、仮面ライダーダブルだ。金色に光り輝くボディを見ても、それを見紛うはずがない。 彼らもまた、何故かこの閉鎖された時空の中で平然と動いていた。 何故か……。 「ロッソ・ファンタズマの分身を消して、一気に飛び込もうぜってな!!」 翔太郎の、自信に満ちた声が反響した。 「──!」 そうか、その手があったか──と、ユートピアは、驚きながらも納得する。 少なくとも、先ほど倒したはずのダブルと杏子に関しては「幻術」により生まれた存在だったのである。 ロッソ・ファンタズマ。 把握していたはずの能力だった。加頭自身も、ついさっきまで──コアを破壊される瞬間までは、使用が可能であった技の一つだ。 ドーパントに喩えるならば、ルナドーパントに近いあの幻惑に近い。 「ロッソ・ファンタズマだと……!」 しかし、彼女たちにそれを使う隙がどこかにあったとは到底思えなかった……。 彼女たちは、かなりの長時間──シャンゼリオンが戦う前の時点で幻影と化し、本体はユートピアの死角に隠れていたはずである。 最近、ロッソ・ファンタズマを取り戻したはずの彼女が、そんな長時間、魔力を行使できるはずがない。 いつからか、と言われれば──かなり前から使用していなければ計算が合わない。 だから、加頭はその可能性はあらかじめ除去していた。 これまでも、伏兵として使われていた事は殆どなかったはずだ。 「貴様ら……この瞬間を、ずっと……!」 「その通り──。この時を、ずっと待ってたのさ!」 よもや、杏子がそれだけ上手にその技を使いこなしているとは予想がつかなかった。 そ加頭順がここで主催を代行した時点でも、「ロッソ・ファンタズマ」という技は、杏子が使う事の出来ない技であったからだ。彼女は既にその技の使い方を忘れている。 彼女の精神が既に使用を拒んでいる状態にあったはずだ。 「……なんというッ……!」 綿密な下準備を行って殺し合いを開いた中でも、杏子の「ロッソ・ファンタズマ」の再習得は在りえない話だったのである。 そして、それをこんなにも上手く、ユートピアの目を欺いて利用するとは思えなかった。 彼女は──自分の命を捨てる事さえも恐れずに、技を使っているわけだ。──いや、もしかすれば、既に“そのリスクがない”のか? 結局、彼には何もわからなかった。 「はあああああーーーーッッ!!」 そんな最中、仮面ライダーエターナルも飛び込んでくる。 そう、こうしている間にも、時間は動いている。 制限が切れた今、自分の周囲の特殊能力を無効化するエターナルのエターナルローブは厄介な代物に違いない。 こんな一瞬の隙があれば、彼にもエターナルローブを纏う時間がやってくる。 「くっ! ユートピアが負けるはずはない……こんな未来がありうるはずがない!!」 ──この逆境を越えられるのは、ベリアルの力のみ! しかし、ドーパントたちのコアも、魔法少女のコアも既に砕かれ、トリッキーな時間停止が利用できなくなっている。 この身体にもその血の片鱗が流れているはずだが、魔法少女の力をそのままコアに流入しただけのエネルギーは、彼を留めてはくれない。 『こうなる事は目に見えていた。ユートピア……お前は、力と人との、絆に負けたんだ!!』 「そう──たとえ、99パーセントの適合率があっても、∞の絆には勝てないってわけさ!!」 ダブルたちの声が、ユートピアの脳裏に突き刺さる。 何度となく聞いた彼らの言葉。 それが、指を突き立てるポーズとともに。 「『────さあ、お前の罪を、数えろッ!! 加頭順!!』」 それを聞くのは最後だと思っていた。 それは、自分が勝つからだ──しかし。 今は、違う。 その言葉を聞くのが最後になるのは──理想郷が、崩壊していくからだ。 ベリアルエクストリームの外形から、ぼろぼろと理想郷の姿が崩れ去っていくのを加頭自身も感じていた。 「──人を愛する事がァッ、罪だとでも……罪だとでもいうのか……ッッ!!!」 ユートピアは、かつてと同じダブルの言葉に、再び怒りを募らせる。 何度聞いても──何度前にしても──この問いかけに、ユートピアは同じ答えを取るだろう。 そして、その度に冴子の顔を脳裏に浮かべる。 冴子への愛。 その証明。 それが、加頭の原動力。 「いくぜ……燦然!!!」 その時、涼村暁が、変身のポーズを取った。 燦然──それは、涼村暁がクリスタルパワーを発現させ、超光戦士シャンゼリオンとなる現象である。 変身を解除されたくせに、再変身を行うつもりらしい。 ──そして。 再び、クリスタルの輝きがユートピアの前に出現した。 「超光戦士──シャンゼリオン!!」 暁が再びシャンゼリオンに燦然するのと、仮面ライダーダブル、仮面ライダーエターナルがユートピアの周囲を囲むのはほぼ同時だった。 佐倉杏子が、ゆっくりと身体を遠ざけて行く。──それは、これから行われる同時攻撃を回避する為だ。 ユートピアの逃げ場を塞ぎながら向かってくる三つの影は、同時にその必殺技の名を叫んだ。 「シャイニングアタック!!」 「エターナルレクイエム!!」 「「────ゴールデンエクストリーム!!」」 四つの声が重なり、見事なコンビネーションでユートピアの方に接近する──。 クリスタルパワーの結晶。 マキシマムドライブの衝撃。 そして、人々の祈りの風。 それらは──次の瞬間には、全ての攻撃がユートピアの身体へとぶつかっていく。 「がっ……」 ユートピアの身体に打撃の痛みが走るよりも──早く、三つの影が貫く。 シャンゼリオンのシャイニングアタック。 仮面ライダーエターナルのエターナルレクイエム。 それと同時に、仮面ライダーダブルがゴールデンエクストリームを放った。 「ぐぁっ……!!!!!!!!」 そして、身体が再生するよりも早く起きたのは──メモリブレイクと、コアブレイク。 残る全てのコアと、ユートピアのメモリが崩壊する。 ユートピアドーパント・ダークエクストリームの再建された理想郷が、再びエクストリームの姿を失い、「崩れた理想郷」へと変わっていった。 その、崩落の後さえも、また崩落していく。 全ての理想郷が崩壊し、それは、内側から大爆発を起こしたのだった──!! 「ぬっ──ぬあああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」 それは、ユートピアドーパントを中心に、周囲一帯を燃やし尽くすような黒い炎をあげ、その場にいた者たちに勝負の行方を知らせなかった。 加頭が、その瞬間、何を考えていたのか──それは、誰にもわかるまい。 (この私が────!!!!!!!!!!!!!!!!!!) ……ただ、彼の持つ力と野望は全て、その瞬間打ち砕かれた。 それだけは確かな事実であった。 そして。 「冴子さんんんんんんんんんんんんんんんんん────ッッッ!!!!!!!!!」 三人──いや、四人の戦士がユートピアの身体を過ぎ去ったが、そのシルエットは爆煙の中に隠れ、誰にも視えなかった。 彼の雄叫びが、そこにいた者たちの耳に残り続けた。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(2)Next 変身─ファイナルミッション─(4) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(2)Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(4) Back 変身─ファイナルミッション─(2) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(4)
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変身─ファイナルミッション─(9) ◆gry038wOvE 「──……おばあちゃん、それって、やっぱり失恋だったんですか?」 「──ええ……二度ある事は、三度あるものよ。 これが、私の三度目の失恋だったわ……。 そして、これは、それまでで一番の失恋だったかもしれないわね」 「……」 「──そう。やっぱり。あなたも、今日失恋したのね?」 「……はい」 「……大丈夫よ。私も、おじいさんと出会って、今ではこんなに素敵な孫が出来たわ。 失恋は、人を強くするものよ。……それにね、私と良牙さんとは、今もこれからも、ずっと友達なの」 「──でも、良牙さんって……」 「ううん、あの人は、きっとね、今も迷子になっているだけよ」 「……そうなんですか?」 「ええ。あなたもまた新しい恋をなさい。でも、あなたのその想いは、ずっと忘れてはだめよ。 人を愛する事は、罪ではない……とても素敵な事だからね」 ◆ 「──ここは」 彼らの前には、絶えず続く真っ白な光の空間があった。 まるで生まれる前にいた場所のイメージとして──あるいは死んだ後に行きつく場所として度々出るような、そんな場所だった。 しかし、彼らはウルトラマンとの同化の際も、頭の中に漠然とこんな場所が浮かんでいた。 だからか、彼らは全く違和感なく、そこがどんな場所なのかすぐに悟る事が出来たのだ。 「ウルトラマン……!」 そして、目の前には、あのウルトラマンノアがいた。 それどころか、あの殺し合いに生き残った全員がその場に林立していた。──響良牙だけは、その場にいなかった。 誰しもがきょろきょろとお互いを見合っている。 その後、誰かが言った。 「ノアがあの爆発の直前に僕たちを移動させたんだ」 ──ここは、ウルトラマンノアが彼らの肉体を運んでいる精神空間だ。 しかし、それでもそれぞれを元の世界に向けて運んでいる。これを「ノアの箱舟」などと名付けるのは、少々センスの枯れた発想であるかもしれない。 「そうか……ありがとう、ノア」 それを口にしたのは、ウルトラマンと同じ世界からやって来た孤門一輝であった。 長い間、デュナミストとウルトラマンを見守り、そして、僅かな間だけウルトラマンと同化して来た孤門──。 この時、どうやら自分が既にウルトラマンノアとは分離しているらしい事に、孤門は気づいていた。──そう、もう、それぞれがただの人間として独立しているのだ。 だが、人間だけの力でどこまでやれるのかは、良牙が教えてくれた。 ここにいる人間たちの多くは、既に変身エネルギーを使い果たしてしまった故に、変身する事が出来なくなっている──が。 それでも、まだ、自分たちは、ウルトラマンとして、仮面ライダーとして、プリキュアとして……それぞれの意志だけは捨てずに、戦っていける。 そんな感慨を抱いていた孤門だが、大事な事を言い忘れていたのを思い出して、視線を少し上げてから、言った。 「……長い戦いは終わりを告げたんだ。──僕達の勝利だよ」 それは、孤門が隊長として真っ先に言わねばならない言葉であると同時に、歓声を上げるには少しばかり空気が盛り上がらない一言だった。 他ならぬ良牙が、ベリアルと相打ちし、ただ一人の犠牲者となった事実を、夢だと思っている人間はこの場にはいまい。 「──」 そう。──良牙は、もうこの場にはいない。 勝利はしたが、それと同時に、大事な仲間が一人失われたのである……。 「──……勝利、か」 それは、隊長としての冷徹にも聞こえる「報告」であったが、実のところ、孤門らしい感情も籠っていた。 だから、誰もがそれを察して、素直に喜ぶムードになれなかったとも言える。 特に──ここにいる、花咲つぼみはそうだった。 「……良牙さん」 まだ少し暗い表情で、つぼみはそう呟いた。 名前を呼んでも、ここには響良牙は現れない。──そう、彼だけは、まだ生還者が集うこの場所に辿り着かないのである。 彼は、あのアースラの中でもそうだった。 ミーティングに集まろうとすると、彼一人だけはどうしても迷子になってしまうので、つぼみが付き添わなければ、良牙が欠けた状態でミーティングをする事になるのだ。 「良牙……あいつは……クソッ……なんであんな事……!」 翔太郎や、ここにいる者たち全員が、良牙がもういないという事実に、打ちひしがれていた。 折角、こうして出撃前とほぼ同じメンバーが揃っているというのに、この場にはただ一人、彼だけが揃わない。──全員で帰る、とそう思っていたのに。 だが、彼がいなければ、ここにいる誰も帰る事が出来なかったのもまた事実だろう。 それでも、自分の命を犠牲に散った彼の事をどこかで責めずにはいられない。そんな感情の矛盾から、どうすれば逃れる事が出来るのか──その術を彼らは探した。 「……」 そんな静寂の時、つぼみは、それを断ち切るように、おもむろに口を開いた。 「……大丈夫、ですよ」 顔を上げないまま、彼女が一番、「大丈夫ではない」様子で、それでも、言葉を振り絞るようにして、ただ一言言った。 「……良牙さんは、きっと生きてると思います」 それは、何かの根拠があっての物ではない。 ただ、言ってみるならば、「信じたい」とそれだけの想いで口にした……そんな言葉であった。 だからか、震えた唇はそこから先、彼女が告げたい事を告げさせてはくれなかった。 きっと、どこかで生きていると──信じたいのだが。 「きっと……きっと……」 「つぼみ……無理しないで」 そんなつぼみの背を、美希が撫ぜた。 同じプリキュアであり、変身ロワイアル以前にも、共に戦った事もある。そして、同じ年頃だった美希だから真っ先にこうして彼女を支える事が出来たのだろう。 「泣きたい時は、泣けばいいのよ。 私だって、これまでの事……簡単に割り切れないんだから……」 そんな美希の言葉を聞いた時、つぼみの脳裏には、いつか良牙と二人で涙を流した時の事が浮かんでいた。 だから、──自分が良牙に言った事と、全く同じ事を美希の口から告げられ、そして、その言葉を良牙がどう感じたのか悟り……泣いた。 ただ、今、涙を流すのは、あの時と違ってつぼみだけだった。 「……」 つぼみ以外は、この場にいる者は泣いてはならない気がした。──つぼみ以上に良牙の死を悲しんでいる者はいないのだから。 それでも……良牙という、クールなようでただのバカだった男はもういないと思うと、誰もが涙が溢れそうになった。 きっと、先に、友や、かつて愛しく思った人たちの所へ行ってしまったのだろう。 不幸にも、生きている仲間たちや想い人を、この世に残しながら……。 「……」 翔太郎が、自らの顔を隠すように帽子を直して、それから少しして、つぼみに向けて言った。 「──……なあ、つぼみ。俺にも、さっき、加頭に言われた事の答えが出たんだ。 誰かを愛する事ってのは、絶対に罪じゃない……きっと、あいつの歪んだ愛も。 そして、ずっと……自分を守ってくれた人を想う、純粋な気持ちも」 愛。──最後にベリアルに完全な王手をかけたのは、その見えない概念だった。 確かに、その直前、加頭順との戦いで、彼の愛情を打ち破って勝利した彼らであったが、しかし、最後にはそれと同じ感情に助けられたわけだ。 「……なんかさ、愛っていいじゃねえか」 加頭の罪は、誰かを愛した事ではない。 それだけならば、何と素晴らしい事か──翔太郎は、この戦いの最後に、それを深く実感し……もし、加頭でさえも救えたなら、と僅かな後悔を芽吹かせた。 彼女たちなら、確かに、それが出来たかもしれない。 「良牙くんがベリアルを救えたのも、きっと、きみの純粋な愛情があったお陰だよ。 誰かを愛するって事は、……やっぱり、何より、素晴らしい事だと思う」 「今は、その強い力でこれからあいつの為に何が出来るのか、考える事にしようぜ。 ……何せ、きみならそれも出来そうだしさ」 かつて、愛した者を喪った孤門と零は、そう付け加えた。 この戦いの幕を閉ざした良牙の一撃には、確かに、つぼみの力が必要だった。 あれは、彼女の想いが勝ち取った終幕なのだ。 「みなさん……」 つぼみは、涙を拭き、そして、この時に、ある決意を胸に抱く事になる。 それは、後に、花咲つぼみが大人になった時にまで、在りつづける想いと夢だ。──そこに向かって、彼女はいつまでも惜しまぬ努力を続けるだろう。 「……私、やっぱり、あれだけの事で良牙さんが死んでしまったなんて思っていません。 あの人は、誰より強いし、約束を破る人じゃないから……だから……」 そう、彼女もまた、この殺し合いを通じて変わっていった。 「いつか、また、あの世界に行く方法を探して──良牙さんを、きっと見つけます。 それで……あかりさんのもとに、必ず届けます」 だから、泣いてもいいのだ。また笑顔に変える事ができるのなら……。 彼女は、自らの涙さえも、笑顔へと変えながら、言葉を噤んだ。 「それに……ああして、悲惨な殺し合いが起こった場所にも、たくさんの花が咲いてほしいから、私は──きっと、戦いがあったあの場所に、いつかまた……」 ──彼女には、夢が出来た。 良牙があの世界に、本当にまだ生き続けているのかはわからない。 それでも、まだあの世界にやり残した事は、たくさんあるのだ……。 「そう。だから……私、決めました。────私、幾つもの世界を渡る植物学者になります!! 暗い世界が幾つあるとしても、そこに悲しみのない未来を築いて……そして、世界中に笑顔の花が咲くように!!」 「出来るわよ。……だって、私たち──こんなに完璧に、世界を救ったんだから!!」 ◆ 【その後】 ……そして、花咲つぼみは、これより後、本当に有名な植物学者になったと言われる。 元の世界に帰った後、「変身ロワイアルの世界」と外世界を繋ぐゲートは完全に閉ざし、その座標を見つける研究は困難を極めた。まるで全ては幻だったかのように、あの島に辿り着く術は消えてしまったのである。 だが、つぼみもその後は粘り強く研究を続け、後には元の世界で男性と結婚している。それにより、花咲という名前は改姓し、その後は別の名前になっているが、やはり花咲の名前の方が多くの人の心に残っているようだ。 そして、彼女の祖母、薫子と並び、長らく植物学の第一人者として有名になった彼女は、幾つかの惑星や、植物の無かった世界にも、新しい命を授けた功績で、ノーベル賞を受賞している。 ◆ 「……──そうだね。僕も、みんなには、そうして笑っていてほしい」 ふと、光の中から現れたのは、フィリップであった。 先ほど、ノアがここに運んでくれた事を彼らに説明したのもまた、変身解除と共に消えたはずの──フィリップである。 だが、誰も今、その姿を見て驚きはしなかった。 変身解除とともに消えてしまった彼の事は、ふとどこかへ姿を眩ましたような……ただそれだけのような気がしていたからだ。 しかし、今、ようやく実感としてここに現れるのだ。 「やっぱり、ここにいるみんなには、笑顔の方が似合っているね」 「フィリップ……」 「僕達……ガイアセイバーズは、カイザーベリアルに勝利した。だから──」 そう──。 「──だから、僕とは、ここで、お別れだ」 彼が、こうして現れたのは、また、言えなかったお別れを言いに来ただけに過ぎない事なのだという、実感として。 フィリップと共に戦えるのは、最終決戦の間のみだった。それが終わり、かつてのように変身が解除されれば、フィリップとは本当の別れの時が来る。 こうしてフィリップがここにいるのは、ここが、フィリップが同化して戦ったノアの中だからだ。──闇の欠片に再現された彼の思念が、辛うじてこの場に少し残っていたという事なのだろう。 「ウルトラマンの中に残っていた僕の思念も、もう消えてしまう。 この戦いで散った者は、遂に本当の死者になるんだ……」 フィリップ、そして、涼村暁……この戦いの終わりと共に、消えねばならない者たちが、良牙だけではなく、まだこの場にいる──そんな悲しい事実があった。 彼らは、最後まで世界を救った。 その代償は、その身の消滅だ。自ら消滅に向けてアクセルを踏み、命を燃やし尽くした彼らの最後を、誰も止める事は出来ない。 フィリップもまた、その宿命を受け入れていた。 「フィリップ……」 翔太郎が、暗い面持ちを帽子の中に隠し、フィリップの方を見ないようにそう告げた。 翔太郎とフィリップとの間には、何人かの仲間が遮ってしまっている。──彼らは、ゆっくりと二人の間を開けようとした。 「……君とは、何度か別れた事があるけど……やっぱり、君はいつも泣いているね」 だが、フィリップは、今決して、目の前にいるわけでもない左翔太郎の表情をぴたりと言い当てる。──それは、彼が探偵だからというわけではない。誰でもわかる事だった。 かつて、ユートピア・ドーパントとの決戦に際して、もう会えなくなったはずのフィリップ──今は、肉体もなくなり、精神だけが残っていたが、それも遂に消えてしまう。 データとの同化ではなく、本当の死。 翔太郎は、クールに振る舞うのをやめ、帽子の中に隠していた崩れた表情をフィリップに向けた。 「ああ、そうだよ!! 泣かねえわけねえだろ……! 何度だって……お前との別れになんて、慣れるはずがないだろ……クソッ……!!」 ──だが、フィリップはそんな翔太郎の姿を見ない。 このままいつまでも二人では、いられない。 それが、翔太郎の目指す物──「ハードボイルド」とは、全く裏腹な物なのだから。 もう二度と、戦う翔太郎の前にフィリップが現れる事はないだろう。──フィリップ自身が、それをもう望まないのかもしれない。 しかし、彼が一人で戦い続ける姿を──たいせつな「相棒」の活躍を、フィリップはこれからも見守っていくに違いない。 「……そんなんじゃ……いつまでも、ハーフボイルドのままだよ……翔太郎」 ──そう言うフィリップは、「ハードボイルド」だった。 その名前も、高名なハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの傑作が生みだした名探偵フィリップ・マーロウに由来する。 だから、涙を流す翔太郎を少し笑いながら、彼より少し、大人に、ハードボイルドに去ろうとするのだ……。 「……じゃあ、杏子ちゃん、みんな。」 彼が成長し続ける為に……。 少しは、冷たく見えてしまうかもしれないが……。 フィリップが、翔太郎の泣き顔を振り返る事はなかった。 「……こんな奴だけど、これからも翔太郎をよろしく」 そして、フィリップの後ろ姿から告げられるそんな願い。 彼は、ただゆっくりと光の向こうへと、歩み進んでいく。 彼はもう、有るべき場所に帰ってしまうのだろうか。 「──なあ。よろしくされるのは良いけどさ」 ──だが、ふと、その前に。 「フィリップの兄ちゃん……一つだけ、いいか?」 杏子が、フィリップの背中に向けて、一言だけ告げようとした。 このまま返す訳にはいかない、と思ったからではない。彼女には、フィリップに対する大事な用事があったからである。 一言、どうしてもフィリップに……そして、翔太郎にも言わなければならない事がある。 去ってしまうのは仕方ないかもしれないが、その前に一つだけ、フィリップに言ってやりたい言葉があったのだ。 杏子は、右手の人差し指と親指だけ伸ばし、ピストルのようなポーズを取り、ウインクしながら──フィリップに言った。 「────泣いている奴をからかっていいのは、泣いていない奴だけだぜ?」 杏子は、今決して、こちらを見ているわけでもないフィリップの表情をぴたりと言い当てた。 そんな杏子の言葉は、どこか、ハードボイルド探偵に似ている。 それを聞いたフィリップも、思わず、少し振り返って、赤い顔を見せ、そんな杏子の言葉に笑ってしまう。 「ふっ……。そうだね、結局──」 フィリップは、身体データの残留から洩れた涙を、手で拭った。 ハードボイルド探偵の名前を受け継いでいるとはいえ、フィリップも同じか。 翔太郎も、フィリップも、ハーフボイルドだった。──お互い、どれだけ恰好をつけようとも。 「僕達よりも、君が一番ハードボイルドかもね……──はは」 少しだけ、去り際の空気が湧いた。 誰かが、フィリップを優しく笑った。そして、半泣きの翔太郎とフィリップも含め、全員が、この杏子の尤もな指摘に笑顔を見せた。 「はははははははははははっ!!!」 「はははははははははははっ!!!」 悲しい筈だというのに、笑いがこみあげた。 余裕があるように見えて、実のところ、そうでもないフィリップの姿が、少しおかしかったのだ。 人が消えるというよりも、まるで卒業式で涙を見せる同級生をからかうような、笑みと涙の混ざり合った雰囲気が流れた。 翔太郎も、つられて笑い、先ほどまでの涙が嘘のように笑って、フィリップに言った。 「──……ああ。……またな、相棒!」 フィリップも微笑み返した。 それが、フィリップの最後に聞いた、相棒の声だった。 また会えるかはわからない。翔太郎がいつ、死んでしまうのかも、今のフィリップにはまだわからない。 しかし、きっと彼はあの街の風の中で──。 「……うん。もう行くよ。翔太郎ならきっと、しばらくは大丈夫さ」 フィリップの行く先には、ウルトラマンノアの巨体と、彼らの多くが初めて見る事になった“円環の理”の姿があった。 ここは、もう変身ロワイアルの世界から遠く離れた、異世界の扉なのだろう。 「次に会う時も、翔太郎は、まだまだ全然……ハードボイルドにはなってないかもしれないけど──」 二つの神。 消えゆく二人を、ノアと円環の理が導き、連れて行こうとしているらしい。 「──きっと、誰よりも仮面ライダーだと思う」 ……そこに、ゆっくりとフィリップはただゆっくりと、向かっていった。 【フィリップ@仮面ライダーW 再消滅】 ◆ 【その後】 ……左翔太郎は、この数年後、誰よりも早く、若くして亡くなった。 理由は、風都市で少年を庇い、トラックに轢かれた為の事故死であったという。 凄惨な殺し合いを生き残った生還者が、その後まもなくして、殺し合いと無関係に死亡したという事件は、多くの人に衝撃を与え、風都を愛した男の痛ましい死として、涙を誘った。 しかし、風都で流れる涙を一つ拭い、そして、愛した街・風都で死ぬという結末を迎えた彼の死に顔は、満足げな笑顔が浮かんでいたという。 また、誰も知る由もないが、この出来事は、このトラックに轢かれ死んでしまう筈だった少年──“葵終”とその家族の運命を変える事になった。 そして、鳴海探偵事務所は、その後の時代も、所長の鳴海亜樹子や、ライセンスを取得して風見野市から移住した佐倉杏子らの尽力によって存続し、その後も風都に流れる涙を、新たな探偵たちが拭っている。 そう、風都の風を愛する者たちが……。 ◆ 『──あなたも時間よ。行きましょう、暁』 フィリップの消滅後、そう告げられたのは涼村暁に他ならなかったが、それを告げたのが何者なのか、すぐには誰もわからなかった。 空を飛ぶ天使のように、長い黒髪の少女が暁に寄って来たのである。 「……?」 暁は、瞼を擦った後、頬をつねってその少女を何度か見直した。 周囲の仲間たちを見ても、何やらその少女の方を見てキョトンとしている様子ばかり浮かんでいる。 「……ほむら? ん、夢じゃないよな?」 それは、死亡したはずの暁美ほむらに違いなかった。 これまで、夢で出てくる事はあったが、こんな、誰にでも見える形ではっきりとほむらが現れたのは初めてである。 『私たちは、円環の理の鞄持ち。 どこの時空にも救われないあなたの魂をどこかに持って行かなきゃならないのよ。 それまでは、私たちのもとで預かる事になるわね』 「ちょっと待て。どこかってどこだよ」 『“どこか”よ』 「あ、ああ……それはあんまり考えちゃいけないんだな……。 でも……送るにしても、あとちょっと、ほんのちょっとだけ、待ってくれよ」 何やら、このほむらも、円環の理と共に暁を迎えに来た形になるらしい。別に激励をしに来てくれたわけでもない。 言ってしまえば、『フランダースの犬』でネロとパトラッシュを運んでいく天使が、ちょっと凶悪になった感じの物だと思っていいらしい。 とりあえず、理屈で言うと、滅びゆく世界の中で分離した夢世界の暁の因果と、滅びゆく世界の中で概念と化したまどかの因果とが、なんか色々あって結びついたとかそんな感じである。 そんなこんなで、暁も消滅の時が来たらしい。 「あーあ……やっぱり、俺、消えちまうらしいな」 ……結局のところ、こうなる運命が抗えない事はどこかでわかっていた。 あの世界は、やはりダークザイドによって滅ぼされてしまうのかもしれない。 いや、そうでなくてもあの涼村暁という男は、あのままダークザイドと戦うとしても、きっと自らが見続けた甘い夢を捨て去ってしまうような予感がした。 しかし、イレギュラーな存在である暁は、しばらくこうして誰かのもとに残り続ける事が出来た。 最後に、自分もフィリップのように別れを告げようと、そうしているに違いない。 「……なあ、みんな」 暁がそうして切りだす。 「あのさ、俺の事……忘れないでくれよ? なあ、頼むぞ?」 と、暁の口から出て来たのは、やや切実な悩み。 このまま忘れ去られてしまうんだろうか、というちょっとした心細さが、下がった語尾から感じ取れた。 死ぬだけならまだ良い。太く短く生きるという事で。 だが、忘れ去られるのは、今になってみると少しいやな物だと思った。 暁にそう言われた仲間たちは、少し呆れた顔でお互いの顔を見合った。 「──そう簡単に忘れられるようなタイプかよ……まったく。 忘れたくても忘れられるような奴じゃないぜ、お前」 代表してそう口にしたのは、同じ「スズムラ」の零である。 そんなニヒルな口調の中にも、どこか友情めいた意識が残っているようで、もうおそらく会えないであろう事に一抹の切なさを感じているような気分でもあった。 郷愁感を噛みしめるような不思議な表情のまま暁を見つめる零は、それでも消えるまでの間、彼を思いっきり安心させてやろうと思った。 それくらいはしてやってもいい。 いや、それでも足りないくらいだ。 ここにいた仲間は──ここに連れてこられた参加者たちは、誰が欠けてもベリアルを倒して、世界を救う事なんて出来なかったのだから……。 「お前は……涼村暁は、確かにここにいた。────ほら、聞こえるだろ? 暁」 零は、そう言った。 誰もが、そんな零の言葉を聞いて、耳を澄ませた。 「──!」 ……何故、誰も気づかなかったのか不思議になるくらいの大歓声が、ずっと鳴り響いていた。ただ、それに零だけは、ずっと気づいていたのだ。 「これは……」 今、外の世界はどうなっているのか──。 それは、自分たちが支配はら解放された喜びと、それを助けてくれた人間たちへの感謝の言葉と喜びだけが響いている。 こうして今、外の世界に向かおうとしている彼らは、大群衆に囲まれたパレードの道に運ばれているような物なのである。 『凄かったぞ、シャンゼリオン……!!』 『ありがとう、シャンゼリオン……!!』 『──忘れないぞ、お前の事は……!!』 人々がシャンゼリオンに──涼村暁という、一人のどうしようもない男に向けた歓声が、その時、誰にも聞こえた。 それは、暁の幻と生まれ、幻として消えゆく一生に光を灯してくれるような……今までで一番、嬉しい他人たちからの感謝の言葉だった。 空を見上げ、シャンゼリオンへの人々の感謝の声に浸り、その人たちの笑顔を頭の中で想像する。──不思議と、実像に近いものが浮かんできた。 「これが、俺たちの戦いを見ていた、みんなの声さ……。 誰も、絶対にお前を忘れる事なんかない。 お前がいた時間は、誰にとっても、夢なんかじゃないんだ──!!!」 ああ、それは今、誰もが実感していた。 涼村暁は幻ではない。 涼村暁は夢ではない。 ここにいた、一人の人間であり、世界のヒーローであり、ここにいる全員の大切な仲間なのだ。 「──零。……全く気づかなかったけど、お前、意外と良い奴だな……!」 「お互い様だろ? 俺も、全く気づかなかったけど、良いザルバを持ってた」 「……ザルバ? ザルバってその──」 「旧魔界語で、『友』って意味さ」 かつて無二の友に言った言葉──友(ザルバ)。 ここにいる魔導輪の名前の由来であり、零にとって、旧魔戒語で好きな言葉の一つでもある。 そして、それを聞いたレイジングハートが付け加えた。 「……つまり、暁は、私たち全員の『ザルバ』というわけですね」 『おいおい、こんな奴と一緒にするなよ』 本物のザルバが付け加えると、その場がまた少し笑いに溢れた。 最後くらい暁に華を持たせてそういう口は控えろよ、と。 しかし、それもまた、暁らしい最後のようにも思えた。 それが少しまた自然と静かになってから、ヴィヴィオが口を開いた。 「……暁さん。私、暁さんといる時間……結構楽しかったんです。 みんな、あんな状況だったけど、暁さんには、たくさん笑顔を貰えた。 そういう意味では、暁さんも誰より輝いていたヒーローなのかもしれません。 ……ゴハットさんが言っていたように」 輝くヒーロー──超光戦士シャンゼリオン。 勇気を心と瞳に散りばめ、駆け抜けていく光。 風が円を描いて現れる光のヒーロー。 選ばれた戦士。──MY FRIED。 それが、この、涼村暁という男だった。 「ふっ……やっぱり、俺、意外と『みんなに慕われる無敵のヒーロー』じゃんか……」 暁は自嘲気味に笑った。 まさか、自分が本当にヒーローになるなんて、暁も全く思っていなかったのだろう。 しかし、気づけば、暁は誰よりも「ヒーロー」だった。 「当り前さ。お前も、俺たちと一緒に世界を救ったんだからな」 翔太郎が付け加えた。 探偵という同職のよしみといったところだろう。あまり仲がよろしくはなかったかもしれないが、お互い案外楽しい時間ではあった。 『ねえ、暁。そろそろ……』 と、そんな時、遂にほむらがせかした。もう時間がないという事だろう。 しかし、お別れは充分に済ませた後だった。 悔いはない。 この世界には、もう、思いっきり自分がいた証を残したのだから。 「──おう、待たせただな……!」 だが、たった一つだけ忘れた事を成し遂げる必要があった。 「じゃ、最後に一つだけ……」 そう、まだアレをやっていない。 ベリアルを倒したら、思い切り言ってやるつもりだったのだ。 そして、彼は、大歓声の中心で、それに負けじと大きな声で叫んだ。 「────俺たちって、やっぱり……決まりすぎだぜ!!!!!!!!!!!」 【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン ────OVER THE TIME】 ◆ 【その後?】 ……涼村暁の夢を見る、本当の涼村暁は、ダークザイドとの決戦の瞬間、自分と同じ「もうひとりのシャンゼリオン」と出会い、パワーストーンと呼ばれるシャンゼリオンのパワーアップアイテムを受け取る事になった。 だからといって、彼がダークザイド軍の圧倒的な戦力に勝ちえたのかはわからない。 あの世界は滅び、やはりシャンゼリオンは消えてしまったかもしれない。 だが、後の時代にも、あらゆる世界では、超光戦士シャンゼリオンと暗黒騎士ガウザーの決戦は世界に刻まれた名勝負として記され、「涼村暁」の名前は、多くの人間たちの胸に残ったと言われている。 ◆ 「みんな……いなくなっちゃいましたね……」 「ええ。……でも、二人は、きっと向こうでも楽しくやっている事でしょう」 「そりゃあ……あのまま円環の理に導かれたら、ハーレムだもんな……」 「むしろ、あいつも今より楽しんでそうだな……」 二人が去り、円環の理も消えた。 この場所に残ったのは、孤門一輝、花咲つぼみ、左翔太郎、佐倉杏子、涼邑零、高町ヴィヴィオ、蒼乃美希の七名とレイジングハート──そして、二人のウルトラマンだけであった。 その人数と存在感にも関わらず、既にこの場所はがらんとしたような雰囲気がした。 どこか物悲しく、どこか寂しいが、それでも、ここにいる者たちは、残る時間をちょっとした雑談で埋めようとしていた。 もう悲しむ時間など必要ない。 「あいつらは、きっと、どこかに存在し続けてるさ」 そんな、前向きな一言が出てくる。 彼らを縛っていた何週間もの苦痛は終わりを告げ、そして、またその後の彼らの新たなる人生が始まろうとしている。 それぞれが別の道を行く事になるだろう。 「──そうだ……私も一つだけ、言っておく事がありました」 ふと、レイジングハートが口を開いた。 これからの生活を考えた時、ダークザギとの決戦前の零の言葉を思い出したのだ。 あの時は、零もレイジングハートも、ヴィヴィオが死んだと勘違いしていた為、零は、「レイジングハートと共に旅する事」を提案していた筈である。 零も元々孤独だったのに加え、シルヴァが破損し、相棒を喪い……二人は、お互いに孤独な身になるはずだったのだ。 しかし、結果的に、二人とも、そうではなくなった。 一応、約束だったのだ。返事をしておかなければならない。 「零……あなたに一つだけ伝えなければならない事があります。 私は、あなたと一緒に行く事が出来ません」 「……」 「ヴィヴィオと一緒にいてあげたいのです。 それに、アリシアも──親がいない二人についていてあげたい……それが、私の願いです」 そう──レイジングハートはこれから、ヴィヴィオとアリシアのもとで二人の面倒を見ておきたいと思っていた。 ヴィヴィオもアリシアもまだ幼い。 二人とも、一人では生活できないが、レイジングハートがその身元を引き受ける形でどうにかする事はできないだろうか? 彼女は、そう考えていたのだ。 「……何言ってんだよ、レイジングハート。俺だって、もう孤独じゃないんだ。 それぞれの道を行けば良い。……また会えるさ」 零も、とうに自分の道を進む決意を決めていたようだった。 彼はこれから、修復されたシルヴァや、死んだはずだった父や婚約者とともに、魔戒騎士として戦い続けて行く事になるだろう。 しかし、零がそんな事を言うと、横からザルバが、 『とか言って、少し別れが惜しいんじゃないか? 零』 などと茶化した。 「うるさいな……。 でも、お前だって、帰ったら、次の黄金騎士が現れるまで眠るつもりなんだろ? お前こそ、本当にしばらく会えないじゃないか」 『ああ……鋼牙が死んでしまった以上は、そうなるな』 ザルバも、これからしばらくは、零とは別の道にある事になる。 同じ世界にいる零でさえ、その後ザルバと会う事は出来なくなってしまうだろう。 それは、他の仲間たちにとっては、初めて聞く事になった事実である。 「そうだったんですか。……寂しくなりますね」 ヴィヴィオが、それを聞いて、驚きつつも、視線を下げた。 『大丈夫さ、零が次の後継者を探してくれるらしい。俺もすぐにまた、どこかで会うさ』 「ああ。その時が来たら、いつか会わせてやるよ、お前たちにも」 零は、そういう意味でも既に覚悟を持っている。 ザルバと黄金騎士の鎧を継承する、新たなる魔戒騎士の誕生を支援し、見守る為に……。 元々弟子を持つつもりのない零も、きっとその少年の師となる事になるだろう。 「──……そうですね。皆さん、また、会いましょう」 ふと、つぼみが言った。 「毎年……ううん、もっと時間はかかるかもしれないけど……また、みんなで会いましょう! 一緒に約束したんですから……!」 そんなつぼみの提案は、誰もが笑顔で返した。 実際のところ、つぼみと美希は度々会う事になるだろうが、他の世界で生きる者たちはその機会は少ないかもしれない。 しかし、出来るのなら、会える限り、みんなでまた会いたい。 それこそ、「同窓会」というのもいいかもしれない。 「そうだな……」 翔太郎も、それに乗った。 出来るのなら、十年後、二十年後もみんなで揃って楽しくやりたいと、この時の翔太郎は思っていた。 ヴィヴィオが再び口を開いた。 「じゃあ、今度は、誰が一番長く生きられるか──……そういう競争を始めましょう」 「なんだよそれ、ヴィヴィオが一番有利じゃねえか」 「あはは……考えてみたら、そうですね」 そんな仲間たちの姿を、孤門はじっと見つめていた。 「そうだね。笑ってお別れが出来るように、死んだ仲間の分まで生きていこう──」 ◆ 【その後】 ……高町ヴィヴィオは、この後、ストライクアーツでの成績においては、概ね優秀ではあったものの、結局その選手生命の中においては、大きな大会で優勝を手にする事はなかった。 その要因に、アインハルト・ストラトスに匹敵する良き友、良きライバルが現れなかったという事実がある。 私生活では、ヴィヴィオはレイジングハート・エクセリオン、アリシア・テスタロッサの二名と共に、奇妙な共同生活を続け、それぞれ自立していった。 ストライクアーツを引退した後は、そのトレーナーとして活躍。 ヴィヴィオやアインハルト以上の選手を多数輩出している。 ◆ 【その後】 ……涼邑零は、その後、黄金騎士を追悼するサバックで見事優勝を果たし、その優勝賞品として一日だけ冴島鋼牙を現世に呼んだ。 そして、そこで呼ばれた死者・冴島鋼牙と御月カオルの間には、冴島雷牙という子供が生まれた。 ザルバも、雷牙の成長と共に再び始まった黄金騎士の系譜の中で、多くの魔戒騎士の生き様を見届けている。 零は、別の管轄へと移り、「銀牙」という名を取り戻し、家族とともに暮らした。彼の仕事は、相変わらずホラー狩りだ。 ……とはいえ、ベリアルを倒した英雄譚の中に、彼に関する記録は、もう殆ど残っていない。 魔戒騎士やホラーの記録は、一部の人間以外の世間一般には、やはり抹消され、銀牙やそれを継ぐ魔戒騎士たちは、再び誰にも知られる事なく仕事を続けているのである。 だが、ガイアセイバーズとして共に戦った仲間の内では、彼らに関する記憶は、消されなかった。 ◆ ふと、ウルトラマンゼロとウルトラマンノアが作り出していた空間が、進行のスピードを緩めた。 彼らにとっては、移動している実感が薄かったためか、ウルトラ戦士である二人以外は誰も気づていなかったようだが、ゼロが口を開いた事でその事実がわかる事になった。 「──おっと、俺たちが付き添えるのはここまでみたいだ」 「え?」 美希が、ゼロの言葉に疑問符を浮かべる。 このまましばらくは、こうして仲間たちと一緒にいられると思っていたが、ゼロももう何処かに行ってしまうのだという。 「俺たちも力を結構使っちまったからな。 お前たちを纏めてミッドチルダまで送る事しかできないんだ。 後は、各自、向こうで元の世界に帰ってくれ……本当なら、最後まで面倒見てやりたいんだが──」 彼らウルトラマンが生還者を運べるのは、ミッドチルダまでらしい。 しかし、そこにはアースラで共に戦った仲間たちが待っている。──そこにさえ辿りつけば、時空移動も出来るはずだ。 ゼロはそれぞれの故郷の世界にまで生還者を帰してやれない事をどこか申し訳なさそうにしていたが、結局のところ、その準備がある場所に連れて行ってくれるというのなら、ゼロが気に病む必要はない。 それよか、彼らにとって悲しいのは──。 「ウルトラマン……きみたちとも、また会えるかい?」 そう……ウルトラマンという、最後に共に戦った仲間との別れであった。 ウルトラマンゼロ、そして、ウルトラマンノア。 最後の戦いを共に乗り越えた、絆を結んだ相手。 二人のウルトラマンは、黙って、その巨大な頭を頷かせた。 美希が、ゼロへと訊く。 「ゼロ……あなたは、これからどうするの?」 「ヘッ……俺はまた、助けを呼ぶ声に耳をすませながら宇宙を旅するつもりさ。 宇宙にはまだ、ベリアルの遺した影響や、それ以外の脅威も残ってるからな」 どうやら、彼はこれまでと同じように旅を続けるらしい。 それは、広い宇宙と次元の旅で──寿命が地球人より遥かに長い彼らの旅だと思えば、本当にゼロがまた現れた時に、そこに美希たちが健在であるかはわからなかった。 「それに、あのベリアルの事だ。また、いつ蘇って悪さするかわからない。 まっ、その時は、今度こそ俺の手で引導を渡してやるぜ──!!」 黒幕の再誕……という、悪夢をゼロは再度考えて言ったが、それは笑えなかった。 またベリアルが現れ、これだけ大変な事を仕出かしてくれるなどあまり考えたくはない話である。 とはいえ、不思議な安心感があるのは、何故だろう。 ゼロの言うように、ベリアルがもしまた現れたとしても、今度はウルトラマンたちがきっと何とかしてくれるような……そんな力強さを感じた。 「……とにかく、その辺の後始末は、俺たちウルトラマンに任せとけよ! もし困った事があった時は、いつだって呼んでくれ。マッハで駆けつけてやるぜ!」 ゼロは本当に、もうどこかの世界へ行ってしまうらしかった。 それならば、美希も、この戦いで最後に自分を支えてくれたゼロにお礼を言っておかなければならない。 「……ゼロ、最後にあなたと戦えてよかった。……ありがとう。 最後に孤門さんやシフォンを助けられたのは、あなたが信じてくれたからよ」 「きゅあー♪」 ゼロは恥ずかしそうにそっぽを向いた。そんな姿を、美希とシフォンは顔を見合わせて笑う。 孤門は、そんな様子を見た後で、今度はノアに訊いた。 「……ノア、君も次のデュナミストを探してどこかへ旅するのか……?」 ノアは、一言も喋る事なく、その巨大な顔を頷かせた。 孤門は、これまで多くのデュナミストとともに戦ってきた巨大な戦士を見上げ、不思議な嬉しさに目を潤ませた。 彼はまた、どこかで新たなデュナミストに繋がっていくだろう。 今回の戦いで再び力を使ってしまったノアは、もしかすると、今後再び、ザ・ネクストやネクサスの姿に戻ってしまうかもしれない。 しかし、たとえその姿でも、そこに現れた新しいデュナミストと支え合い、共に戦うだろう。 「そうか……」 寂しそうに俯いたように見えて、それでも、また新しい決意に満ちた表情で、再び顔を上げて、孤門は告げた。 彼らの言葉を、信じよう。 「どこかの次元で、また必ず会おう……ノア、ゼロ!」 「おう! じゃあ、みんな、元気でな!」 そして、それから、間もなくだった。 ゼロが、最後の言葉を告げ、飛び去ったのは──。 「────さあ、もう着いたぜ。 またいつか会おう、ガイアセイバーズのみんな……! さあ、行こうぜ……ノア!」 【ウルトラマンゼロ@ウルトラシリーズ 生還】 【ウルトラマンノア@ウルトラシリーズ 生還】 ◆ 【その後】 ……蒼乃美希は、当人の希望通り、モデル業を続けた。 桃園家、山吹家の遺族には、孤門たち仲間の手を借りず、自らの口で再度事情を話し、遺品を手渡したという。 モデルを引退した後は、自らのブランドを持つまでに成長した。 彼女はこっそり自らが手掛けるファッションのモチーフに、友人へのメッセージを込めているらしい。 そして、そうした遊び心も、概ね好評であったという。 ◆ 【その後】 ……孤門一輝は、西条凪と石堀光彦の死、和倉英輔と平木詩織の引退に伴い、この数年後にナイトレイダーの隊長となり、彼らの世界に残るスペースビーストと戦い続け、人々を守る事になった。 魔戒騎士の世界がこの戦いの後に記憶や記録の改竄を行ったのに対し、ウルトラマンたちの世界は、メモリーポリスによる介入は行わず、人々はスペースビーストの脅威と戦いながら生きている。 ちなみに、斎田リコもこの世界では健在であり、後に二人は結ばれ、「タケル」という息子を授かる事になった。 そして、彼らの世界にはこの後に、ウルトラマンゼロや、多くのウルトラマンたちが訪れ、人々とウルトラマンは、「絆」を繋ぎ続けた。 「──諦めるな」 ……そう、この言葉も伝えながら。 ◆ 「──……おっと。さて。あと一つだけ、仕事が残ってるな」 「仕事? ……ああ、そうか!」 「こんな話、している場合じゃないですね」 「ああ、行こう」 「変身はできなくても……」 「そんな事は関係ありませんからね!」 「ザギやベリアルも救う事が出来たんだ……きっと、出来る」 「もし戦うなら、そん時は思いっきりやるけどな」 「────シンケンジャーの世界へ!!」 これから、血祭ドウコクのもとへ向かう事になる彼ら。 まだ、戦いは終わらないかもしれない。 変身する事が出来ないヒーローたちに、これから何が出来るのかはわからない。 しかし、バトルロワイアルは全て終わり──そして、助け合いの時が来ようとしている。 ────ガイアセイバーズとカイザーベリアルの戦いの物語は、まずはこれまで。 【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはVivid 生還】 【左翔太郎@仮面ライダーW 生還】 【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア! 生還】 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 生還】 【蒼乃美希@フレッシュプリキュア! 生還】 【孤門一輝@ウルトラマンネクサス 生還】 【涼邑零@牙狼─GARO─ 生還】 【以上に加え、血祭ドウコクが先に生還】 【生還者 8/66名】 【変身ロワイアル MISSION COMPLETE】 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(8)Next 変身─ファイナルミッション─(10) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(8)Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(10) Back 変身─ファイナルミッション─(8) 孤門一輝 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変身─ファイナルミッション─(2) ◆gry038wOvE 「──ここは、どこだ? いや……」 ……気づけば、仮面ライダーエターナルたちの周囲には、あの景色が再現されていた。 エターナルは、お決まりの台詞を告げて、周囲をきょろきょろと見回しながらも、自分たちがどんな場所にいるのかを頭の中ではよく把握しているようだ。 それもそのはずだ。自分の体がここになければ困る。ここまでの出来事が全て夢というわけでもない限り、今日、この時は自分の体がここになければならない──それが自分たちの宿命なのだ。 「──」 ──彼らを殺し合いに呼び寄せたあの世界。 何日か前までここにいて、何日か前まで戦っていた世界と、全く同じ風。 光の差さない真っ暗な森。──それは、まだここが黎明の世界。もし、彼らの身体が金色に光っていなければ、それぞれの姿を確認するのも覚束ない程だっただろう。 ただ、心なしか、以前よりも命の鼓動のような物が森の中に生まれ始めているようだった。 おそらくは、それは、必然的にこの世界に辿り着いてしまう微生物や小虫たちがここに住み着き始め、何の命もなかった世界に少しずつ命が植えつけられようとし始めているという事だ。 それに気づいたのは、キュアブロッサム──花咲つぼみだけだっただろうか。 エターナルは、続けた。 「……わかってる。俺たち、遂にここに来たんだな」 この台詞を告げた時、どうやら、この外の全ての世界では、彼らの最後の戦いの中継が自動的に始まったらしかった。 そして、この瞬間を以て、艦に最後まで残っていたインキュベーターは、次元の波の中に囚われ、おそらく消滅したのだろう。──勿論、その意識と情報を共有する別の存在が世界にいるので、それほど悲観的に考える事実ではないが、こうして彼らが無事この世界に侵入できた功労者として、インキュベーターの尊い犠牲もあった事は忘れられてはならない。 それは、アースラという戦艦をここまで運んだのは、決して彼らだけの力ではなかったという証明に違いない。元々の乗組員は勿論、死者さえも、別の世界の者たちさえもそれを動かし、彼らを届けた。 彼らに勝ってほしいと願う全ての心の結晶が、彼らをここまで乗せたあの巨大な船だったのだ。 敬礼する間が無いのは惜しむべき事実であった。 「……」 ただ少しだけ、周囲を見回してアースラを探した者もいたし、空を見上げた者もいた。 あの数日、共同生活を経たあのアースラは、もう無い。 その事実には、在りし過去に戻れぬノスタルジーも少し湧いただろう。 「……」 ……とはいえ、結局、アースラよりも彼らにとって郷愁の情が湧いてしまうのは、こちらの戦場だったのも事実だ。 あらゆる悲しみと、怒りと、そして楽しい時間さえもあった場所。 そうであるのは違いない。 ──しかし、大事な出会いの場所でもある。 ここにいる者たちは、お互いにここで出会い、ここで悲しみを共有したのだ。 たとえ、ベリアルの戦いがなければそれぞれがもっと別の──幸せな出会いをしていたのだとしても、今ここにいる自分たちが直面したのは、悲しみの中での細やかな幸せとしての出会いだ。 この感情を持って戦えるのは、自分たちがここで出会ったからに他ならない。 ……ふと、そこにかつてと違う物があるのを誰かが見つけた。 「……ん? なんだ、あの悪趣味な手は。あんなもんあったか?」 そんな事を言ったのは──その「誰か」とは、佐倉杏子の事だった。 ──彼ら八人は同じ場所に固まって転送されていたが、その付近には、腕の形をした奇妙で巨大な建造物が立っていたのだ。 これこそが悪の牙城なのだが、それを「城」と認識できた者は少ない。 杏子の言う通り、誰しもが「巨大な手」と思っただろう。しかし、それが巨大な人体の一部の手と認識した者もおらず、あくまで「手の形を模した巨大な何か」という風に全員が捉えたようだった。 薄気味悪いが、だからこそ、決戦の時であるのがよくわかった。 「気づいてないだけで、前からあったんじゃねえか?」 「あるわけねえだろ! あんなデカい城を見落とすのはこの世でお前だけだ!」 『勿論、あんな物は僕も知らない。この数日で出来たようだ』 仮面ライダーエターナルの言葉は、同じ仮面ライダーのダブル──左翔太郎とフィリップに突っ込まれる。 しかし、こうして軽口を叩いていられるのも今の内であった。 彼らも、決して緊張がないわけではないのだ。だからこそ、わざとこうして場を温めているのかもしれない。 だが、結果的に言えばそれも束の間の話だった。 「──ッ!」 次の瞬間。 一筋の風が吹いた時、まだ温かみを持て余していたはずのその場の空気が、ふと一転する。わけもなく背筋を凍らすほどに冷やかな風が、身体を撫ぜる。 誰もが、喉元に氷柱を飲み込んだような緊張感に苛まれた。 戦慄──。 「……誰だっ!?」 この直後に彼らの前に──一人の男が現れたからである。 闇にも映える真っ白なタキシードの服。 ──ゆっくりとこちらへ歩いて来る。 見覚えがあるようで、やはり、これまでに見た事のない雰囲気の男。 即座にその男の正体を答えられる者はいなかった。 「……遂に来てしまいましたか。……結局、あなたたちは自分の故郷ではなく、お仲間が死んだこの場所で死にたいと──そう願ったと、結論しましょう」 ダブルは、その男の瞳を見た事があった気がした。 いや、誰もが見た事があるのだが、その白いタキシードの男に対して、それが──あの、「加頭順」であるという認識を持てた者は少ない。表情こそ変わらないが、どこか柔和で、歩き方にも奇妙な余裕が感じられるからである。 「……」 元の世界の左翔太郎とフィリップさえも、その判断には少しだけ時間を要したくらいだ。だが、やはり、奇縁があるのか、真っ先に気づいたのは彼らであった。 到底、あのはじまりの広間で見た男と同一とは思えなかった。──人は数日ではここまで印象を変える物なのだろうか。 「まさか、お前。加頭、順か……?」 「ええ。……お久しぶりですね。てっきり、そちらの半分は亡くなったかと思いましたが」 加頭が笑顔で皮肉を言った。そちらの半分、というのはダブルの右側──フィリップの事だろう。 それから、勿論、ヴィヴィオの事も加頭は多少なりとも気にしたのだと思われるが、加頭も同様の死人であるが故、あまり追及するつもりはないようだ。 特に、フィリップに関してはその出自において、死者蘇生に近い事が行われているし、ガドルという見落としも過去にはある。一人や二人の増援は、今更気にならない様だ。 呼ばれた当人の仮面ライダーダブルは、加頭のかつてと違う様子に少し当惑していた。 「……なんか、調子狂うな」 「ふふふ」 「前は、そういう風に笑ったりはしなかったぜ。……まあ、今もあんまり良い笑顔じゃねえがな──」 「……ほう、なるほど。後の為に、その言葉も参考にしておきましょう」 ダブルの反応は予測済というわけだ。これだけの人数を前にしても震えず、余裕綽々と笑っている加頭の顔を見ていると、やはり不気味に思うだろう。ダブルへの勝算があると見ているに違いない。 だが、その場で加頭と敵対している者の──仮面ライダーやプリキュアの全てが、加頭に敗北する未来の予感を全く浮かばせなかった。 「……」 強いて言えば、そう……少し勝利までの過程が厄介になるだろうという不安が掠める程度だ。それもすぐにどこかへ払いのけられた。 少し心に余裕が出来た気がした。 「……加頭。もう一つだけ、すっげー参考になる『良い事』を教えてやるよ。 ──そいつは、フィリップが今ここにいる理由さ」 「ほう。興味深い……」 変わらず余裕な加頭を前に、仮面ライダーダブルが強い語調で啖呵を切った。 「──俺たちはなぁ、お前たちみたいな奴らを倒すまで死なねえんだ……永遠に!」 『そう、僕達はたとえこの身一つになっても……いや、この僕みたいに、“この身がなくなっても”戦い続けている』 「それこそが、お前たちが相手にしている存在だ……!」 『だから──いうなれば、絶望がお前のゴール……っていうところかな?』 ダブルは固く拳を握る。 そんなフィリップの言葉を聞くと、少しだけ加頭は眉を顰めた。 それは、かつて翔太郎が加頭の野望を阻止した時に発した言葉にもよく似ており、それが加頭に悪い記憶を呼び覚まさせたのだろう。 しかし、それでも──加頭は、大きく怒りを膨らませる事はなかった。 「なるほど……かつて聞いた時と同じ……か。──憎たらしい言葉ですね。 しかし──残念ながら、その台詞を聞く事が出来るのも、今日が最後のようです!」 ──UTOPIA!!── その言葉と同時に、加頭が握るユートピアメモリの音声が鳴り響いた。 ユートピアメモリが浮遊し、加頭の装着するガイアドライバーへと吸収される。 重力が無いと言うよりか、むしろメモリが自力でそう動いたかのようだった。 轟音。ブラックホールを前にしたような不安感。……それらが駆け巡る。 ──BELLIAL!!── ──DARK EXTREAM!!── 「!?」 そして、次の瞬間──暗黒の嵐が吹き荒れた! 強風が彼らを襲う。土に零れていた大量の葉を吹きあがらせ、地面の草木を全て揺らす。 暗闇のオーラが雲のように視界を覆う。天と地がひっくり返るような感覚がその場にいる者たちに降りかかる。 しばらくすると、空に飛び散った葉の数々は、次の瞬間に、まるで鉛の固まりのように一斉に落下する……。 「くっ……!」 それぞれが、自らの頭を覆うように顔の前で両腕を交差させた。微かに視界に残した光景には、確かに変身していくユートピアの姿がある。 そこから、ダークザギの発した闇にも似た黒いオーラが現れ、直後一斉に取り払われると、そこに佇んでいたのは、ダブルもかつてまで見た事のない相手──。 そう──この「ユートピアドーパント」の「ダークエクストリーム」だ。 「……っ!」 ゴールドエクストリームと化したダブルに対して、ダークエクストリームと化したユートピア。それはまるで、かつての戦いの再現でありながら、いずれもかつてのそれぞれとは大きくベクトルの異なる成長を遂げた結果生まれたカードだった。 そして、彼らが背負うものもまた、かつてとは変わっていた。 ダブルは、「崩れた理想郷」や「一人きりの理想郷」ではなく、無限の供給と再生を続ける「完全な理想郷」となったユートピアの姿を見て、固唾を飲む。 どうやら、加頭も秘策と、想いを背負った敵であるらしい。 しかし──倒す。何があっても、必ず。 「それでは、皆さん。……折角ですから、また、殺し合いを始めましょう。 ──そう、この私と……この場所で!」 加頭は仰々しくそう宣言した。 このバトルロワイアルの始まりを告げた言葉にも似たその一言に、誰もがぴくりと反応した事だろう。 そう、この男の呼び声であの悪夢は始まった。 そして、この男を倒してから始まる本当の最終決戦で──全ては終わる。 「──違います! これから始まるのは、殺し合いじゃなくて……命と命の、助け合いです!」 キュアブロッサムがユートピアに向けてそう告げた。 ガイアセイバーズ。 それが望む未来を提示され、ユートピアは微かに狼狽えた。 敵方にこちらを恐れている者はなしと見て、ユートピアの脳裏に掠められたのは、僅かな敗北のビジョンである。──とはいえ、それは勝負に際する者が誰も一度は掠める物。 ユートピアは、園咲冴子の生前の姿を、そして、ここにあるこの力で戦えば、彼らなど相手ではないという事を思い出して、そんな不安を一瞬で取り払う。 「……フン。──何を言おうと勝手だが、どうせ貴様らは、いなくなるッ!」 敬語を捨て、猥雑で乱暴な「殺し合い」を始めるユートピアは、その手に構えられた“理想郷の杖”で、閃光の一撃を放った。 「──!!」 光速のレーザービームが八つに分岐して、各参加者の身体を狙い加速する──。 瞬きする間もなく自らを狙ってくる数百度の熱を、各々は正確に捉え、八人八色の対応を果たした。 ビームを防ぐ者、避ける者、跳ね返す者、その体で難なく防ぐ者。 その全てが一瞬で行われる。 ユートピアとて威嚇のつもりであったが、全てが殆ど反射的に回避された事を見て、やはり予想以上の相手になった事を実感していた。 ◆ 「──せやぁッッ!」 ──直後に聞こえたのは、一人の雄叫びだった。 攻撃の瞬間に、圧倒的なスピードで姿を眩ました高町ヴィヴィオである。 聖王の姿となった彼女は、他の数名と同様、全身を金色に輝かせ、真っ直ぐなパンチをユートピアに叩きつけようと迫ってくる。 何度も、友と磨き上げた拳。 歪みから救われた少女の、正拳。 それがユートピアの全てを打ち砕くべく、アクセルを踏み込んだようなスピードで邁進していく。 彼女の一歩は、空間をも飲み込んだような一歩であった。 「──アクセルスマッシュ!!」 「フンッ!」 ユートピアは、叩きつけられたパンチをクロスした両手でガードした。 そのまま、ヴィヴィオの手を取り、力の流れを寄せ──彼女の身体の天地をひっくり返す。 何が起きたのか──。 「くっ……」 ヴィヴィオも、気づけば空を見る事になった。合気道のような技で投げられたのだと察知するまでにもそう時間はかからない。 加頭固有の能力を使えば、ヴィヴィオを触れもせずにひっくり返す事が可能であろう。 しかし、彼はベリアルウィルスの効果で元の素養を超える身体能力や、敵を見る術を得ていた。一切の能力を使わず、元の身体のポテンシャルだけでヴィヴィオに空を見せたのだ。 「……っ! 痛~っ!」 「この能力だけが私のやり方ではない──。 格闘による真っ向勝負も一つの戦法だ……! 得意の接近戦に持ち込む事など、愚かな!」 「……そういう事なら、むしろ逆に、受けて立ちます! ……はぁっ!!」 ヴィヴィオの拳は、何発もの攻撃を、凄まじい速さで、連続してユートピアに打ち込んだ。 その一つ一つが、強い魔術を込めた一撃だ。──いうなれば、それこそ、闇の欠片が供給している死者たちの魂である。 黄金の輝きを持つ限り、ヴィヴィオたちにはこれまで以上の、圧倒的な力が味方する事になるだろう。 ユートピアも同条件には違いないのだが、その想いの強さでは、ヴィヴィオが勝ると言える──。 「はぁぁッ──!!」 「ふんッ」 それを何度も、ユートピアの胸に、腹に、顔面に──叩きつけるつもりで打ち込んだ。だが、その全てがユートピアの掌の上で跳ねていく。 ヴィヴィオのパンチのスピードに追い付き、ほぼ全てを迅速に片手で防御しているのだ。 結果、ヴィヴィオのパンチは一度もユートピアの身体に当たる事がない。 「──無駄だ!」 ユートピアの掌から、ヴィヴィオに向けて闇の波動が放たれる。 それは、彼女の身体を拳から伝って全身吹き飛ばし、真後ろの地面に尻をつかせた。 ヴィヴィオにとってもそれは少しの痛手であったが、後退の意思が過るほどではない。 いや、それどころか、この程度の負傷は誰の日常でもよくあるレベルだ。アインハルトと戦った時だってそうだ。何度も行った模擬戦の中で、何度空を見て、何度膝をつき、何度腰を抜かした事か。 それがヴィヴィオの常だった。それがヴィヴィオの戦いだった。 「──」 わかっている。──それでも、今はいつもと違うのだと。 ヴィヴィオの背中には、今、自分を守ってくれている人たちの想いがある。──それを全身で感じていた。この重みは、決して只の荷物にはならない。 ヴィヴィオに必ず力を貸してくれる。 「くっ……!」 ヴィヴィオは、すぐに強く地面を蹴って、立ち上がると、再びファイティングポーズを取った。 ──こうなる限り試合続行だ。何度だってポーズを取る。 しかし、実のところ、彼女の顔色というのはあまり良くない。勿論、敗北を予感しているわけではない。 ──ただ、何か薄気味悪い予感がしたのである。 (まさか……この人……!) 先ほど、手ごたえのなさと同時に──ヴィヴィオはもう一つ、ある違和感をユートピアに対して覚えたのである。 その理由も薄々察する事になった。 「……!」 クリスも気づいているらしく、クリスの焦燥する感情がヴィヴィオの全身に伝わる。 いや、クリスはもっとはっきりと、今の闇の波動がヴィヴィオに放たれるまでに正体を明らかに察知したのだろう。 彼には、まるで悪魔が取り憑いているように見えた。 「──」 そんな中、ヴィヴィオとユートピアの間に一人の男が立つ。 「──ヴィヴィオちゃん、手を貸すぜ!」 超光戦士シャンゼリオン──涼村暁である。 彼もまた、超光剣シャイニングブレードを右手に構え、敵の身体をその刃の餌食にしようと走りだそうとしているかのようだった。 助っ人というには、少々頼りないが、ユートピア相手には二人以上でかかるのが妥当と見たのだろう。 「──待って!」 「えっ」 と、そんな彼が手を貸そうとするのを、ヴィヴィオは今までにない剣幕で叱りつけるように怒鳴った。完全に戦闘態勢に入っていたシャンゼリオンも、その言葉に流石に足を止めた。不安気にシャンゼリオンがヴィヴィオの方を向いた。 ヴィヴィオはすぐさま頭を冷やして、少し丁寧な口調に直して、シャンゼリオンに言った。 「待ってください……!」 「え? なんでよ」 「あの人……実力は今の私たち一人一人と同じレベルですけど……もしかすると、何か切り札を持っているかもしれません!」 その言葉は、シャンゼリオンとヴィヴィオの数歩後ろにいた他の者たちにも聞こえただろう。 並んだ者たちも一斉に足を止めた。──今、戦ったヴィヴィオにしかわからない「予感」。 ユートピアをちらりと見るが、どちらの側もまだ攻撃を仕掛ける様子はない。彼としては、早々に“気づかれた”事も面白いのだろう……。 ヴィヴィオが続けた。 「……ううん。もっと、わかりやすく言うと──」 ヴィヴィオが“気づいた”──という事を感じ取り、ユートピアもまた、異形のまま、ニヤリと微笑んだ。 そう。ユートピアがベリアルウィルスによって得た、新しい能力たち。 その一つが今、戦闘時を目途に、開眼しているのだ。 確かにその切り札はまだ使用していないはずだが、しかし、ヴィヴィオたち魔導師には充分に感じ取れるものになった。 どれだけ消そうとしても匂う、その切り札の香り──。 「──」 ヴィヴィオが、口を開いた。 「あの人は今、私たちの世界の住人が持つはずの、『魔術』を持っています……!」 シャンゼリオンたちは、一斉にぎょっとした。 とりわけ、その中でも強い驚きを示しているのは、仮面ライダーダブルこと左翔太郎とフィリップである。加頭の正体はクオークスであり、NEVERであり、ドーパントであり……また、過去には仮面ライダーに変身したかもしれない。 しかし、彼は、「魔術」などという物を使った過去はなかったし、その素養は決して簡単に得られるものではなかった。そもそもが、その力の存在しない翔太郎たちの世界の人間がそれを短期間で会得できる可能性は極めて低い。 「……気づいたか」 ユートピアは淡々と言う。 「──教えてやろう。私は、参加者や私の仲間の持っていた力の残粒子を『コア』として凝縮し、ベリアルウィルスと共に注ぎ込まれた……。 つまり、ここに居た者たちの全ての技を使う事が出来るのだ……!!」 彼のこれまでの自信には、明確な根拠が伴っていたのである。 ユートピアドーパントがエクストリームと化した時、同時に備わった新たなる力。 それは──この殺し合いで現れた怪物たちと同様の力であった。 魔術に限らず、あらゆる技を運用する事ができる。 「そう──」 かつて、クオークス、NEVER、ドーパント、仮面ライダーの四つの力を全て得ていたように、加頭の身体には幾つかの悪の勢力と同様の力を発動する「コア」が埋め込まれている。 JUDOの力のコア。アマダムの力のコア。ラダムの力のコア。花の力のコア。魔術の力のコア。魔界の力のコア。……そんな無数の核が、理想郷の一部として体中にちりばめられたのだ。 そして、今、気づかれたと知れた時、ユートピアは、狼狽える目の前の敵に向けて、「実演」を行った。 「──たとえば、こんな風に」 右手を翳すユートピア。 周囲の大気が渦を巻き、そんなユートピアの右手に収束していく。右手の中に巨大な黒い塊が具現化され、その中に、今込めたエネルギーが全て包み込まれた。 ぐっと握りしめ、ユートピアは顔を少し上げた。 それが次の瞬間の彼の一声と共に解き放たれる。 「──ブラスターボルテッカ!」 叫びと共に、ユートピアの右手から発されたのは、テッカマンたちが使用した必殺の技──ボルテッカの強化版であった。 一つのエリアを焼き尽くす程の膨大なエネルギーを持つ ブラスターボルテッカが、今、ヴィヴィオたちの前に放たれる。 「何っ──!?」 轟音と共に──。 「くっ……!」 しかし、直前にレイジングハートが間一髪バリアを貼り、彼らの周囲だけは守られる。 それでもやはり、ユートピアの一撃は相当な威力で、レイジングハートへの負担は膨大だったに違いない。こんな多段的な攻撃を受けるのは初の事である。 「──っ!?」 爆風。 周囲の草木が一瞬で灰になり、それを見たキュアブロッサムが眉を顰めた。 仮にバリアを張られなければ、自分たちも無事では済まなかったに違いない。 「くっ……何て力だ……!」 仮面ライダーエターナルも、自身の身体を守っていたローブを下ろして、憮然とした表情でそれを見ていた。 ユートピアは、手をゆっくりと下ろし、続ける。 「──今のような技も、何のフィードバックもなく放つ事が出来るわけだ」 フィリップがそれを見て、息を飲んで言った。 『……つまり、あらゆる地球の記憶を全身に埋め込んでいるという事なんだ! 奴が使っているのは、正真正銘の……エクストリーム……!!』 「その通り!」 と、ユートピアの口調はどこか誇らし気であった。 胸を張り、理想郷の杖を右手に持ち替えた。それを目の前に並ぶ者たちへと向ける。 彼の持つのは、理想郷を修復する力だ。崩れ去る運命さえも、それを一瞬で巻き戻してしまう。即ち、自らの負うダメージもまた、一瞬で回復してしまうのだ。 ただでさえ無尽蔵なエネルギーを持つNEVERが、「攻撃を浴びせながら体力を回復する」という絶対の矛と盾を同時に得たのである。 ブラスターボルテッカに匹敵するエネルギーを放ったとしても、肉体が崩壊する前に肉体が再生してしまう──。 それが、彼の理想郷の力であった。 「いかに束になってかかろうとも、私に勝つ確率は、ゼロだ……!」 目の当りにした者たちは、呆然とした。 敵の強大さに恐れおののいたわけではない。 言うならば、ただ意表を突かれた事と、加えて、それがここで出会った者の技であったが故の忌避の念かもしれない。──しかし、甘く見てはならない相手であるのは間違いなかった。 「だが今のはほんの序の口……。 今度は本気で行くぞ……────ライトニングノア!」 ユートピアの次の掛け声は、明確に、目の前の敵たちを全て葬る為に口にされた物であった。 そう、それは、「埋葬」の為の一言だった。 ライトニングノアは、ウルトラマンノアがダークザギを宇宙で葬る際に使用したあの技である──あれさえも記録されているというのだろうか。 あれは間違いなく、この場で使われた最も強力な技に違いない。 ──瞬間。 もはや、回避の術さえもなく、ガイアセイバーズと呼ばれた戦士たちの姿が、ユートピアドーパントの放った光に飲み込まれていく。 純粋なエネルギーの塊が、敵の数に分裂し、それぞれ彼らの身体に向けて放たれた。 ライトニングノアに等しい攻撃が、全員の身体に頭上から突き刺すように直撃する。 「うわあああああッッ!!!!」 「ぐあっ……!!!!」 「きゃあっ!!!!」 ヒーローたちは、遠く、炎の底に沈められた。 彼らに向けて、一斉放射された幾つものライトニングノアの光。 回避運動に近い行為を出来たのは、ローブを持つ仮面ライダーエターナルくらいである。彼は、ローブに包める一人分の面積を、近くにいたキュアブロッサムの身体を包んで回避させる。 「くっ……!」 それと同時に──エターナルは、頭の中で実感する事が出来た。 敵の脅威を。 あのウルトラマンノアと同じ灼熱の一撃を、掌ひとつで再現できるという強敵の、恐ろしさを……。 よもや、それだけのエネルギーを無尽蔵に持ち合わせているなど、先ほどまではほぼ予想していなかった事態だ。 「──隠れても無駄だ……『トライアル』!」 そして、それは、更に、トリッキーな技さえも使えるという事であった。 ただの力技の砲撃や光線だけではなく──そのエネルギーは時空や光速、人間の近くさえも超越していく。 ウルトラマンノアやダークザギの力と同じように、ここにいた全ての仮面ライダーやドーパントたちの力も使えるのである。 助かった仮面ライダーエターナルに距離を縮めたのは、あの仮面ライダーアクセルトライアルの力である。──いや、もっといえば、ダークアクセルと呼ばれたあの石堀光彦の力を融合しているかもしれない。 「何っ……!?」 エターナルにも、ローブの効果によってメモリを無効化する事で視認出来たが──それは一瞬であった。 即座に、ローブの効果と“ベリアリウィルス”の効果が打消し合い、トライアルのスピードがエターナルに視認できなくなった。 「くそッ……!!」 目の前で消えたユートピアの姿に驚愕するエターナル。 あの超銀河王の効果さえ打ち消したローブの力が、無効化された──。 「どこに──」 どこだ……? 敵はどこにいる……? 俺を狙っているのだろう……? 「──ッ!」 疾走の一秒。 「……っ!!!!!!!!!!!!」 つぼみの声にならない悲鳴が聞こえたのは、エターナルの腕の中だった。 真下を見ると、エターナルローブの中に、もう一人分の影がある。 ──まさか。 「まさかっ……!!」 ユートピアが一瞬で距離を縮め、潜んだのは、エターナルのローブの、“内側”だったのである。 狙いは、エターナルとブロッサムだった。──それに気づいたのは、ユートピアが攻撃を始めるよりも、些か遅かった。 「なっ──!!」 仮面ライダーエターナル自身と、キュアブロッサムが潜んでいたローブの“内側”に、目くるめく“理想郷の杖”の炎の鉄槌が下される。 最早、炎のエネルギーが充填された今、回避の術はない。 このエターナル最大の防御壁こそが、同時に、絶対的に逃げ場のない檻となったのである──。 「──死ね!」 ──爆発。 エターナルローブの内側で、膨大なエネルギーが貯蓄され、「トライアル」の効果の終わりとともに炸裂する──。 装甲さえも黒く焦がす一撃。一つの部屋に閉じ込められたまま、殆どゼロ距離で核弾頭が光る事に等しい一撃であった。 それを受ければ、いかに変身した彼らでさえ、容易く耐えうる事が出来まい。 「──ぐあああああああああああああああ……ッッッ!!!!!!」 「──きゃああああああああああああああ……ッッッ!!!!!!」 これまでの戦いで、二人ともまだ出した事のない、巨大なダメージの悲鳴。 エターナルローブが衝撃のあまり、弾け飛び、空へと泳いでいく。 そこから吹き飛ばされたのは、変身が解けかねないほどの負傷をし、それぞればらばらに地面と激突する事になったエターナルとブロッサムである。 それはさながら、抱え込んだ花火が炸裂したかのような攻撃だっただろう。 ──迂闊であった。 「良牙……!!」 「つぼみ……!!」 ライトニングノアの一撃に倒れていた仲間たちが、手を伸ばしながら、彼ら二人の名を呼ぶ。 辛うじて、良牙もつぼみも生きているようだが、一瞬、彼らの命を本気で心配した程であった。 それによって、「黄金」の力が思った以上であるのを実感する──勿論、この力がなければ死んでいただろう──が、それでも、二人が極大なダメージを受けもだえ苦しんでいるのは事実に違いない。 死者たちが齎した思念はそれだけ強いという事だった。 誰より実感しているのは──魔戒騎士たる涼邑零だっただろう。 「──」 そして──敵が今、エターナルローブの力さえも打ち消す、自らに等しい力を持っているという事も、彼らはすぐに理解できた。 安心できる暇などなかった。 「……見たか」 ──見れば、爆心地で、ユートピアは悠々と立ち構えていた。 理想郷の杖を後ろ手に構えて、背を曲げる事なく立っているユートピアには、ダメージを受けた様子もまるでない。 いや、それも、彼は──瞬時に回復する事が出来るのだ。 自爆技でさえ彼にとってはほとんど意味のない話である。 それ故に、ユートピアは確かに、最強の「魔王」としてその場に君臨していた。 「この体にコアがある限り、お前たちは私には勝てない……! 諦めるんだな……!」 絶対的な自信とともに、ユートピアが、宣言する。 まるで、自分だけにスポットライトが当たっているつもりのように、高らかに。 喝采が返ってくるはずもない。彼が望む喝采は、ただ一人からの物だ。有象無象の拍手など何の意味も成さない。 「……くっ!」 しかし、挑発的にそう言われた時に、先ほどまで地面に伏していた誰もが、立ち上がろうとした。 今しがた、攻撃を受けたばかりのエターナルとブロッサムもだ。 (諦めるわけがない……!) 諦めろ──と。 その一言を聞いた時、彼らの中で、目の前の敵への対処法が生まれたのだ。 そう、これまで自分たちがどうやって勝ち抜いてきたのか──その理由を反芻する。 『────諦めるな!』 ──どんな相手を前にしても、誰も諦観などしなかった事だ。 「……だったら……要するにコアをぶちのめせばいいんだろ……!?」 「攻略法としては、簡単だな……! さっさと倒しちまおう……!!」 ダブルとエターナルが、歯を食いしばりながら告げた。 それからは、彼らのみならず、誰もそれから、ユートピアの脅威を前にも唾一つ飲み込む様子がなかった。 全員が立ち上がっていた。 ユートピアの能力は、本来ならば絶対的に相手にしたくないような能力に違いない。力の強さもわかっている。彼に攻撃された時の痛みも、反射的にユートピアを避けたくなる程に染みているはずだ。 確かに、一人一人の力で勝てる相手ではないかもしれない……。 しかしながら、こう言われた時、彼らにはそれと同等の力を得たという確証があったのである。──それは、理屈の上にはない物だった。 彼らの力を受けたユートピアと違い、自分たちは彼らの想いを受け継いでいる。 ──そうだ。 彼らにとっての脅威はベリアルだ。 この虚栄に満ちた門番ではないのだ。 「──っ!!」 ……誰より先に、構えて前に出たのは、先ほどと同じく、高町ヴィヴィオという一人の格闘少女だった。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(1)Next 変身─ファイナルミッション─(3) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(1)Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(3) Back 変身─ファイナルミッション─(1) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(3)
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変身─ファイナルミッション─(1) ◆gry038wOvE 「ねえ、おばあちゃん……昔の話、教えてくれますか?」 ◆ ──────────また、誰かが突然ドアを叩く。 しかし、その低調なノックの音に応じる者はその一室の中にはいなかった。 このドアは、何年、何十年も前のこの風都において、横行するガイアメモリ犯罪に巻き込まれた人間が警察を頼れずに最後に縋る駆け込み寺となっていた探偵事務所のドアだ。今日まで何人の悩める人間がこのドアを潜った事だろう。 とはいえ、既にそれから幾許かの歳月が過ぎ去っている。今ではその手口の犯罪もすっかりなくなり、この事務所は、より多種多様な事件の依頼を受けるようになった。 それこそ、そこらの萎びた探偵事務所と全く変わらない。 浮気調査、人探し、犬探し、猫探し、亀探し……。 この日も、また、本当にそんな、ちょっとした事情を持つ者が来たようだった。 依頼人は、しばらくドアの前に立ってノックを繰り返し、返事を待った。 しかし、返事はない。 やはり、どうやら事務所の一室には誰もいないらしいと気づき、やがて諦めて、背中を向ける。 その人の後ろ姿は、ドアからゆっくりと遠ざかっていった……。 もしかすれば、この帰路でばったりとこの事務所の主に会う事を期待しているかもしれないし、その依頼を果たせる他の宛てを探しに行くのかもしれない。 その人は再び来るかもしれないし、既に常連であるかもしれないし、二度とこない一見かもしれない。それはわからない。 とにかく、まるで、その部屋そのものがその人間に見捨てられたかのように、一人の人間に置き去られた。 ──この、がらんと空いている部屋。 あの「鳴海探偵事務所」のロビー。 誰もこのドアを開けてはくれなかった。 ……事務所の内側は、すっかり無人であった。 奥に進めば、古い探偵小説や、寂しいほど整ったデスクがあるのだが、これらも蜘蛛たちが巣を張る為の優良物件となりつつあるようだ。 クラシックな品質で出来上がった家具や壁のレイアウトも、いくつもの帽子のかけられた壁も、少し前まではそこに誰かがいたかのような気品を漂わせるが、この時には誰もいなかった……。 何日か、あるいは、何週間か。──それがここから誰かがいなくなってから経過した時間はそれくらいだ。ただ、依頼人が来るところを見ると、何年という単位ではないだろう。 人の匂いのしない渇いた空気がその場に流れる。床板の匂いだろうか。少しだけ黴臭く、それでもどこか懐かしい物が鼻孔を擽る。下町の匂い。 隅のデスクには、ある意味では過去の重大事件の調査報告書とも取れる一冊の本と、それに関する記録(メモリー)と呼ぶべき数葉の写真があった。 ……これは、もう既に人々が忘れ去るほどに遠い過去のものだ。誰がここにこの本と写真の束を置いていたのだろう。 だが、それだけが、ここに誰か人の通った形跡を示す手がかりだった。 写真はもう、すっかり色褪せて、そこに映る人々の笑い顔さえも、どこか古めかしく見えるほどだった。そもそも、こうして写真を紙媒体に印刷する文化自体が、この時代からすると古めかしい物であるかもしれない。黴の臭いがする。 中には、幼い少女も映っているが、この人ももう、本当の大人だろう。 この、帽子を被っている気の良さそうな男は、生きていれば、もう老人かもしれないし、もしかしたらとうの昔に亡くなっているかもしれない。 ──帽子? これは、よく見ると壁に飾ってあるのと同じブランドの帽子だ。 ──年代ものだ。 時代は、大きく変わっていった。 街並みも変わり、この事務所で働く人々も変わっていく。 仮面ライダーとドーパントが戦う時代はとうに終わったくらいだ。 ……だが、それでも。この街に吹く風だけは変わらない。 いつまでも懐かしく、善と悪とが混ざり合い、そして、何より、良い風だった。 きっと、かつてこの街で暮らした人々が愛した物が、この時代の人たちにも吹き続けているのだろう。 ──窓の外の隙間風が、ぱらぱらと本のページをめくり、写真を床に散らばらせた。 この本のページを巻き戻す者はいない。 写真を拾う者は誰もいない。 そこに映っている人たちも、もうおそらく……。 世界の歴史の一つの記録を記した、その本の題名が大きく開かれる。 【変身ロワイアル】 ──広大なる宇宙。 本来、この限りなく広い宇宙というのは、それこそ数えきれないほどの人々が寄り添い合って暮らす場所であり、全ての命の故郷であるはずだった。少なくとも、ゼロが旅した幾つもの宇宙は全てがそうだった。だからこそ彼は宇宙を愛したのだ。 しかし、この青い戦士──ウルトラマンゼロが今、辿り着いた宇宙は、そんな宇宙たちとは全く違うと一目でわかった。 今、目に見えている星は全て模造品で、そこに芽吹く温かい生命までは再現されていない。 緑の息吹や文明のある惑星は恐ろしいほどに少なく、隕石の欠片のような星ばかりが無数に浮いている。そんな、おそろしいほどに音と空気のない深淵だった。 どこを何度見渡しても、やはり、生命の反応は……ない。強いてそこにある物を挙げるならば、「永遠の孤独」とでも呼ぶべき虚無感だけだ。 まるでブラックホールにでも飲み込まれたかのように見渡す限りの全てが無音で、それこそ、ゼロには、直感的にその空気に恐怖感を覚えざるを得ないほどの場所である。 『どうしたの? ゼロ』 「……ああ、いや、なんでもない」 ゼロは自分と同化している少女──蒼乃美希の言葉に、思わずそう空の返事をしてしまった。 辛うじて、ゼロが平静を保って居られるのは、いわばこの「美希」のお陰でもある。もし、彼女がいなければ、ゼロはすぐにでもその宇宙の齎す永遠の孤独に敏感に反応し、正気を失ったかもしれない。 自分と共にそこに誰かがいてくれる事が、ゼロの心を安堵させた。この不気味な宇宙の孤独からゼロを守れるのは彼女の存在だけだ。 ふと思う。 孤門は──この感覚を数日、その身で味わっているのだろうか。 ベリアルは──こんな感覚に身を震わせながら、全世界を手玉に取って満足なのだろうか。 一刻も早く、この宇宙の中でただ一人彷徨う「ウルトラマンノア」のスパークドールズを探さなければならないし、彼の時間を取り戻し、ベリアルも倒さなければならない。 しかし、やはり、この視界に広がる無限を前に、ゼロですら一瞬心が挫けそうになる気がした。 これから行う作業は、言ってみるなら──地球中から、一粒の塩を探し出すよりも困難な事であるという実感が湧いてきたのだ。 (まずいな……この世界に来てから、俺の力も弱まっちまった……) この世界に飛び込むのが初めてだったゼロは、更なる問題として、このエネルギーの枯渇も挙げられた。体に何トンかの鉛の分銅でも装着されたかのようにゼロの身体が重くなり、これまでのようなパワーも発揮できない状態が続いている。 この分だと、モードチェンジも出来ないどころか、先ほどまでのようにノアイージスを発現して別世界を渡る事さえできない。 たとえば、今すぐにゼロの力で引き返す事などは絶対に不可能な状態である。 (帰る方法は後で考えるか……それより──) もとより、ゼロに後退の意志はない。勿論、元の世界に帰らなければならないのも一つだが、それに関しては比較的楽観的に考えている部分もあった。この世界にいれば耐性が出来るだろうし、それならば地球時間で一週間ほどでも充分だ。 それはこれまでの美希たちの事を考えれば自ずとわかる事で、ベリアルを倒した後ならば一週間ここにいるというのも一つの手段である。 ……だが、問題はその事ではない。 (──これじゃあ、ベリアルと戦う力が無さすぎるぜ……っ!) そう、パワーの低下による、戦闘力への影響だ。 ベリアルの実力は、元々ゼロと殆ど互角だと言っていい。 どちらかが強い力を得てもう一方を圧倒し、そうなれば今度は負けた方が強くなりもう一方を倒す……という繰り返しが、これまでのゼロとベリアルとの間に生じていた力関係だった。 いわば、それが二人の終生のライバルたる因縁を作り上げていたのだ。 その能力がほとんどリセットされたこの世界では、圧倒的にベリアルの方に分がある。 まず、一対一の決闘でゼロがベリアルを相手に戦うのは不可能と言っていいだろう。 いかにして対策すべきか考え、宇宙空間の一点にとどまっていた時、美希の声がゼロの脳裏に反響した。 『──なんでもないのね。じゃあ、早く孤門さんを探して、ベリアルを倒しましょう!』 「お、おう……!」 ふと、美希の言葉が聞こえたので、ゼロもベリアル以外の事に意識を向ける事ができた。……そう、今は、彼女がここにいるのだ。 蒼乃美希。……あの殺し合いの生還者が。 まあ、確かに──今の孤門は、かつてゼロに力を与えたウルトラマンノアと同化しているのだから、彼がいれば現在の形勢は大きく逆転する事になる。しかし、そのノアを探し出すのにも、これだけ広い宇宙が広がっているようでは心が折れそうなのも事実だ。 美希もそれは、ここに来た瞬間に察しただろう。地平線すらもない無限の黒には、余程目が悪くない限りは恐怖を覚えるに違いない。──ましてや、彼女のように宇宙に行く機会の少ない地球人の少女となれば尚更だ。 だが、そんな美希が、ゼロに向けて──あるいは、これからの旅路を遠く見据えている自分自身に対して、ある意識を飛ばした。 『──諦めるな! ──』 美希の胸にあるのは、その言葉だけだった。 たとえ挫けそうになった時も、それを食い止めるのは、その単純な激励である。その言葉が持つ意味を噛みしめる。 長い講釈や説教と違い、言葉そのものが奇妙な力を発するのだった。 強い語調でもなく、かといってそっと支える風でもなく、その声がそもそも他人から向けられているような気がしない──そんな一言。 「──」 そして、それは、ゼロにとっても、最も好きな地球人の台詞だった。 孤門が何度となく使っていた口癖のような呪文。そして、ゼロもかつて、ある宇宙で──今思えば孤門に少し似た面影を持った──少年に言われ、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンコスモスと共に胸に刻んだはずの言葉である。 確かに、こんな若い地球人の少女にこれを言われては、ゼロも立つ瀬がない。 「よしっ」 本来の彼らしい調子を、本格的に取り戻すには充分だった。こうして、無謀に近い状況に立たせられてこそ燃えるのが本当の自分ではないか、と。 ゼロは、その一言で奮い立つ。 「じゃあ、いくぜ、美希!」 『うん!』 ゼロは、スピードを上げて宇宙の果てに飛び立っていった。 願わくは、追い風が彼らに届くように……。 彼が飛び去った後には、青い残像が光っていた。 ◆ ──別の宇宙。 時空移動船アースラの壁は、だんだんと消滅を始め、ガイアセイバーズの視界に広大なブラックホールの姿を映していた。 目の前にある深い闇が、これから自分たちの身体と意思とを飲み込む事になる「宇宙」だという。 アースラは、無力にも、その直前で消えかかろうともしていた。──だが、これが、正しい歴史におけるアースラのあるべき姿なのだ。とうに消えているはずものが、奇跡的に駆動し、そして志半ばに消えかかっている。 しかし、最後の任務を終えたアースラを、今、ベリアルの野望が生み出した死者の力で再生し、今、無に帰る為に最後の力を振り絞ろうとしている姿でもあるのだ。 もしかしたら、それだけでは足りないかもしれない。 あとほんの少し、風が吹けば──この艦を動かしてくれた者の想いも、この艦を守ってくれた死者たちの想いも、この艦の為に命を亡くした者の想いも、全てが無にならなくなる。 インキュベーターの言った通りに、「出動」ができる。 きっと、風は、──届く。 ──そう、あと、もう少しで。 あの変身ロワイアルの世界へ──。 (届け……届け……!!) 彼らは、祈った。 人が祈れば風が吹くわけでもないが、かつて、左翔太郎はそんな経験をした事がある。人々の祈りは時として黄金の風を巻き起こす事もある。 せめてこの先にある世界に自分たちを届けてほしいと。 (届け……届け!!) そう思いながら── 八人は、ただ祈った。 彼らと同化している魂や、共に戦ったデバイスたちも祈り続けた。 このままでは、数々の人々が、数々の死者が、美国織莉子が、吉良沢優が、インキュベーターが、動かしてくれたこの船が沈んでしまう。 運命は、彼らだけの力では不足だというのか。 このまま辿り着かなければ、その全てが無駄になり、同時に、全てが終わる。 ここにいる者たちが最期を迎えた時、遂に世界の希望は潰えてしまう──。 (──届け!!!!!!) ──そして、その時である。 『──』 『──!』 『──!!』 彼らの耳に、幾つもの────「声」が聞こえた。 この時空の狭間には、無数の世界や宇宙──あるいは時空に繋がる扉が存在している。 それらの扉から、無数の声と、そして力が一陣の黄金の風となり、彼らのもとへと寄り集まっていったのである。 彼らに力を貸す意図もなく──ただ、混ざり合って風となって。 『──蒸着!』 なにものか、の声。 『赤射!』 『ムーン・プリズムパワー・メイク・アーーーップ!!』 ……それは、無数の時空に存在する彼ら以外の変身者の声に違いなかった。 遠き日、その変身者たちの姿を見守った子供たちならば、その声を聞き分け、それが誰の言葉であるかも、きっと思い出す事も出来るだろう。 『焼結!』 『デュアル・オーロラ・ウェーーーブ!!』 その変身者たちが発した魔法、科学、超能力など……あらゆる形で発現された変身エネルギーの塊。ベリアルさえも利用の方法を模索し、首輪という媒体を使わなければ得る事が出来なかった膨大な力たち──。 それが、彼らの船を包み、巨大な追い風へと変わっていったのである。 「!?」 ──この戦いの為に利用された、「変身エネルギー」たちである。 「これは……」 それは時に正義の力となり、時に悪の力となる。 それを使うのは使い手次第。 ガイアメモリが仮面ライダーにも、犯罪者にも使われたように。 光の巨人を模したウルティノイドがダークザギとなったように。 改造人間やテッカマンとなった者が時に本能に従順になり、時に理性で打ち勝ったように。 同じ遺伝子から生まれた少女が光と闇に分かたれたように。──そして、それがある時入れ替わったように。 使い手の心は、力の形さえも捻じ曲げる。 善にも悪にも。光にも闇にも。 ────そして、その力には決して罪はない。 『重甲!』『邪甲!』 『怒る!』 『風よ、光よ、忍法獅子変化!』『ゴースンタイガー!』 『チェインジ!スイッチオン!ワン、ツー、スリー!』 『大・変・身!』『アポロチェンジ!』 『ガイアーーー!』『アグルーーー!』 『『『『『クロスチェンジャー!』』』』』 『『『『『トッキュウチェンジ!』』』』』 『『『『『シュリケン変化!』』』』』 『瞬着!』 『凱気装!』 『ハニーフラッシュ!』 『ピピルマピピルマプリリンパ、パパレポパパレホドリミンパ!』 『パンプルピンプルパムポップン!』 変身者たちの風の中には、時に冷徹な悪の戦士の声や、戦いを行わないただの魔法少女の声までも混じった。そんな混沌の理由を察する事は誰にも出来なかった。 あらゆる時空から吹き荒れた「変身」の力には、意思という物はない。 だが、強いて言うならば、変身者たちの意識のほとんどがベリアルを倒す方に傾き、善悪問わず──あの外道衆たちさえも含め──彼らに味方しようとしている想いが、こんな奇跡を起こしているのかもしれない。 誰もが他者による支配を望まない。 故に、それらは一斉に彼らに向けられて力を発していたのだ。 『まさか……』 その果てにあるのがどんな目的であろうと、それは同じ「変身エネルギー」には違わず、そして、意思の伴わない力が偶然船に向けて放たれただけである。 アースラに乗っていた者たちは、全員、目を丸くした。 「何だよ、これ……」 『絶えず吹き荒れる、善と悪の風だ……!』 そう……かつて、翔太郎たちに力を貸した祈りの風は、決して正しい者たちだけが齎した物ではないのだ。 はした金の為に争い合った者も、園咲家も、風都の仲間も……あらゆる人間の想いが寄り添い合う場所が「街」であり、「風」なのである。 善と悪──人間が持つ二つの性質が混ざり合い、だからこそ巨大な風になりえた物だった。そして、それは今もそうだった。 そう、世界には、絶えず善と悪の風が吹き続ける……。 「英霊たちの力……ってやつだな」 『ああ、俺がこれまで、色んな時空で共に戦った黄金騎士たちの力も少しだが感じるぜ』 零とザルバもまた、冷静に力の正体を見極めていた。 歴代の黄金騎士たちが、過去も、未来も、時空さえも超えて、文字通りの「力」を届けている。──それをザルバは感じ取っていた。 その称号を受け継ぎ続ける彼らだからこその直感であろう。 「──変身という“力”そのものが……何かを変えようとする“力”が、私たちを、導いてくれているんですね……!」 それを起こしたのが誰であろうと関係はない。 彼らに力を貸す事が出来るのは、この時、個々人の思想ではなく、共通の「エネルギー」だったのだ。 それが最後のパーツとなって、エンジンは動いて行く。 徐々にプロペラが回っていくように、アースラも再び飛び上がっていった。 『みんな、遂に辿り着けるんだ……! 世界中の人の祈りを背負って……僕達は!!』 そして──そんなフィリップの声を聞いた後、彼らの意識はだんだんと曖昧になっていった。 次に目覚めた時、彼らにとって、無数のヒーローの声が真実であったのか、夢であったのか、既にわからないほど、遠い記憶のような出来事に思えていた。 変身エネルギーの概念を詳しく知らない彼らには些か、その原理がわかりかねる物であっただろう。 だが、結局のところ、どちらであれ──彼らは、世界の節々で繰り広げられていた自分たちと同じ境遇の者たちの力を感じて、再び殺し合いの世界に突入する事になった事実は変わらない。 ────そう、彼らの行き着いた先は、かつて殺し合いの舞台となった場所だった。 そして、彼らがそれを変えようとする場所だ。 ◆ ──変身ロワイアルの世界。 加頭順が城の上から眺めていた空には、アースラの半身が浮かび始めていた。 頭上に出来あがったブラックホールにその先端を突っ込もうとしている巨大な戦艦を眼に焼き付ける。 粒子に消えながらこの世界に突入するアースラの最期は、今まで見たどんな満月や流星群よりも美しい光景だと、加頭は思った。 いや、この言い方は妙か。……初めて「美しい」と思った光景だと言っていい。景色や世界の色使いに感動する気持ちが少しわかった気がする。 散華の美、とでも言おうか。 ──どうやら、彼らを妨害する事は出来なかったらしい。 ……となれば、結局、やはり、直接、戦闘によって勝ち得るしかないわけだ。 この手で敵と渡り合う。 どの道、あのアースラは消えてなくなるのだ。今更、労力を割いてまで撃墜する必要はない。 加頭はここで、彼らとの最後の戦いを待つだけだった。 降り立った彼らを真正面から向かい打ち、そして勝てるだけの実力が今の自分にはある。卑怯な手は使わない。使う必要はどこにもないからだ。 昨日までとは違う。新しい力が己に味方した以上、手負いの彼らくらいはきっと越えられる。──そんな自信があった。 己の手に固く握ったユートピアのメモリを一瞥し、加頭は微笑んだ。 「……来い。貴様らの最後を見届けてやる」 ああ、そして、彼らに──ガイアセイバーズに風が吹くのは、加頭にもわかっていた。 そう、今は彼らに追い風が吹いている。外からの力がこちらへと戦士を誘ったのだと。 しかし、この世界に立ち入ったからには、その風は突如、反対に吹いてもおかしくはないという事である。 冴子と暮らす為のこの世界を守るのが、加頭の最後の役目だ。 その役目の為にも、今度は逆風に変わってもらわなければ困る。 いや、自分自身のこの手で変えるのだ。──それこそが、加頭順として証明する冴子への最大の愛であり、最も価値のある婚約指輪になるだろう。 加頭は強く拳を握った。 「この世界から……排除する! ガイアセイバーズ!」 ガイアドライバーに周囲の「闇」が吸収されていく。 貯蓄された闇は更に加頭の感情を刺激し、彼の身体を強化し、NEVERに要される酵素に近い生命の延長を計った。 ベリアルが彼に与えた力が覚醒し、新たな力が「起動」し始める。 ◆ ──仮面ライダーの世界。 ──プリキュアの世界。 ──魔法少女の世界。 ──テッカマンの世界。 ──らんま1/2の世界。 ──魔戒騎士の世界。 ──ウルトラマンの世界。 ──スーパー戦隊の世界。 あらゆる者が、戦いの終わりを見守った。 たとえ、ベリアルほどの実力を持つ者たれども、今この時ばかりは、彼らに戦いの行く末を任せるしかない。 大人たちもまた、子供のような心を胸に、勇士が立ち上がり、関門に辿り着く姿を見守り──その勝利を祈った。 「──やっとたどり着いたか。てめえらも」 この世界に住む血祭ドウコクは、少しばかりその中では異端だった。 六門船の揺れる船の上で、三途の川面に浮かんだ映像を、骨のシタリと共に眺めて、彼らが辿り着いた事実をさも当然のように受け入れ、そして、そこにガイアセイバーズがいるかのように、彼は呟いた。 シタリは、彼の方をちらりと見る。 「見せてみろよ……。──貴様らが勝つ姿を」 血祭ドウコクの言葉を聞き、その横顔を眺めた後で、シタリは再び、何も言わずに三途の川の方に視線を落とした。 彼が今、こんな事を言う友人を見て何を想ったかはわからない。 ただ、シタリもこんなご時世、ドウコクと同じ物を観たがっているという事だけは同じだった。 ◆ 時系列順で読む Back BRIGHT STREAM(5)Next 変身─ファイナルミッション─(2) 投下順で読む Back BRIGHT STREAM(5)Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back BRIGHT STREAM(5) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back 永遠のともだち 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back 永遠のともだち ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back 崩壊─ゲームオーバー─(12) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back 帰ってきた外道衆 特別幕 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back 帰ってきた外道衆 特別幕 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back インターミッション 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(2) Back インターミッション カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(2)
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変身─ファイナルミッション─(6) ◆gry038wOvE ──不可解な静寂。 ガイアセイバーズを見下ろすカイザーベリアルは、自ら口を開く事はなかった。 そして、ガイアセイバーズと呼ばれた男たちも、その姿をただ、見上げて、一概に「敵を睨んでいる」とも言い切れない瞳で見つめるだけだった。 これは、「緊張」と呼んでいいのか、わからない。 もはや、それは奇妙な時間のマジックだった。何時間となく、無言の睨み合いが続いていたような気さえした。 それは、余裕を心に内在しているベリアルの側も同じ事だった。 自分がこうして出向く事になる事など、殆ど無いと思いつつ、心のどこかではそれを期待していた……そんな感情もあったのだろう。 ベリアルにとっては、まるで現実味のない夢が叶ったようでもあり、厄介な邪魔者に夢を邪魔されているようでもあった。この強敵でさえ、そんな微妙な感慨に没していた。 だが──誰かが、その、何人も口を開く事ができなかった静寂を、ふと打ち破った。 「────みんな……奴を倒し、全てを終わらせるぞ……!!」 それは──シャンゼリオン、涼村暁だった。 誰もが一斉に、彼の方を見た。──彼がその言葉を告げた事を、誰もが心から意外に思ったようだった。 目の前の敵が倒されれば死ぬ──そんな宿命を背負っているのは、実のところ、この元一般人の青年に他ならない。 そして、何より彼には──涼村暁には、そんな宿命と戦うヒーローの自覚は全くない。 今日の今日に至るまで、ただ、なりゆきでそれらしい事をしているが、普通の人間だ。いや、むしろ……およそ、ヒーローの資質とは無縁な性格の男だと言える。 そんな彼が……真っ先に……。 真っ先に──この静寂を打ち破り、こうして誰かの心を熱くさせたのだ。 ぐっと、全員が顔を顰めた。 「──ガイアセイバーズ。 遂に加頭まで倒しやがったか……俺様の前に現れるとは、予想外だった」 まるで暁に釣られるように、ベリアルの方が言った。 静寂が打ち破られ、雲が次第に晴れるようにしてベリアルの目が光る。 誰もが、初めて、ベリアルの声を聞いた。それぞれが全く別の声に聞きとったのだが──いずれにせよ、それは巨悪らしい低い声だった。 こんなに近くで──全ての世界を崩壊させようとする元凶が自分たちに語りかけているのだ。この最大の怪物が……。 彼一人が、宇宙を支配し、そして崩壊させようとしている。 そして、彼がいれば、これから数日と宇宙を保たせる事はできない。 「まさかお前らとこうして会う事になるとは思わなかった……褒めてやるぜ!」 そして。 そんなベリアルの声色は、心なしか、どこか嬉しそうだった。 それが何故なのかは、すぐには誰にもわからなかった。 世界にただ一人いるのが、いかに退屈なのだろうか……。 きっと、内心ではそうなのだろう。 それを、表には出さずともどこかでわかっていたのかもしれない。 ……世界の支配者には、「敵」が必要だった。 世界の一番上に立った支配者にあったのは、満足感や充足感だけではなく、渇きだったのだ。元から持ち合わせていた隙間が、圧制によって埋められる事はない。 だが、今、こうして彼らが乗り越えて来た事で、ガイアセイバーズという絶対の敵が生まれたのだ──。 おそらく、ウルトラマンノアの再誕を妨害しながらもその姿が現れると歓喜にも似た感情を抱いたダークザギも、同じ心情だったに違いない。 ガイアセイバーズの中にも、ベリアルを前に、何か胸騒ぎがする者がいた。 それは、恐れではない。 むしろ、奇妙な共感とさえ言える。──生か、死かの戦いという気がしない。 何故か、むしろ、最大の敵を前に、安らかで、精神的には抜群のコンディションでさえあった。それは、ずっと追い求め、憎み続けた相手が目の前にいるのだと、その想いがあるからかもしれない。 これまでと相反する感情が内心に溢れたせいか、こうして目の前に強敵がいる事にも、不思議と現実感が消えていった。 しかし、そんな頭を切り替える。 「来い……! 俺は、小細工はしない……! お前らに勝つ自信があるからな……!!」 そんなベリアルの言葉に、ごくり、と唾を飲み込む。 だが、どう取りかかればいいのか、各々が少し悩みあぐねた。 相手の身体は50m近くもあり、簡単には倒す事ができない相手なのを実感させる。 あのフィリップですら、ベリアルの対策は検索しても浮かばないほどだ。 しかし。 そんな状況下でも、秘策を持つ男が、この場にただ一人だけ、いた──。 「……」 ──そして、その男は、ゆっくりと前に出て歩きだした。 「……──」 通用するかはわからない、と思いながら。 ただ、目の前の敵にぶつける為に、少しは修行したのだ。 その男の背中を、誰もが目で追った。 どこか誇らし気に、ベリアルの前に出て行く男──。 「──仕方ねえ……! あのサイズの敵を倒すにはあれっきゃねえな……!!」 それは、仮面ライダーエターナル──響良牙であった。 ばっ、とマントを靡かせる彼の姿は、何らかの秘策を持っている状態のようだ。期待を持っている者もいれば、期待の薄い者もいた。そう簡単に倒せる相手ではないのは誰もが理解している。 だが、どうやら、良牙には、巨大な敵と戦える術があるらしい。 エターナルに向けて、ブロッサムが声をかける。 「良牙さん……? 何か秘策が……!?」 「──ああ。実は、俺は、闘気を使えばあれくらい巨大になれるんだ」 そんな一言に、誰もが少しの間固まった。 体を巨大にして戦うという事が出来るならば、数日前のダークザギ戦において、何故彼はそれを使わなかったのか……と誰もが思ったのである。 それは、自然と口から出てしまう疑問だった。──ブロッサムが、誰しもが抱いた疑問を自らが代表して彼に突っ込んでしまう。 「──なんで今までやらなかったんですか!?」 「今ほど力が溢れてる時がなかったんだよ!!」 だが、エターナルにかなりの剣幕でそう返されて、ブロッサムは今度は少し小さくなった。 確かに──いくら良牙でも、それほどまでに強大な力があって、ダークザギ戦の時に使わぬわけがない。 そして、あの時は、今のように黄金の力が自分たちを助けてくれる事もなかった。力でいえば今よりずっと低く、資質もないのだ。加えて、良牙はこの数日で、闘気の使い方をかつて以上によく学んだ。 そう。彼は「今」だからこそ……彼の力が及ばぬ、歴戦の達人の技を使おうとしていたに違いない──。 「いくぜ!!」 エターナルが叫ぶ。 そして、同時に──八宝斎や早乙女玄馬がかつて行った、“闘気による巨大化”を始めたのである。 全員、半ば半信半疑であったが、そんな怪訝の色は、エターナルの頭が階段を上るように高くなっていくにつれて失われていく。 「──!!」 歴戦の勇士であった者でさえも、この妖術めいた格闘の曲技には目を凝らし、そして、自分の経験すらも疑っただろう。 だが、現実に起きている事であるのは言うまでもないので、自らの経験の浅さを一笑して区切りをつけた。 それと同時に、感嘆もしてしまった。──下手をすると、ベリアルでさえもそうした存在の一人であったかもしれない。 「おおっ……!」 かつて八宝斎及び早乙女玄馬の二名によって行われたその激闘の様子は、さながら妖怪大戦争のようだったが──今、この場においては、唯一の希望であり、無敵のヒーローとなる存在の誕生の瞬間だ。 直後──仮面ライダーエターナルは、確かにオーラを纏って、少しずつ大きくなった。 味方の誰もが、その姿に大口を開ける。まさか、この男──こんな異様な力までも持ち合わせていたとは。 「すげえ……!!」 そして、気づけばウルトラマンのように、ベリアルのサイズへと変身しているのだった。 これが仮面ライダーエターナルの「秘策」だったらしい。 確かに、これならば、カイザーベリアルも恐れるに足らない。エターナルの実力は誰もが知っているし、カイザーベリアルとの体格差が埋まった以上、分があるのは自らの方であった。 良牙の闘気が解放され──そして、高らかに宣言し、いつも以上に遥かに大きな声で名乗りをあげた。 「見ろ、ベリアル……これが、お前を倒す────超エターナルだッッッッ!!!」 両者は同じ高さの目で、少し睨み合う。ベリアルが、そんなエターナルを前にも、気圧される事はなかった。 エターナルの目と、カイザーベリアルの目が合う。──両者の間に、緊張が走る。 だが、ベリアルは、嫌に淡々としていた。 「──巨大化、か。人間のくせに……」 「ああ……! これでお前と同じ土俵で戦える!!」 そう言いつつ、これから、この敵と戦わなければならないのか……と、エターナルは内心で独り言ちていた。 こうして同じ目線で前を見ている者こそが、これがこれまでずっと追い求めていた強敵。 そう、誰よりも強い敵だ。 こうして、自分一人で戦って勝てる相手とは限らない。 だが──エターナルは、一息飲んでから、戦う覚悟を決めるように、左掌を右拳で叩いた。 風が吹く。 「……」 「……」 ──────そして、その直後、巨大な仮面ライダーエターナルの姿は消え、エターナルは再び等身大に戻った。 「……」 あまりの事に、誰もが言葉を忘れ、冷やかな瞳でエターナルを見た。その瞳は、興味のないものを見つめる猫の瞳にも近かった。 何故か元のサイズに戻ってしまったエターナルは膝をつき、がくっと肩を落としている。 そして、言った。 「……くそ。今の俺じゃ三秒が限界か」 ……良牙の力、及ばず。 良牙はまだ若く、ちょっとやそっとの修行を積んだ所で、巨大化したまま戦う事など出来ようはずもない。 これは、年長の達人である八宝斎や玄馬ですら、数秒しか保たなかった技なのだから。 それ故、良牙がこれだけしか巨大化できないのも仕方のない話であったが、実戦の上で全く意味のない時間が過ぎ去り、多くの期待が泡と消えた事は言うまでもない。 「──何の為に大きくなったんですか!!」 今度のキュアブロッサムのツッコミは、全く、その通りであった。 少し良牙に期待した者は、過去の自分を呪った事だろう。 頭を抱える者も出た。幸先が不安である。──よりにもよって、カイザーベリアルとの初戦がこれとは。 ベリアルも、一瞬唖然としたが、余裕を込めて笑った。 「クックックッ……おもしれえ。随分と余裕があるじゃねえか……!」 「余裕なんじゃないやい! 本当にこれしか出来なかったんだい!」 負け犬の遠吠えのように、ベリアルを見上げて叫ぶエターナル。 しかし、誰もがそんな彼を白けた目で見つめている。 当の良牙が、全く本気であるのが輪をかけて救いようがない話で、彼は背後の者たちの視線にさえ気づかなかった。 「──ボケてる場合じゃありません。……どうしましょう」 レイジングハートもまた、呆れかえっていたが、それを中断して仲間の方を見た。 彼女自身、ほとんど無意識の事だが、まさに言葉の通り、両手で頭を抱えている状態であった。決戦を前に、こうして頭を抱えたのは初めてである。 ダミーメモリの力をもってしても、巨大化は不可能に違いない。 どうして、ベリアルと同じ土俵に立つ事が出来ようか。 「フィリップ。巨大化する術は……?」 『残念ながら、ない』 「……って事は、やっぱりこのまま戦うしかねえって事か。仕方ねえな……」 と、ダブルがダークザギ戦のように等身大のままダークベリアルと戦う覚悟を決めようとした時である。 ──誰かの声が、また、響いた。 「──いや、違うぞ!!」 誰だろうか。 そんな、聞くだけでも希望が湧くような言葉を発したのは。 またくだらないボケか、と心が諦めるよりも前に、誰もが反射的にそんな希望の一声を頼ってしまう。 「──」 ダブルが振り向くと、それは佐倉杏子であった。 ──全員が、ほぼ同時に杏子の方に目をやっていた。 一体、フィリップにさえ何も浮かばないのに、どんな秘策があるのかと思った。 そして、ダブルは、彼女が今、手に持っている物体に視線を落としたのだった。 「杏子……それは……」 ──見れば、杏子の手では、「何か」が強い輝きを放っているのである。 今度の希望は、決して良牙のようなくだらないボケではなさそうだ。 彼女は、良牙と違う。場を白けさせるボケはしない。 真っ赤な光を輝かせるその物体から、誰しもの耳へと「音」が運ばれて来た。 「そうだ……まだ手がある……!!」 どっくん……。どっくん……。 普段から、どこに行っても鳴り響いているはずの音──。 そう──“鼓動”。 杏子の手にあったのは、まるで心臓のような血の鼓動だった。だが、心臓を持っているのではなく、鼓動を手に持っている。 それを見て、各々の頭に浮かぶのは、あの忘却の海レーテで見たウルトラマンのエナジーコアに酷似した物体である。 そして、杏子自身は、あの時──彼女自身がデュナミストであった時に感じたエボルトラスターの鼓動を重ねていた。 あの時に、自分がデュナミストをやっていたから──だから、それが自分の切り札だとわかったのだ。 杏子の手に握られているのは── 「あたしのソウルジェムだ……!! こいつが……光ってる!!」 ──そう、魔法少女のソウルジェムであった。 今は使えないはずのこれが、久しく、彼女に反応したのである。……そして、その理由が、彼女にはすぐわかった。 杏子は、かつて、ドブライという一人の男が教えてくれた事を思い出す。 彼もまた、ある世界で出会った、杏子の友達の一人である。──そして、彼が最期の時、杏子に、何を告げようと……何を託そうとしたのか。 その言葉が、再び杏子の胸に聞こえた。 ──……杏子よ。君のソウルジェムが……光が……きっとまた、輝く時が来る……その光で、ベリアルを、きっと倒してくれ……── それから、今度は、自分のソウルジェムが石堀によってレーテに放り投げられ、無限の絶望の海を彷徨った時の事を思い出した。 巴マミの尽力によって、絶望の海から再びこの世界へと還ったソウルジェムだが、その時には、強い光が彼女を包んでいたのだ──。 その光とは、一体何か──。 「そうか……杏子のソウルジェムは、レーテに入った時に、ウルトラマンの光を少しだけ受け継いでいたんだ……!」 翔太郎も気づいたようだ。 杏子のソウルジェムは、確かに闇の力に染まって、魔法少女へと変身させる機能を捨てた。だが、決して闇の力だけを吸収して動かなくなったわけではない。 もう一つの力──ウルトラマンの、光の力がそこに宿り、二つの力が葛藤したから機能を停止したのだ。 ウルトラマンノアの力は今、二つに分かたれている。 その内の片方が、あの時からずっと杏子のソウルジェムに宿っていたのだという事。 そして── 「ああ、それが今、呼び合ってるんだ……!!」 それは、キュアムーンライトのプリキュアの種と、ダークプリキュアが持つプリキュアの種が強く反応し合うように──元々一つだった者の欠片と欠片が呼び合う仕組みになっていた。 未来を予知できたノアが、スパークドールズとなった時の為に残した予防線に違いない。 ノアは、杏子と美希の絆を信じたのだ。 「……みんな」 何故──ノアが今になって呼び合おうとしているのか。 その理由も、彼女にはわかる。 「美希が……あいつが、ウルトラマンを見つけてくれたんだよ……!!」 杏子は、ソウルジェムを高く掲げ、叫んだ。 ガイアセイバーズの視線は、そのソウルジェムに視線を注いだ。 「──来てくれ、ウルトラマン!! あたしたちはここにいる!!」 ◆ ────祈りとともに、空が光った。 銀色の翼の戦士、ウルトラマンノア──。 彼は、自らの力を注ぎ込んだ杏子のソウルジェムに反応し、彼らの居場所を即座に探知したのである。自らが復活した時、彼女たちの居場所を探る為に残した力だ。 「シャァッ──!」 感応している。 そして、自分を呼んでいる──。 ノアは、すぐにそれに気が付いた。 「ついて来いってのかよ……! 速すぎるぜ……!!」 ゼロも、ノアから授かったノアイージスを使って、銀色の流星の軌跡を追った。 しかし、測定不能レベルの速度で飛行するウルトラマンノアは、ゼロが容易に追いつける相手ではなかった。 彼の後に残った光の後だけを、彼らは辿っている。 ノアとは、実体がない存在なのではないか、とさえ思う。ウルトラマンノアは、本当に生物なのだろうか。 それでも──彼が味方で、自分たちが、敵の場所に近づいているのがよくわかった。 ────その時、ノアと同化する孤門一輝の意思が、彼らの耳に届いた。 『美希ちゃん、ゼロ……君たちは、向こうへ……!』 それは、声だけだったが、どうやらリアルタイムで届いているテレパシーのような意思だと気づいた。 確かに、温和な孤門の声だ。 だが、何故、この時になって別の場所に向かわせようとするのか、美希にはすぐに理解する事ができなかった。 確かに、リーダーである彼の指示に従うのが道理だが。 『え……!? 何故ですか……!?』 『君には、もう一人、救うべき相手が残っているはずだ……!』 と──孤門にそう言われた時、美希は、思わず自分が忘れかけていた大事な事に気づく。 自分が助けなければならない仲間は、ベリアルと共にはいないのだ。 『シフォン……!』 ベリアルが貯蓄したFUKOの力と共にあるはずだ──。 ラブと、祈里と、せつなと……みんなで育てた、あの子。 円らな瞳の赤ん坊、シフォン。 インフィニティのメモリと呼ばれている、美希のもう一人の仲間。 彼女を、支配の力ではなく、再び、ただの一人の子供として、自由を与えたい。 それが、プリキュアとしての彼女の使命だ──。 美希は、ゆっくりと頷く。 『わかりました!』 「──よし、さっさと助けて、加勢してやるぜ!」 ……目の前には、地球を模した青い星があった。 その星こそが、ノアが辿り着いた場所。 銀色の流星が、消えていった場所。 そして、ついこの間まで、自分たちが戦っていた場所。 やっとたどり着いた……。 この星に──。 ◆ ────震!!!!!! 「シャアッ……!!」 杏子たちのもとに、ウルトラマンノアが土埃をあげて舞い降りたのは、その直後の事であった。 ──大地が打ち震え、一瞬だけ、強風が吹いた。 しかし、誰もがそれを浴びて、ただノアの姿を見上げていた。 その姿を見上げながら、どこか安心してそれぞれが頷き、杏子が言った。 「来た……──ウルトラマン!!」 銀色の羽を持つ、光の戦士。 カイザーベリアルでさえも恐れた、伝説のウルトラマンが、今、杏子たちの前に再び現れている。 そして、そのウルトラマンの正体は、彼らの仲間であり、リーダーである孤門一輝に違いなかった。 『────みんな……遅くなって、ごめん!』 孤門の声が、それを見上げる者たちの脳裏に響いた。 それは、ウルトラマンノアというよりも、孤門一輝という一人の男にも見えた。 カイザーベリアルも、目の前に再び現れたウルトラマンノアの姿に、僅かながら息を飲んだようだ。 彼の力でさえも及ぶかわからない強敵──それが、ノア。 しかし、やはり……こんな敵を、ベリアルは待っていたような気がする。 「まったく……遅いぜ、本当に! ヒヤヒヤさせんな!」 絶狼が茶化すように言う。 しかし、カイザーベリアルを眼前にした彼が、とにかくこの男の到着を待っていたのもまた事実だ。 それに──今のところ、死傷者は出ていない。 孤門が遅れたせいで死んだ仲間は一人としておらず、むしろ、彼が来たのは丁度良いタイミングであったと言えよう。 「……ここにいる私たちは、みんな無事です!! 孤門さん!!」 そこにヴィヴィオの姿があった事に、孤門は少し目を丸くした。 レイジングハートが既にいるので、ダミーメモリによって体だけ形作っているのでない事はすぐにわかった。 悪戯としては少々悪質であるから──おそらく、そこにいるのはヴィヴィオ本人だ。 『生きていたんだ……ヴィヴィオちゃん……!』 ノアは、そんなヴィヴィオに向けて頷いた。 それから、すぐに、カイザーベリアルの方を向いた。 「……──」 彼は、確かに待っていた。 自分と同じ土俵で戦う、別の敵を──。 しかし──ノアは、些かカイザーベリアルよりも実力が上回る存在でもある。 どちらが勝つのか──それは、カイザーベリアルにもわからない。 スパークドールズ化ではなく、もう一つの秘策も持ち合わせていたが、それよりも……まずは、自分だけの力で小手調べをしようとした。 『────ああ……!! みんな、一緒に戦おう!!』 ウルトラマンノアが──孤門が、地上の仲間たちに呼びかける。 見上げる彼らは、きょとんとした顔だった。 「俺たちが……」 「一緒に……?」 一緒に戦う……と。 しかし、今の自分たちには、カイザーベリアルと戦えるだけの力があるだろうか。この大きさでいる限り──。 そんな彼らの内心の疑問に答えるように、意識を飛ばす。 『共に肩を並べて困難に打ち勝てる絆……それを持つ者みんなが、「光」なんだ。 僕達の間に絆がある限り……みんな、最後まで一緒に戦える──!!』 地上にいた者たちは、皆、呆然とした。 全員でウルトラマンと同化するという事なのだろうか。 それが可能だというのか──。 「──そうだ……! あたしたちなら出来る!! みんな……あたしのソウルジェムに手を──!!」 しかし、杏子が、いち早く孤門の言葉を理解し、そこにいる全員に呼びかけた。 それと同時に、戸惑っていた誰しもが彼女の言っている事を、納得したようだ。 このソウルジェムには、ウルトラマンの光が注ぎ込まれている──このソウルジェムに向けて力を発すれば、全員がウルトラマンになれる。 人間はみな、自分自身の力で光になれる──。 かつて、世界中の人々の力を借りて、邪神ガタノゾーアと決戦したウルトラマンがいた。 それと同じに……決して、ウルトラマンは一人だけが変身する物ではないのだ。 「……ああ! わかった!」 仮面ライダーダブルが。 高町ヴィヴィオが。 レイジングハート・エクセリオンが。 超光戦士シャンゼリオンが。 キュアブロッサムが。 仮面ライダーエターナルが。 銀牙騎士絶狼が。 「────いくぞ、みんな!!」 杏子のソウルジェムに、手を重ねた。 八人が、それを強く握りしめると、八人の体は、次の瞬間、一つの光となり、ソウルジェムの光の中に吸い込まれていく──。 本当に……本当に、彼らの間に芽生えた絆は、今、光となったのだ。 「絆……」 ここにいる者たち……それぞれの出自は違う。 しかし、こうして出会い、互いが絆を結び、育んできた。 ウルトラマンネクサスや、ウルトラマンノアと共に戦う時も、誰か一人だけの力で戦うわけではない……。 「──ネクサス!!」 そして、ソウルジェムは、空へと飛来し、ウルトラマンノアの胸のエナジーコアへと帰っていった。 ノアの全身に、ソウルジェムに注いだ力が再び灯る。 それは、更なるエネルギーの上昇を意味していた。 「────勝負だ!! カイザーベリアル!!」 「────勝負だ!! ウルトラマンノア!!」 ノアとベリアルは向き合った。 お互いに、同じ意識を飛ばし合う──。 戦いがあった島の上で、二つの巨体は、最後の戦いを始めようとしていた。 ◆ 時系列順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(5)Next 変身─ファイナルミッション─(7) 投下順で読む Back 変身─ファイナルミッション─(5)Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 左翔太郎 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 花咲つぼみ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 佐倉杏子 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 高町ヴィヴィオ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) レイジングハート Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 涼村暁 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 響良牙 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 涼邑零 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 蒼乃美希 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) ウルトラマンゼロ Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 孤門一輝 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 血祭ドウコク Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 外道シンケンレッド Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) 加頭順 Next 変身─ファイナルミッション─(7) Back 変身─ファイナルミッション─(5) カイザーベリアル Next 変身─ファイナルミッション─(7)
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【作品名】燃える!お兄さん 【ジャンル】漫画 【名前】ロボットくん 【属性】ロボット歩兵タイプビアだる試作第7号 【大きさ】成人男性並み 【攻撃力】素早さ相応でのロケット突撃、校舎の屋上を突き破って最上階の教室一つを全壊させる。 【防御力】ロケットで突撃しても自分は無傷 スキー場とホテルが崩壊する雪崩に飲まれても無傷 原子炉で半永久的に動き続ける 【素早さ】一時間目から昼休みの終了間際までに校庭を一億周(一周200mとしたらマッハ3501)する憲一が スピードで頼りにするロケット飛行、その速度で目標に正確に到達可能。 【特殊能力】燃料漏れで放射能を常に周囲に撒き散らしている 【長所】ロケットの速さ 【短所】防御力、攻撃力不足 2スレ目 579 名前: 格無しさん [sage] 投稿日: 2009/05/23(土) 02 14 18 ロケットくん考察 ○リックドム 突撃勝ち △ダンガイオー~ガンダム 倒せない倒されない ○ブラウ・ブロ 突撃勝ち ×ガンダムF-91~ガンダムキラー アトミックボム負け △皇我~ウイングゼロ 倒せない倒されない ×アイオーン 時間操作負け ガンダムF-91(ガイアセイバー)>ロケットくん>ブラウ・ブロ
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仮面ライダーSPIRITSの変身後データ 【仮面ライダー新1号】 【仮面ライダー新2号】 【ライダーマン】 【仮面ライダースーパー1】 【仮面ライダーZX】 【タイガーロイド】 【ヤマアラシロイド】 仮面ライダー新1号 本編での主な変身者は本郷猛。 変身時の掛け声は「ライダー、変身!トウ!」。 身長180cm。体重75kg。 パンチ力60t。キック力90t。ジャンプ力ひと跳び25m(資料によっては35m)。100mを1.5秒で走る。 人間の40倍の聴力を持ち、周囲4kmの音を聞き取る。人間より広い視界を持ち、暗闇でも日中のように活動できる暗視能力やズーム機能も備えられている。 皮膚は数千度の高熱にも耐えることができ、アンテナはあらゆる電波や音波を捉える。鋼鉄をかみ砕くクラッシャーも持つ。 仮面ライダー1号が再改造手術を受けてパワーアップした姿であり、変身ポーズを使っての変身は実は新1号になってから採用されたものである(ただし、2号は最初から変身ポーズを使い、劇場版に限り旧1号が変身ポーズを使ってるシーンも存在)。 また、改造人間同士はテレパシー通信ができるため、2号、ライダーマン、スーパー1、ZXと通信可能(ライダーマンは改造人間ではないが、SPIRITSでは通信している描写がある)。 ライダーパワー 側面にあるパワースイッチを操作することで一瞬だけパワーを最大値まで引き上げる。 ライダーパンチ 仮面ライダーの腕から放たれるパンチ。60tの威力を持ち、直径1mの木を真っ二つにする。 ライダーキック 高く跳躍した後、空中回転し強力なキックを放ちながら敵へと落下するライダーの代表的な技。 ライダーチョップ 直径10cmの鋼鉄の棒も破壊できるチョップ(※旧1号時代のスペック)。 ライダー返し 向かってきた敵を両手で抱えてジャンプし、空中で回転させてから投げ落とす技。 ライダー投げ 敵を背後から抱えて空中へジャンプし、高所から地面にたたきつける技。 ライダーシザース 空中にいる敵に対して使用する技。両足で相手の首を挟み、1回転して地面にたたきつける。 サイクロンクラッシャー または サイクロンアタック 加速したサイクロンでジャンプし、飛行する相手へと体当たりする技。サイクロン号が必要。 電光ライダーキック 通常のライダーキックのエネルギーを二倍に強化した必殺キック。キックの瞬間に放電する。新1号の姿で使用したのはSPIRITSのみ。 ライダーヘッドクラッシャー ライダーシザースのように怪人の頭を両膝ではさみ、空中から加速をつけて地面にたたきつける技。 ライダーハンマー 敵の両足首をつかみ、振り回して投げる技。要するにジャイアントスイング。 ライダー反転キック ジャンプ中に壁などをけり、方向を変えて放つライダーキック。威力が倍増する。 ライダー稲妻キック ライダー反転キックを応用し、周囲の壁を繰り返し蹴って稲妻のような軌道を描いて敵を蹴る技。 ライダーきりもみシュート 敵を抱えてジャンプし、空中で高速回転させて真空をつくり、酸欠にして投げ飛ばす技。 ライダーニーブロック 上空へ投げた敵怪人めがけてジャンプし、落下する脇腹に膝蹴りを決める技。 ライダーフライングチョップ 上空へ蹴り上げた敵が落下してくるところにジャンプして両手の手刀を叩き込む技。 ライダー月面キック 空高くジャンプして月面宙返りから放つライダーキック。 ライダーハンマーキック ライダーシュクリューキックとライダー返しを組み合わせた技。 ライダーポイントキック 敵の弱点だけをピンポイントに蹴るライダーキック。 2号、ZXとの合体技 ライダーダブルキック または ダブルライダーキック 2号と一緒に放つライダーキック。SPIRITSではZXとの合体技でもある。 ライダー車輪 ショッカーライダーに使用した技で、複数の敵でなければ無意味。SPIRITSではZXとともに使用。 2号とともに敵の周りを高速回転し、あるタイミングで中央に向かって同時にジャンプ。自分たちは直前で互いを回避し、一斉にジャンプしたショッカーライダーたちを互いに激突させ自壊させる技。 ライダーダブルチョップ 2号と一緒に放つライダーチョップ。 ライダー全エネルギー放出 2号と腕をクロスさせ、全エネルギーを放出し、空を飛ぶ技。あれ、スカイライダーさ(ry 仮面ライダー新2号 本編での主な変身者は一文字隼人。 変身時の掛け声は「ライダー、変身!トウ!」。 身長172cm。体重65kg。 パンチ力75t。キック力90t。ジャンプ力ひと跳び35m (資料によっては25m)。100mを2秒で走る。 人間の40倍の聴力を持ち、周囲4kmの音を聞き取る。人間より広い視界を持ち、暗闇でも日中のように活動できる暗視能力やズーム機能も備えられている。 皮膚は数千度の高熱にも耐えることができ、アンテナはあらゆる電波や音波を捉える。鋼鉄をかみ砕くクラッシャーも持つ。 仮面ライダー2号が南米で特訓を重ねてパワーアップした姿。 また、改造人間同士はテレパシー通信ができるため、1号、ライダーマン、スーパー1、ZXと通信可能(ライダーマンは改造人間ではないが、SPIRITSでは通信している描写がある)。 ライダーパワー 側面にあるパワースイッチを操作することで一瞬だけパワーを最大値まで引き上げる。 ライダーパンチ 仮面ライダーの腕から超怪力のパンチ。ストレート、アッパー、フックなど殴り方は様々 ライダーキック 高く跳躍した後、空中回転し強力なキックを放ちながら敵へと落下するライダーの代表的な技。 ライダーチョップ 直径10cmの鋼鉄の棒も破壊できるチョップ(※旧1号時代のスペック)。 ライダー返し 向かってきた敵を両手で抱えてジャンプし、空中で回転させてから投げ落とす技。 ライダー卍キック 空中でスクリュー回転し、ひねりをくわえて威力を増したライダーキック。 ライダー回転キック 空中前転の回数を増やすことでより強力になったライダーキック。 ライダー二段返し 敵を抱え込んでジャンプし、空中で一回転させてから地面にたたきつける。 ライダーきりもみシュート 敵を抱えてジャンプし、空中で高速回転させて真空をつくり、酸欠にして投げ飛ばす技。 ライダー反転スクリュー返し 高速できりもみ回転を行い、体の障害物を取り除く技。 1号との合体技 上記の【仮面ライダー新1号】参照。 ライダーマン 本編での主な変身者は結城丈二。 変身時の掛け声は「ヤァッ!」。変身終了後の掛け声が「トォッ」(これを言う回は少な目)。 身長175cm。体重70kg。 パンチ力5t。キック力10t。ジャンプ力ひと跳び20m。100mを2秒で走る。 ヘルメットにはコンピュータが内臓されており、知覚装置からの情報を高速で処理する。 視覚は赤外線から紫外線まで、あらゆる波長を捉えるカメラアイと、映像を網膜に投影するマイクロディスプレイを内蔵し、暗視、透視ができ、弾丸も止まって見える。 強化スーツの人工細胞により、深度500mの水中でも10分間以上の活動ができ、防弾機能も有する。アンテナはあらゆる電波をキャッチできる。 ただし、改造人間ではないので、パワーは成人男性の6倍程度であり、単純な能力はライダーたちはもちろん、怪人にも劣る。 結城丈二がヘルメットを被り、同時に装着される特殊な強化スーツをまとった姿。主に右腕のアタッチメントを使い敵と戦う。 改造人間とテレパシー通信できる能力も持っている(SPIRITSでのみの設定)。 カセットアームが支給品扱いなので、アタッチメントに関しては支給品一覧を参照。 仮面ライダースーパー1 本編での主な変身者は沖一也。 変身時の掛け声は「変身!」。 身長185cm。体重80kg。 パンチ力300t。キック力は不明(重力低減装置使用時は無限)。ジャンプ力はひと跳び100m(重力制御装置使用時は無限)。 視覚はハチの目の形をした複眼構造。複数の対象に同時に焦点を合わせることができ、望遠鏡や顕微鏡にもなる。さらには、X線や赤外線によって透視や暗視も可能で、サーチライトになる。 宇宙空間での活動を可能とするため、外界から身を守る働きはもちろん、体内の熱を排出して体温を一定に保つこともできる。空気のない状態でも1か月の活動が可能である。 アンテナはあらゆる電波をキャッチし、本来は惑星開発のための通信用アンテナ。 常人の1000倍のパワーの持ち主で、ファイブハンドを使うことでさらに強くなる。 尚、SPIRITSによると鍛えればさらに強くなるとの事(ライダーは総じてそうだが…)。 沖一也が惑星開発用の改造人間として志願した姿。ファイブハンドという腕を付け替えて戦う。 最強と謳われるクウガアルティメットやダグバでさえパンチ力は80tであるにも関わらず、彼はパワーハンド使用時に500tという怪力を持つため、最強議論ではたびたび名前が挙がる。 しかし、一方でチェックマシーンを使って定期的に「メンテナンス」を行わなければならないという欠点も持ち、SPIRITSではそれを怠ったのが原因で変身不能になっている。 スーパーライダー月面キック 空中で月面宙返りをして相手に叩き込むキック。 3回宙返りする、「スーパーライダー月面宙返りキック」という技まである。 スーパーライダー稲妻落とし スーパー1の体が何体にも分かれた後(拳法の成果と思われる…)、稲妻のようにキックする。 スーパーライダー日輪キック、スーパーライダー十字回転キック、スーパーライダー反転三段キック、スーパーライダー閃光キック、スーパーライダー梅花二段蹴り、スーパーライダー空中殺法四段旋風蹴り 仮面ライダースーパー1のキックの種類はかなり豊富である。気が遠くなるので、全部説明できる人いたらお願いします。 スーパーライダー諸手頸動脈打ち または 赤心拳諸手打ち 敵の首元に両側から両手で手刀打ちを浴びせる赤心少林拳の技。パンチ力300tの男が使うので洒落にならない。 パワーハンド 赤いファイブハンド。パンチ力500tの怪力を発する(ただでさえ怪力な気が…)。落下してくる50tの物体を受け止めて軽々と投げ返す。 エレキハンド 青いファイブハンド。3億ボルトの電圧を発生させる。遠隔攻撃も可能。 冷熱ハンド 緑のファイブハンド。右手からは鉄をも溶かす超高温の火炎、左手からは敵を瞬時に凍らせる冷凍ガスを発射。左右同時発射も可能。 レーダーハンド 金色のファイブハンド。ロケット型のレーダーアイを飛ばして半径10km以内の情報をキャッチする。レーダーアイは小型ミサイル弾にもなる。 仮面ライダーZX 本編での主な変身者は村雨良。 変身時の掛け声は「変身!」だが、参戦時期ではまだこの掛け声を使っていない。 身長188cm。体重78kg。 パンチ力60t。キック力66t。ジャンプ力ひと跳び90m。100mを0.6秒で走る。 視覚は多面体の複眼構造を持ち、多方面からの対象の動きを捉えて立体的な情報を贈る。赤外線、X線も認識し、敵の動きやスピードを一瞬で分析するほか、望遠鏡や顕微鏡の働きもする。 アンテナは超短波から超長波まであらゆる電波をキャッチし、地球の裏側とも交信でき、レーダーとしても機能して専用マシンのヘルダイバーをコントロールする。 マスクは有毒ガスなどの有害物質が体内に侵入するのを防ぐエアフィルターの役割を持つ。 かかとについているジェットエンジンによって、空も飛べる。そりゃ出番もなくなるわ筑波さん…。 自己再生能力も高く、敵から受けたダメージを一瞬で回復した。 村雨良がBADANによって改造された、脳以外の99%を改造されたパーフェクトサイボーグ。 SPIRITSでは、JUDOが世界に蘇るために器として作られた存在であるとされる。 村雨良としての記憶を留めたメモリキューブをゼクロスベルトにはめ込むことで、JUDOの復活を抑えることができるが、本作ではまだはめ込まれていない時期からの参戦である(メモリキューブ自体は支給されている)。 スペック上はスーパー1に劣っているように見えるが、SPIRITSでは最強扱いである。 衝撃集中爆弾 ひざに装備されている爆弾で、取り外して使用する。ZXの指令波によって爆発するため、威力やタイミングもコントロール可能。壁を破壊するときも、中の人間を傷つけずに破壊することができる。 マイクロチェーン 両手首に装備されている20mのチェーン(SPIRITSでは明らかにそれ以上伸びている)。先端にカギ爪のある分銅がついており、1tのものを持ち上げることもできる。さらには、5万ボルトの高圧電流を流すこともできる。 電磁ナイフ 左太腿部に装備されている電磁ナイフ。電磁波によって高熱化されており、どんな金属でも切断する。電磁波によって、飛来する銃弾の軌道を変えることもできる。 十字手裏剣 ひじの半球型の部分を取り外すことで変身できる手裏剣。ダイヤモンドよりも硬く、1km先の目標にも命中させられる。テレビSP版では爆弾にもなった。 虚像投影装置 ベルトのバックル部に内蔵されている装置で、自分の立体映像を映し出して敵の目を欺く。 レーダー錯覚煙幕 上腕部及び大腿部の黒い部分につけられた煙幕発射装置から繰り出される磁気を帯びた煙幕。 ZXキック 変身ポーズと同じポーズの後に繰り出される必殺キック。 ZXイナズマキック 空中から急降下して放つZXの必殺技。戦車も一撃で破壊する。 ZXパンチ 鉄骨をもへし折る必殺パンチ。 ライダーきりもみシュート SPIRITS限定の技。1号の技を見てラーニングした。 ZX穿孔キック SPIRITS限定の技。ただし、参戦時期的には使用できない(本編でも特訓によって生み出した)。 怪人を抱えずにきりもみシュートを行い、渦に巻き込まれた怪人たちをZXキックで同時に撃破する。 ZXかげろう崩し SPIRITS限定の技。参戦時期的には使用していないが、おそらく自分の技の応用で可能。 虚像投影装置で分身し、敵を混乱させた後、分身の間から駆け抜けて電磁ナイフで敵を切り裂く。 1号との合体技 上記の【仮面ライダー新1号】参照。 ライダーシンドローム 10人ライダーの合体技であるため、本作では使用不可能。 タイガーロイド 本編での主な変身者は三影英介。 身長不明。体重不明。 ZX本編とは違い、全身の毛が真っ白になっているが、虎の怪人。 全身の至るところから銃器を生やすことができる能力を有し、砲撃時に前かがみになる必要もない。 大砲に限らず、マシンガンなど様々な武器を体内から抽出して敵に発射するが、長時間の戦闘ができず、肉体が崩壊するなどの欠点がある。 ヤマアラシロイド 本編での主な変身者はニードル。 身長不明。体重不明。 BADANのヤマアラシの怪人。 全身に鉄板をも貫く硬さの営利な針を生やしており、原点の「仮面ライダーZX」では吸血した人間の血を怪人に送っていた。 また、針に見立てた槍も持っており、これは先端がギザギザで一度突き刺さったら完全に刺し貫くまで外れない(外す時に強烈な痛みが襲う)。 人間体でも髪の毛を針にして敵を突き刺し、ツボに刺して麻痺・痛めつけることができるほか、怪人を再生させたり怪獣化させたりしている。